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ホワイトペーパー制作の教科書

はじめまして、ホワイトペーパー制作/活用の支援を行うシャベル株式会社で代表を務める、高橋舞伎(たかはしまいき)と申します。

現在は創業4年目の無名な企業ですが、弊社自体が提供するホワイトペーパーを企業様にダウンロードいただいて信頼を置かれ、ありがたいことに成長スタートアップ様や上場企業様などからも発注いただけるようになりました。

▼プレスリリース
ホワイトペーパー特化の制作事業を開始!SaaS企業、マーケティング支援会社で制作が加速 〜日本経済新聞社、ブランディングテクノロジー社の事例ご紹介〜

「ホワイトペーパー制作 完全ガイダンス」を無料提供!BtoBマーケティングを強化したい企業でホワイトペーパー制作が増加 〜株式会社ラクス、スマートキャンプ株式会社の事例もご紹介〜

また、私自身が直接携わるホワイトペーパーは年間50以上あるので、個人のホワイトペーパー制作数でいうと、日本で3本指くらいに入るのではないかと思います。

そこで今回ホワイトペーパー制作のスペシャリストとして、そのノウハウを余すことなくお伝えしていきます。

※2万字を超える長文となっているため、あまり時間の取れない方は下記の目次を参考に、関心ある項目から読み進めることをオススメします。

はじめに

あなたはホワイトペーパーに対して、どのような印象を持っていますか?

「顧客獲得に使えるらしい」「ダウンロードはしたことあるけど、役に立つ時と立たない時がある」「営業資料やセミナー資料は作ったことあるからホワイトペーパーも作れそう」などなど。

今このようなマニアックな内容の記事を開いたということは、BtoBマーケティング施策としてのホワイトペーパーに何らかの関心をお持ちなのでしょう。

一方、ホワイトペーパーを初めて制作する企業から制作依頼いただく際に聞く声として、「営業資料と同じ感覚で制作を開始したけど、気づいたら数ヶ月も経ってしまった」「自社で作りきれなくて、最初から発注しておけばよかった」というのも少なくありません。

これはひとえに、ホワイトペーパー制作/活用に関する情報が世間にあまり出回っていないことが原因と言えます。

ホワイトペーパー制作の内製・外注を問わず、そのような失敗を生んでしまう企業や人達が減ることを願い、このたびの執筆に至りました。

<ホワイトペーパー制作失敗というトラウマ>

創業してからは価値あるホワイトペーパーを提供できていると自信を持って言えますが、昔からもともと得意であったというわけではありませんでした。

ホワイトペーパーは、企画・調査・ライティング・デザインなどあらゆる専門知識や技術の結晶であり、のんきに口笛を吹きながら簡単に作れるようなものではありません。

私は前職の新人時代にホワイトペーパー制作を任され、経験がない中で一人で挑戦したことがありました。

資料制作経験がほとんどなく、企画力・デザイン力もない中で抱え込んでしまい、何週間も過ぎていきます。そして形になったと思い、提出したホワイトペーパーは、上司の期待値に達することができませんでした。

オフィスの片隅で、依頼した上司がそばの同僚に向かって「全然ダメじゃん」と失笑しながら陰口をたたかれていた記憶を一生忘れません。

たしかに、今の自分が当時制作したホワイトペーパーのクオリティを見たら、唾をはきかけて、資料をビリビリ破ってシュレッダーにかけ、最後に火をつけて跡形もなく燃やすことでしょう。

そんな過去の自分に読んで欲しいという思いがあります。そして同じように初心者でホワイトペーパー制作/活用に挑戦する方々に、成功してもらうことを目的としています。

<ホワイトペーパー制作を成功に導く、たった一つの考え方>

ホワイトペーパー制作に成功する企業と、失敗する企業の違いは、「情報の価値を理解しているかどうか」に尽きます。

情報に価値があるというのは、そんなの誰でも知っている当たり前のことだと思われるかもしれませんが、それを真の意味で理解できている人は少ないと感じています。

経営・人事・営業など分野を問わず、必要な情報がなければ判断を誤り、そもそもより良い選択肢があったことすら気づかず非効率で効果のないことを続けている可能性だってあります。

特に、マーケティングの分野では情報の価値が顕著です。他の業界で成功した広告クリエイティブを参考に作ると効果が急上昇したり、新しく誕生したマーケティング技術を他社よりもいち早く取り入れれば、顧客獲得を一気に拡大させられることがざらにあります。

昔あった事例としてパッと思いつくのは、このあたりですかね。

・2000年代はじめにSEO対策が特に注目された頃、被リンクを集めてGoogle検索上位にあがるようハックし、売上拡大ののち上場を果たしたリブセンス。

Facebook日本上陸の初期に、Pairsは相性占い/性格診断などFacebook上で診断アプリを3ヶ月のうち100本作り、サービスリリース3ヶ月で会員数8万人突破。クラシルは毎日の投稿動画のうちバイラルしたトップ10%のクリエイティブを広告に使って、CPIを40円に抑えた(一般的には400〜500円程度)

・先がけとして、ベルフェイスが資金調達した5億円のうち3億円をタクシー広告に投資して1.7倍のリターンを得た

※それぞれ当時では、最良の施策とうたわれたもの

近年ではインターネットやSNSの影響で、無料の情報が無限に出回っているため、その中で埋もれない有益な情報として「分かりやすく」「面白く」「深く」作ることがより求められるようになりました。

もちろん、情報を伝える方法は記事やセミナーなど形式は問いません。その中でも、文章・イラスト・図などをフル活用して伝えられるホワイトペーパーは、企業から信頼を得るための選択肢の一つとして検討しても良いのではないでしょうか。

例えば、私自身の話にもなりますが新卒1年目の頃に、株式会社FREE WEB HOPEというランディングページ制作会社が作った見事なホワイトペーパーをダウンロードしたことがありました。

その後、自分がランディングページ制作の外注先を決められる立場となった時、その制作会社が持つノウハウの凄さを長い間忘れておらず、発注を行なった経験が2度あります。

ホワイトペーパーはそのように相手の心に、長く信頼感を築く可能性を秘めています。

ホワイトペーパーとは?

ホワイトペーパー(白書/White Paper)の語源として、もともと政府や公的機関が発行する報告書を指していました。イギリスで内閣が議会に提出する報告書の表紙の色からホワイトペーパーと呼ばれ、日本もそれにならって同じように呼ぶようになったそうです。

それが転じて、「特定のデータや技術などノウハウをまとめた資料」をホワイトペーパーと呼び、BtoBマーケティングの顧客獲得施策の一環としてSNS広告やWebサイト上で利用されるようになりました。

使われ方の多くは、フォームに会社名/氏名/電話番号/メールアドレス等を入力するとダウンロードできる形にし、自社サービスに興味を持つ可能性のある見込み顧客のリードを獲得するというものです。

ビジネスマンが身近に感じる資料として営業資料があると思いますが、営業資料の目的は「紹介したサービスを導⼊してもらうことで、顧客の課題を解決する」である一方、ホワイトペーパーの目的は「紹介したノウハウを活⽤してもらうことで、顧客の課題を解決する」という違いがあります。

▼営業資料とホワイトペーパーの違い

例えば、ホワイトペーパーに掲載されるノウハウとしては、顧客データ・公開データから見えてきた特徴、実施した施策の中で上手くいったこと、顧客の課題を解決した方法などが分かりやすいでしょう。

ホワイトペーパーに価値を感じてもらえると、それを読んだ担当者が外注・サービス導入を検討する際に、「この前のホワイトペーパーの情報けっこう役に立ったな、あの企業だったら詳しそうだし任せるのもアリかな」と候補先として想起されやすくなります。

<ホワイトペーパーではなくて記事じゃダメなのか>

文章が多く含まれるという点で共通するため、ホワイトペーパーと記事はどう使い分けるのかは、よく聞かれる質問の一つです。

まず前提として、コンテンツマーケティングという考え方を理解する必要があります。コンテンツマーケティングとは、記事・動画・SNSなどの媒体によって情報を伝え続けていくことで、長期的な信頼・愛着を獲得する手法です。ホワイトペーパーもこのコンテンツマーケティングの一種となります。

▼コンテンツマーケティングの比較

SNSが普及したことで、一般消費者むけにYouTube、Twitter、Instagramなどによる情報発信が増えたことは肌で感じられているはずです。それらも文章・画像・動画などを発信者の投稿を通して、最終的に商品購入や来店に繋げるという意味で、コンテンツマーケティングと言えるでしょう。

それでは改めて、ホワイトペーパーが記事とは何が違うかというと、写真・イラスト・グラフなどのビジュアルと自由なレイアウトを使って読みやすいコンテンツを作れる点が大きいです。

先ほども述べましたが、世の中に情報があふれた中で、読み続けてもらえるかどうかは「分かりやすいか」「面白いか」「深いか」にかかっています。

文章や画像をページ内に縦に並べる記事とは違い、ホワイトペーパーでは文字情報・イラスト・図を読みやすく配置することによって「分かりやすく」「飽きることなく」作りやすくなります。

その他の違いとしては、記事だとインターネット検索流入のSEO効果が狙えること、ホワイトペーパーだとダウンロード時に顧客情報(リード)を獲得できることが挙がります。

これらももちろん、顧客獲得を狙う上で見逃すことのできない視点ですが、何より重要なのは、「顧客に価値を感じられる情報を、顧客が求める方法で届けること」です。

<コンテンツを用意できない企業は、土俵にすら立てなくなる>

ある調査によると、顧客の購買プロセスの約半分が営業担当者に会う前に終わっているという結果が出ています。つまり、顧客はインターネットやSNS上で自ら情報収集をして、発注先を絞り込んだ上で、営業担当者と打ち合わせをしているということです。

BtoBマーケティングのコンサルティング会社として有名な、株式会社才流代表の栗原氏も以下のように取り上げています。

営業担当者と会うのは調べた情報の答え合わせのような感覚で、「サービス内容に関する認識違いはないか」「見積もり後の料金感は合うか」「担当者の能力/コミュニケーションは問題なさそうか」を確かめるのみなのでしょう。

なので、WebやSNSでコンテンツを用意して情報を発信できていないと、検討してもらう土俵にすら立つことができないのです。コロナ禍で業務のオンライン化が進んだ時代において、それに気づいて取り組みを強化する企業がよりいっそう増えました。

参照:株式会社才流『新型コロナ禍に伴う、BtoB営業・マーケティングへの影響調査 』

ホワイトペーパー制作の4STEP

お待ちかね、ホワイトペーパー制作の具体的な進め方について入っていきます。

ただ、すぐさま手を動かす前にそもそも「良いホワイトペーパー」とは何なのかをよくよく考えてもらいたいのです。

<良いホワイトペーパーとは、価値ある情報の塊であること>

そもそも情報とは何なのか、人はどう情報の価値を判断しているのかを知ることが良いホワイトペーパーを作る第一歩となります。

古くから情報を制する者は戦いを制すと言われています。

例えば、戦国時代に織田信長が桶狭間の戦いで、今川軍の本陣の情報を突き止め、奇襲をかけて大将を討ち取りました。2万5千人の大軍を率い尾張に侵攻した今川軍に対して、織田軍の兵隊は3〜4千ばかり。劣勢で勝てるはずのない状況を勝利に導いた情報兵は、大将を討ち取った兵よりも多くの褒美を得たそうです。
(※あくまで歴史なので、見解には諸説あります)

昔と比べてインターネットやSNSの発達によって、誰もが情報を得やすくなったのはまぎれもない事実です。しかし、だからといって情報の価値が落ちたわけではありません。

むしろ、「他の人が持たない情報をどのように得るのか(もしくは情報を生み出すのか)」「得た情報をどのように有効活用するのか」がよりいっそう試されるようになりました。

情報に価値がなくなったというのであれば、リサーチ会社なんぞはとっくのとうに廃れていることでしょう。現に存在し続けているのは「得たい情報が得られない」「データを情報として意味のある形にできない」ということ。”アンケートやインタビューを実施して、消費者や顧客の情報をまとめるだけ” と口で言うのは簡単ですが、極めて奥が深い作業なのです。

また、「得た情報をどのように有効活用するのか」の実行課題も決して無視できません。BtoBマーケティングの領域でいうと、企業ブログやnoteをはじめ発信がさかんになり、経営者や有名企業のプロフェッショナルからの情報を無料で享受できるようになったのはありがたい限りです。

一方、知ることになった他社の施策や実例は、自社でそのまま試したとしても果たして上手くいくのか。やりきるのが難しいのではないか、業界特性・予算規模・担当者の能力・ブランド力によって結果は変わるのではないか。そういった前提の条件を見極めた上で、情報を解釈して検討/実行を進める情報活用リテラシーも関わってくるでしょう。

そういった背景があることを十分に理解した上で、「相手にとって価値ある情報とは何なのか?」を突き詰めていくべきです。

<情報価値があるホワイトペーパーとなる代表的な4要素>

情報の重要性を理解した上で、次に情報をどのように作っていくかを考えていきます。

文字情報でも視覚情報でも、世の中の99.9%以上の情報は「ありふれている(または面白くない)」「ばらばらに散らばっている」「分かりづらい」「正確でない」といった課題を持っているでしょう。そこで、テレビ局や新聞社など情報を扱う会社は、独自の取材や編集を通じて、情報がなんとか人々の興味を引くものになるよう試行錯誤しています。

ここでは、情報として価値を感じられるホワイトペーパーを制作する上で、代表的な4つの要素を紹介します。

それは【希少性】【体系性】【容易性】【信頼性】です。この中から最低でも一つを満たすこと、可能であればできる限り多く組み合わせることが望ましいです。

①独⾃化する【希少性】
利用データ、アンケート、顧客の声など⾃社が業務や調査を通じて直接取得したオリジナルの情報を活⽤することです。

これは直接的に体験から得た「一次情報」であり、自社だけが持つ情報になるため、希少性が高く関心を引ける可能性が最も高いと言えます。

顧客のサービス利用データやアンケートから読み解けた潮流・インサイト(内面の洞察)、自社が成功した施策の結果などを公開する方法です。

例えば
・◯◯メディアで月100万円の収益を上げた方法
・人事責任者50人に聞いた採用課題の解決策
・ペーパーレス化でコストを30%削減した顧客事例

②キュレーションする【体系性】
一般公開されているバラバラの情報を整理してまとめたり、ある情報を別の分野の情報と関連付けしたりすることです。

有用な一次情報を持っていないと、良いホワイトペーパーを作れないのかというと、決してそうではありません。

ほとんどの情報はまとまりもなく存在しており、それらの公開情報を整理して意味を持たせるとそこに価値が生まれます。なぜなら、情報を調査して整理するには多大な時間と負担が伴うからです。

例えば
・製造業界で成功したDX事例 10選
・eラーニングシステムの比較表と選び方
・脳科学から学ぶ、強いチームの作り方

③翻訳する【容易性】
通常は専門用語が多用されるような難解な内容を、誰もが理解できる分かりやすい文章表現・画像表現(イラストや図など)に置き換えることです。

新しく生まれたテクノロジーや、公的機関が出す文書などは知識のない者が理解するのは簡単ではありません。専門家によって記された難解な内容を、分かりやすく表現すると、それを必要とする人が喜ぶものとなるでしょう。

特に、ホワイトペーパーでは、文章だけでなく写真・イラスト・図などをふんだんに使って伝えやすいのは大きなメリットです。

例えば
・初心者でも分かる7大セキュリティ
・経済産業省の「2025年の崖」を簡単解説
・非デザイナーのための資料デザイン術

④権威付けする【信頼性】
提供する情報が正確であり、必要な情報が含まれている点をチェックする専門家の監修があることです。

①〜③の要素に比べると与える影響は大きいわけではありませんが、もし読み手の情報リテラシーが高く、情報の正確さを重要視するような高い役職の場合に効果を発揮しやすいでしょう。

監修役はその業界をリードする会社や、実力/知名度の高い専門家が望ましく、ホワイトペーパーが今後乱立していった場合に、ここで差がついていくのではないかと予想しています。

例えば
・東証1部上場企業が監修のもと〜
・チーム力に関する著者との共同制作
・あの有名な◯◯社長が語る経営成功術

ここまでお伝えしてようやく、具体的なホワイトペーパー制作の方法を伝える準備が整いました。ホワイトペーパーは以下STEP1〜4の流れで解説していきます。

STEP1 企画作り(自社のマーケティング課題の明確化/テーマ決め)
STEP2 構成作り
STEP3 文章作り(タイトル/本文)
STEP4 デザイン作り

この制作の基本的な流れは、内製化する時と外注化する時でも変わることはありません。全体の制作概要を押さえた上で、「全て内製化するか」「全て外注するか」「必要な部分だけ外注するか」を検討してみてください。

<STEP1 企画づくり ー 自社のマーケティング課題の明確化>

「企画」とはひどく曖昧な意味を伴う言葉で、自分がこの言葉を使う時でも相手がこの言葉を使う時でも、どういう意味合いを指して言っているのか注意すべきです。

一般的な意味合いとしては「アイデアをもとに、予算と時間がそろえば、実施できる目処が立つ計画」みたいなイメージでしょうか。

ホワイトペーパーにおける企画づくりの本質は「①誰に対して」「②どのような課題を解決して」「③どのようになって欲しいか(自社にとっての理想の状態)」を描いていくことにあります。

そして、それら①〜③をまとめていくと「自社のマーケティング課題の明確化」に繋がっていきます。

※会社によって「マーケティング課題」を「顧客獲得課題」と言い換えても構いません。マーケティング課題は、突き詰めると顧客獲得課題であることが多いので、今回そのように表現しています。

また、ここで注意いただきたいことは、ホワイトペーパーを制作すること自体は決して目的ではないということです。これはマーケティング施策すべてに言えることですが、例えばマーケティングオートメーションでも、タクシー・テレビCMでも話題だからやるのではなく、自社のマーケティング課題を解決できるからやるのです。

そのため、ホワイトペーパー施策を企画するのを機に、改めて「誰に対してどのようになって欲しいか」の自社のマーケティング課題を整理してみましょう。

■【①誰に対して】顧客像を明確化

顧客像の明確化については、ホワイトペーパー制作検討に至るような大半の企業では、すでに設定されていると思うので詳細は割愛させていただきます。

<ターゲット項目例>
・業界 : 「アパレル業界」「ホテル業界」「教育業界」といった企業の業界区分
・従業員数 : 「30〜100名」「300〜500名」「1,000名以上」といった企業の従業員規模での区分
・地域 : 企業の所在都道府県や、都市/郊外/地方などの区分
・役職 : 「社長」「部長」「一般社員」といった役職別の区分
・職種 : 「営業」「マーケター」「人事」といった職種別の区分
・業務内:Facebook広告の運用とレポーティングといった業務内容の区分
・導入サービス : 自社サービスに関係性の深いサービスや、競合サービスを既に導入しているかの区分

■【③どのようになって欲しいか】顧客フェーズを明確化

BtoBマーケティングにおいて顧客を契約まで導いていく流れは階段で考えるべきで、専門用語だと「顧客フェーズ」と呼ぶこともできます。

▼フェーズのイメージ例

この階段は、会社・業界・商材によって様々ですが、特徴としては下の階層に当たる企業数が多く、上の階層に進むにつれて少なくなっていきます。そして、各階層ごとに適したマーケティング施策があるので、企業ごとにその勝ちパターンを見つけていかなければなりません。

どの階層を対象にして、ホワイトペーパーを読んでもらうことで、どのような状態まで進んで欲しいかを定めましょう。

まだ、この顧客の階層分けが自社内でできていないようでしたらホワイトペーパー制作をきっかけに、「潜在顧客」「見込み顧客」「検討顧客」「新規顧客」(専門用語だと、リード/MQL/SQLなど)といった定義づけを是非してみてください。

少々余談となりますが、ホワイトペーパーを検討する企業に弊社がよく確認しているのは、リスティング広告をはじめ課題が顕在化した顧客に対するマーケティング施策を既にやりきったかどうかという点です。もし、そうでない場合はホワイトペーパーへの積極投資はまだ早いとはっきりと伝えています。

ホワイトペーパーの主な目的は「価値ある情報を伝えることで、信頼ある企業と覚えてもらい、将来的に課題解決を社外に求める時に声をかけてもらう」ことにあります。

そのため、今すぐにサービスを契約してもらうというよりは、将来的に顧客数を広げる未来への投資なのです。契約してもらうのが1〜2ヶ月以内のこともあれば、1年後のことだってあります。なので、まずは直近で投資対効果が見えやすい施策から優先して手をつけるべきです。

<STEP1 企画づくり ー テーマ決め>

【①誰に対して】【③どのようになって欲しいか】というターゲット顧客の明確化ができたら、続いて【②どのような課題を解決して】についてです。

テーマ決めとは言い換えると、ターゲット顧客が持つどのような課題を解決するか決めることです。決めるためには「ニーズ調査」と「競合調査」が必要となるので、それぞれの方法をいくつか紹介していきます。

■ニーズ調査方法①Google検索:関連する検索キーワード
Google検索時に、検索結果ページの下部に「他のキーワード」として表示されるキーワードのこと。検索語句や関連サイトを参考に抽出したキーワードの中で、検索数の大きいものが自動的に表示されるため、どういったキーワードに興味を持たれているかが分かります。

例えば、「ホワイトペーパー」というキーワードで検索すると、「ホワイトペーパー制作」「ホワイトペーパー 構成」「ホワイトペーパー デザイン」などが表示されています。制作する上で、全体の構成案やデザインをどのようにすればいいかという情報が探されているのでしょう。

■ニーズ調査方法②Google検索:キーワードプランナー
キーワードごとの月間検索回数を教えてくれるGoogle提供のツールのことで、①の関連する検索キーワードよりも詳しく調べたい時に有効です。Google広告への登録が必要ですが、登録すれば誰でも利用できます。

このツールを使えば、該当のキーワードだけでなくそのキーワードに関連したキーワードの月間検索回数の目安を知ることもできます。以下は「マーケティング」というキーワードを入れた時のものです。

人によってキーワードプランナーは操作方法が複雑と感じられるので、それ以外の方法で知りたい場合は、Google Chromeブラウザで「Ubersuggest」という拡張機能を使うのも良いでしょう。拡張機能をオンにしておけば、Google検索画面から簡単に確認できます。簡易的ではありますが、無料版でもトップ20の検索ボリュームのキーワードを1日3回まで調べられます(2022年1月時点)

■ニーズ調査方法③Twitter検索
キーワードを検索すると、本音の声として「不満」や「課題」を見つけられます。Twitterは特にリアルタイム性が高く、ここ最近で何が話題となっているのかが見つけやすいです。

私の会社でホワイトペーパー制作事業を行う上で、どのタイミングでどのようなホワイトペーパーが求められているのかを日常的に情報を追っています。

社内ではビジネスチャットツール『Slack』を利用しているので、「ホワイトペーパー」という文言の入った投稿があると、そのツイートがSlack内に投稿されるようにしています。『Zapier』というWebサービス同士の連携ツールを使っているので、よければ調べてみてください。

■ニーズ調査方法④商談時
見込み顧客に接する営業担当が商談時に、よく聞かれる質問を集めるのも効果的です。質問として直接聞かれるということは、インターネットやSNS上で顕在化していなくても、同じように考える人達が一定数いる可能性が高いと思われます。

マーケターにとって「顧客の声を参考にすること」は最重要であると言われるにも関わらず、施策の実行ばかりに時間を取られてないがしろになってしまうケースも少なくありません。マーケティング活動の先駆者でもある消費財メーカーP&Gでも「Consumer is Boss」(顧客がボス)という方針で、最優先に考えられています。

私が商談時に心がけていることとしては、「最後に、何か全体を通してご質問・ご不明点ございませんか」「何かその他に聞いておきたいことはありますか」というのを必ず入れて、深く追求しています。

また、商談前に1分でできる事前アンケートというのも実施させていただき、商談時の顧客の要望により正確に応えるとともに、どのようなニーズを持っているのかを逃さないようにしています。商談は営業の場だけでなく、マーケティング調査の場でもあるのです。

▼ホワイトペーパー制作に関する事前アンケート(例)

■ニーズ調査方法⑤既存顧客との接触時
既存顧客に接するコンサルタントやカスタマーサクセスがサービス提供する中で、よく挙がる顧客課題を集めます。サービス契約中で関係性ができており、より突っ込んだ話も聞きやすいです。

わかりやすいところでいうと、「似たジャンルで困っている」「内製化をしていきたい」という要望は上がりやすいのではないでしょうか。

「似たジャンルで困っている」の例でいうと、Webエンジニア紹介事業を運営している場合には、顧客のサービス拡大に伴うWebサイトデザイン強化のために、Webデザイナーもしくはデザインノウハウも必要になってくるケース。

「内製化をしていきたい」という弊社の例でいうと、”制作経験はないので、3本目くらいまではホワイトペーパーを外注していきたいが、以降は内製化していきたい。なので、制作したホワイトペーパーを通して、できる限り今後の自社内での制作にあたり構成・デザインなどを転用できるものにして欲しい” というものです。その声も参考にして制作したのが、以下のホワイトペーパー内製化マニュアルでした。

▼プレスリリース
「ホワイトペーパー内製化マニュアル」を無料提供!成長スタートアップでホワイトペーパーを制作&有効活用 〜株式会社ヌーラボ、株式会社シューマツワーカーの制作事例もご紹介〜

■ニーズ調査方法⑥その他
またその他のニーズ調査方法として、予算や現在の施策状況から可能であれば、これらの方法も考えられます。

・セミナー時
営業・マーケティング担当がセミナーを開催した際に、満足度が高かったテーマや感想の声を集める

・コンテンツ提供(メルマガ、Web記事)
メールマガジン配信や記事公開をした際に、閲覧数やクリック数など反応が良かったテーマを集める

・アンケート調査
既存顧客/リードに対して、もしくは調査会社経由での不特定多数に対して、アンケートを実施し関心事を集める

このあたりの話は興味があるという人が出てくれば、今後より詳しく解説していきます。

■競合調査方法①Web記事
Google検索で挙がる、Web記事を通して競合を探す方法となります。

競合調査の目的は、他社から提供されていない情報を自社が提供することで、興味を持たれやすくすることです。特に人が何かを知りたくなった時は、インターネット検索をすることが一般的となり、既に公開されている情報だと既視感が出て飽きられてしまうでしょう。

▼調査手順
手順1:「ニーズ調査①②Google検索」で見つけたキーワードの中から3〜5ほど有力なものを厳選する

手順2:厳選した各キーワードで検索をかけ、上位20番目くらいまで記事を確認する
※各検索キーワードごとの上位20番目までの記事が全体の半数以上のクリックを受けているため、最低でもそこまではチェックする(下記グラフ参考)

手順3:各記事を「記事の種類」「記事に掲載されている情報」でカテゴリ分けして表を作ることで、既存の公開記事から解決されていない課題がないかを探す

参照:seoClarity『2021 CTR Research Study』

■競合調査方法②ホワイトペーパー調査
競合他社がどのようなホワイトペーパーを公開しているのかを調べることです。すぐに探せる方法としてプレスリリース、サービス紹介サイト、資料比較サイトなどは確実にチェックしておくと良いでしょう。

また、Facebook広告ライブラリという無料ツールを利用すると、出稿中のFacebook広告バナーを確認できるので、競合他社がどのようなホワイトペーパーをFacebook広告で配信しているかを確認できます。

ただ、ホワイトペーパーはWeb記事と比べると閲覧者数が少ないことがほとんどなので、他社がWebサイトや広告上でホワイトペーパーの露出に力を入れていないと判断できれば、あまり気にしすぎなくて構いません。競合との優位性を作るためというよりも、SNSやnote上でどのようなホワイトペーパーが話題になりやすいかの参考にしましょう。


以上のように、ニーズ調査と競合調査について、それぞれ簡単に説明してきましたが、これらはやり切ろうとすればきりがありません。最低限の役に立ちそうな方法を紹介させていただきました。

また、テーマ決めに関連して、ホワイトペーパーの種類は大きく分けて6つの型があるので、これらのうちどれがターゲット顧客の課題を解決しやすそうかざっと押さえておきましょう。

①ノウハウ提供型
解決できる顧客課題:商品・サービス関連や施策の専門知識を網羅的に把握できる。 ※汎用性が高くこの型で制作する企業は多い
例)リモートワーク導入のノウハウを大公開

②トレンド型

解決できる顧客課題:業界の最新動向や最新サービスに遅れることなく、キャッチアップできる
例)2022年ウィズコロナ時代の人材業界動向

③成功事例型
解決できる顧客課題:同業界や同規模の企業の成功事例を知ることで、サービスを導入した際の効果を想像できる
例)食品業界大手5社が導入した成功事例集

④サービス⽐較型
解決できる顧客課題:同ジャンルで似たようなサービスが乱立する中で、「料金」「機能」「デザイン」など特徴の違いを手間なく比較できる
例)AIチャットボットの20ツールを徹底比較

⑤イベントレポート型
解決できる顧客課題:参加できなかったイベントやセミナーの内容を得られる
例)ゼロから始めるECサイト立ち上げセミナー

⑥調査レポート型
解決できる顧客課題:アンケートやインタビューを通して得た、信頼度の高いデータや情報を得られる
例)マーケティング投資に関する調査レポート

テーマ決めが終盤に進むと、どのテーマから優先して制作するべきか悩むことになるでしょう。その際は以下を参考にするのはいかがでしょうか。

【1】狙いたい企業・担当者属性ごとに、それらのニーズを満たすテーマ案を並べる
【2】それぞれの企業・担当者属性について、優先順位を決める
【3】それぞれのテーマ案の作りやすさについて、優先順位を決める
【4】 【2】企業・担当者属性と【3】テーマ案の優先順位を掛け合わせて、最終的な優先順位を決める

なお、企業・担当者属性の優先順位は、過去の顧客データからLTV(利益の合計)が高いか、CAC(顧客獲得費用)が低いか、接点を持ってから契約までのリードタイムが短いかで決めると良いでしょう。

また、テーマ案については自社で既に活用できるデータ・記事・セミナー動画などコンテンツがあるものの優先順位を上げます。そのほかに、テーマは競合がコンテンツとして公開していない場合、差別化につながりやすくなるので評価すべきです。

ここまで進んで、STEP1企画作りの「①誰の」「②どのような課題を解決して」「③どのようになって欲しいか(自社にとっての理想の状態)」が決まります。

<STEP2 構成作り>

構成作りとは、ホワイトペーパーにどのような内容が含まれるかの概要のことです。

構成作りをする上で、「どのような情報を、どのような順番で出して、読み手にどのように理解し感じてもらうか」というストーリーラインを考えることになります。

なぜ、ストーリーラインが大事かというと、人は伝えられる順番によって理解度合いも、興味の持ち方も大きく変わるからです。

この記事では、ホワイトペーパーを制作する上で王道のストーリーラインを伝授させていただきます。

<①問題提起:読者の悩みや関⼼事を投げかける>
・はじめに:ホワイトペーパーの⽬的、得られる効果、全体像を説明する
・目次:⽬次ではスライド内容に対応するページ番号も⽰す
・潮流:テーマに関連した社会や会社の潮流を提⽰する、統計データを⽤いて根拠づけることが多い
・課題:テーマに関係する課題の説明を⾏う、アンケートやヒアリング結果を⽤いることもある

<②要因分析:読者の悩みの発⽣要因や、関⼼事の成功要因を解説する>
基本知識:課題の分析や、課題解決の前提となる基礎知識の解説を⾏う

<③解決策提示:読者の悩みの解決や関⼼事の実現を⾏う具体的⽅法を提⽰する>
応用・実践:課題の解決策として、読者が実践できるノウハウを伝える

<④アクション:解決を後押しする⼿段として⾃社商品・サービスを紹介する>
サービス紹介:⾃社のサービスの特徴や顧客事例の紹介を⾏う

それでは上記を元に、エンジニア紹介事業を行う企業によるテーマと仮定して、簡易的な構成案を作るとこのような準備となります。

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■スライド1.表紙

「はじめてのITエンジニア採用を成功させるコツ」というタイトルを置き、「〜エンジニアの気持ち理解できていますか?〜」というテキストを添える

■スライド2.はじめに
ITエンジニア採用を始めたばかりの企業向けのホワイトペーパーで、成功のコツはエンジニア達が何を考えているのか十分に理解することだと伝える

■スライド3.目次
スライド内容に対応するページ番号を記載する

■スライド4.エンジニア採用市場の課題感
エンジニアをはじめとしたIT人材が年々不足していることが分かるような調査データを掲載する

■スライド5.エンジニア採用課題の要因分析
「優秀なエンジニアが見つからない」「求められる報酬を出すことができない」「エンジニア層に自社の存在を知ってもらえていない」など課題と要因を挙げていく

■スライド6.エンジニア採用課題には、エンジニア理解が解決の鍵
一方で、有名でない中小企業であったとしても、理想的なエンジニアの採用に成功しているケースは存在する。それは働く仕事環境や人、事業の特徴などが、一部のエンジニアに魅力的に感じられたからであるため、それを理解して打ち出していけるようにすることが重要である

■スライド7.エンジニア理解の解決策①エンジニアが書く公開記事を読む
エンジニアの知識記録・共有サービス『Qiita』をはじめ記事を読むことで、エンジニアが何に関心を持ち、何に喜びや怒りを感じるのかを知る

■スライド8.エンジニア理解の解決策②直接エンジニアに話を聞く
知り合いにエンジニアを紹介してもらったり、カジュアル面談プラットフォーム『Meety』を使ったりして話をすることで、自社のエンジニア募集要項にフィードバックをもらう

■スライド9.エンジニア理解の解決策③プログラミングを勉強してみる
本やプログラミングサイトを参考に実際にコードを書いてみることで、エンジニアと円滑なコミュニケーションが可能にできるようにする

■スライド10〜.会社・サービス紹介
エンジニア紹介サービスの3つの魅力、他社サービスとの違い、顧客事例、会社概要を掲載する
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企画者、ライター、デザイナー、ディレクター、顧客など制作関係者が多くなることもあります。その場合は必要に応じて、認識のずれが起こらないよう口頭だけでなくテキストで各スライドの「参考URL(内容のイメージ)」「目的・意図」「影響(読み手にどう感じてもらうか)」なども記載すると良いでしょう。

また、スライド数はどれくらいにするのが適切かは諸説ありますが、弊社では最低15ページを目安として置かせていただいています。というのも、読者の中で経験したことがある人もいると思いますが、ページ数が少なすぎると内容の手抜き感や不足感を味わい、がっかりされる可能性が高まるからです。

タイトル・メールの件名と内容とのギャップがあることで、7割近くの人がこれまで資料ダウンロード後にがっかりした経験があると言われています。

参照:ファストマーケティング『約7割がホワイトペーパーの内容に「がっかり」した経験あり』


<STEP3 文章作り ー タイトル>

タイトルのキャッチコピーは突き詰めると永遠に考え続けなければいけないようなもので、それこそタイトルの付け方だけで数えきれないほどの書籍が出版されています。

なので、本格的に学びたい方は、いずれかの書籍をしっかり読んでいただければと思います。

ここでは、カップ麺にお湯を注いで出来あがりを待つ間に考えられるくらい、お手軽にインパクトあるホワイトペーパーのタイトルをつけるための4つの視点をお伝えします。

ホワイトペーパータイトル4つの視点のベースとなる考え方として、アメリカで活躍するコピーライター ドルー・エリック・ホイットマンが述べた「⼈間の根源的な欲求や強い欲求に向けた広告を打てば⼤きな影響⼒を持つ」という言葉があるので、ぜひ覚えておいてください。

■⼈々が⾏動せざるを得ない根源的な欲求
⽣き残り、⼈⽣を楽しみたい、⻑⽣きしたい/⾷べ物、飲み物を味わいたい/恐怖、痛み、危険を免れたい/性的に交わりたい/快適に暮らしたい/他⼈に勝り、世の中に遅れを取りたくない/愛する⼈を気遣い、守りたい/社会的に認められたい

■強い欲求ではあるが根源的な欲求には敵わないもの
情報がほしい/好奇⼼を満たしたい/体や環境を清潔にしたい/能率よくありたい/便利であってほしい/信頼性、質の良さがほしい/美しさと流⾏を表現したい/節約し、利益を上げたい/掘り出し物を⾒つけたい

そして、これらの欲求に訴えかけられるような、ホワイトペーパーのタイトルをつけるための視点が以下となります。

①時代性ワード
ビジネス、私生活を問わず大半の人は流行をつかみ、時代に乗り遅れないことを望むでしょう。「時代遅れだ」と言われることを避けたいはずです。

利用例:◯◯の最新トレンド、2022年の〜、With/Afterコロナ時代

②成功失敗ワード
当然のことかもしれませんが、人間はできることなら成功を得て、失敗を避けたがりたい生き物です。

そのため、望むと望まざるとにかかわらず、成功・失敗の言葉には必要以上に敏感になるようにできています。あなたの会社が持つ成功体験はもちろん、失敗体験ですら有益な情報となりうるのです。

利用例:〜を成功に導く、失敗しない〜、成功◯選

③簡単ワード
何をするにしても、楽をしたいとは思いませんか?私もそうですし、それ以外の人だって考えることはだいたい同じです。

もし、長々とした文章を見せると、うんざりとされるリスクをはらんでいることでしょう(当記事はそのリスクを踏まえて作成)。最近では幅広い年代の人達がSNSの短い情報に慣れてしまい、集中力を保てる時間が短くなっていると言われています。

また、決済者やリーダーなど仕事で重要な立場にある人ほど、時間がなくて忙しくしています。そのため、お手軽に必要な情報を手にできることが分かると感謝されるでしょう。

利用例:5分で分かる、基本の「キ」、簡単◯つのポイント

④信頼性の数字
人は数字があると信頼する傾向があり、ホワイトペーパーでも同様に興味を引きやすくなります。

中でも、他社の記事やホワイトペーパーでは出せていないような効果を数字で見せることで、より多くのホワイトペーパーダウンロードに繋がるでしょう。

利用例:コンバージョン率を◯◯◯%に改善、費⽤を△/□にした〜、✕✕✕件以上の調査を元にした〜

<STEP3 文章作り ー 本文>

続いて、説得力を感じられる本文の書き方、品質を上げるための文章チェック方法、手軽にできる本文作成方法をそれぞれ解説していきます。

■説得力を感じられる本文の作り方
論理的で説得力を感じさせる文章はほぼ例外なく、ある4つの構成が組み合わせられていると言っても過言ではありません。

その組み合わせとは、「①主張」「②理由(解釈)」「③事実(データ・実例)」「④前提(共通認識)」です。

<①主張>
相手に訴えたい、自分の意見や考えのことです。大半はこれまで見聞きしたり経験したりする中で、特に重要で人に知って欲しいというものが主張に当たります。

<②理由(解釈)>
「①主張」の確からしさを⽰す要素のことです。一般的に、「①主張」に対して「理由」への納得感が高い時に、それは論理的であると言われます。理由は一つではなく、複数であるほど頑強になり、コンサルタントから語られる「その理由は3つあります」にもよく現れているでしょう。マジックナンバー3の法則というのがあるくらいで、1〜2個だと根拠として少なく、逆に多くなると覚えづらくなるので、文章で表現する時には3〜4個がベストです。

<③事実(データ・実例)>
「①主張」「②理由」を補強する客観的な材料のことです。「②理由」を述べただけだと、確かにもっともらしいとしても主観に留まってしまう場合があります。そこで、データや実例といったように起こった出来事・数値から説得性を持たせる必要があります。

<④前提(共通認識)>
「①主張」「②理由」「③事実」で説明が不必要なことです。「海は青い」のように、経験や学習によって誰もが持つ認識で、わざわざ文章にして伝える必要がないことは存在しています。一方で、全く同じ内容を別の人に伝えた時に、知識や経験によって受ける印象が大きく変わることもあります。それが起き得ないかを判断するためには、読者と書き手でどのような共通認識のもとに文章を書いているのか意識しなければなりません。

■品質を上げるための文章チェック項目
文章を作る時はもちろんのこと、作った後にどのようにチェックするかによって文章の品質は左右されます。

・1スライド内の文字数の目安は300〜500前後
資料は文字情報と視覚情報をバランスよく入れる必要があり、多すぎず少なすぎない文字数として、300〜500前後が好ましいです。ホワイトペーパー1本あたり15スライド程度と仮定すると、4,000〜6,000前後の文章量が必要となります。

・1スライド内の項目数の目安は3〜5個
項目やステップを列挙する時に、情報の抜け漏れが少なくなるよう可能な限り項目を網羅的に挙げましょう。文字数が多くなりすぎた場合は優先度の高いものを3〜5項目に絞るか、ページを分けて掲載します。

・言葉遣い
読者に語りかける時や要約する時は「ですます」調で、それ以外の客観的な知識や情報の時は「である」調にするというように、言葉遣いにルールを決めておくとホワイトペーパー全体の統一感が出ます。

・階層構造
階層構造をつけて文章を作成していくと、全体の構造が見えてまとまり方や論理性の矛盾に気づきやすくなります。以下が階層構造の例です。

・スライドの見出し
 ・全体の概要文
  ・小見出し1
   ・説明文
   ・理由の文
   ・例文
  ・小見出し2
   ・説明文
   ・理由の文
   ・例文

・抽象性と具体性
言葉が抽象的で分かりづらい時は文章を長くするか、例文を入れるとイメージがつきやすくなります。また、具体的であることの一つの基準としては、読者が読んだ内容を実践できるかです。

・言葉の定義づけ
専門用語はもちろん、人によって認識が異なる言葉に注意して、ホワイトペーパー内でどのような定義で話を進めるか記載しましょう。例えば、「ホワイトペーパーとは、特定のデータや技術などノウハウをまとめた資料のこと」といったような形です。

・簡単な言葉
必要性がなければ専門用語、意味が難しい漢字・カタカナ語は使わずに、若い学生でも理解できるような簡単な言葉に言い換えましょう。

・表現の揺れ
同じ言葉なのに漢字・ひらがな・カタカナなど、スライドごとに別々の表記とならないように注意しましょう。また、「顧客」「クライアント」といったようにホワイトペーパー内でほとんど同じ意味合いで使われているのに、表現だけ違う場合にも、できる限りどちらかの表現にまとめると良いと思います。

・参照元
どこからか情報やデータを参照した時には、根拠となる参照元を記載しましょう。そのまま活用する場合には、参照元を挙げないと著作権侵害に当たる可能性が出てきます。

・その文の存在理由
説明文でも理由の文でも例文でも、無数の選択肢がある中でなぜその内容を挙げたのかの理由を頭に入れておきましょう。挙げられた内容に根拠がないと、読んでいく中で流れがぎこちなく、すっと頭に入ってこない感覚が生まれます。

・目安の数値
「〜多い」「〜小さい」などの程度を示す際、人によって印象が変わる場合は、「必要なデータは通常〜件程度」のように目安を数値化できると良いです。

・因果関係の明示
「〜した結果、〜となる」「〜すると、〜が向上する」など、何らかの結果を表現する際は、根拠がわかりやすい文章にするため、原因を明示的に記載しましょう。

手軽にできる制作方法
そろそろ文章作りの章も終わりにさしかかってきました。最後に、既にあるコンテンツを活用して、文章作りを手軽に済ませる方法を3つ紹介します。

<①記事から作る>
オウンドメディアやブログを運営しており、過去の記事をもとに文章を整理してまとめる方法です。

記事を公開している大半の会社では、どの記事が多くのPVを獲得していて、CVを獲得しやすいかを計測しているはずです。特に拡散されて話題になったり、読まれたのをきっかけに契約につながったりした記事は、ユーザーの求める情報である可能性が非常に高いでしょう。

そういった記事をベースにして、他の記事と組み合わせて網羅的に全体を構築して、さらには記事の時には表現しづらかったせ説明の図解や、必要に応じて追加の最新情報を盛り込むことで、時間を短縮したホワイトペーパー制作が実現されます。

<②セミナーから作る>
オンラインセミナーの実施が増えた企業もあるので、その録画データと登壇資料を用いて制作する方法です。

まずは、録画データを文字起こしするところから始めます。しかし、起こした文字をそのままホワイトペーパーにするだけでは読みにくいため、それを絵や図で表現したり、専門用語を補足するような前提知識・情報も追加したりも欠かせません。

また、登壇資料はセミナー参加者に読みやすい大きな文字で書かれており、ホワイトペーパーとしてそのまま利用することは難しいです。そのため、そこで使われた重要なトピックやキーワードをメインに、登壇資料の複数ページを一つのページにまとめたり、口頭で言われた説明を掲載したりと再構築を行います。

①記事から作るのと同様に文章素材は存在するので、制作時間を短縮することに繋がります。

<③アンケートから作る>
過去にアンケートを実施した場合には、そのアンケート結果を活用して制作するという方法です。

①や②の方法と比べて文章素材が十分にあるわけではないですが、数字による説得力あるホワイトペーパーを、新たに調査して時間をかけることなく制作できる点がメリットとなります。

アンケートのメインテーマとなる前提知識・情報を解説し、その後にアンケートで出た結果から、どのようなことが言えるのかを丁寧に読み解いていくという手順で進めましょう。

<STEP4 デザイン作成>

STEP4ではデザイン作成についてお伝えしていきます。

あくまで当記事はホワイトペーパーの企画者・コンテンツ担当者向けであるため、資料デザイン制作のスキルを読者自身につけてもらうというよりも、デザイン面のディレクションを円滑に進めるためのコツがメインとなるのでご理解ください。

■レイアウト資料の作成
弊社が行うホワイトペーパー作成において、レイアウト資料とは「デザインを入れる前の、文章素材・画像素材が配置された資料ファイル(PowerPointやGoogleスライドなど)」のことです。このレイアウト資料をもとにデザイナーにデザインを入れてもらうという流れになります。

<レイアウト資料の例>

文章素材自体はSTEP3で既に作成されているので、それをどのように資料ファイル上でどのように配置していくかということです。

基本的には以下画像のように「見出し」「概要文」「小見出し」「説明文」「画像」の組み合わせとなっているのでそのパターンさせ覚えておけば、作っていくうちに慣れていくでしょう。


また、いくつかのデザイン制作会社ではホワイトペーパーのデザインテンプレートやサンプルを用意しているので、それをダウンロードして利用するとレイアウト資料を作成する負担を減らして進めていけるはずです。ご参考までに添付させていただきます。


その他に、弊社ではデザインテンプレートを活用できる、ホワイトペーパー制作SaaS「Slidemaker(スライドメーカー)」のβ版(利用無料)を提供していますので、ご興味ある方はこちらをご覧ください。

■デザイントンマナ決め
カラー、フォント、デザイン参考資料の3点さえ指定しておけばデザイナーやデザイン制作会社が手を進められるようになります。

・カラー
資料内で最も多く使われる「ベースカラー」、一部を強調させたい時に使われる「アクセントカラー」、それ以外の部分を補うために使われる「サブカラー」の3点を決めておきましょう。大半の会社ではサービスサイトに使われるブランドカラーを資料にも適用しています。

・フォント
既に会社内でフォントに関するデザインルールが定められている場合はそれに合わせましょう。もしそうでない場合には、可読性が高いと言われているメイリオにしておくと間違いありません。

・参考資料
どういったイメージにしたいのかの資料を共有できると、より成果物のデザインのズレが起きにくくなります。そのため、自社内にある資料や、他社が提供する資料でイメージの近いものがあれば共有します。

写真共有サービス『Pinterest』で「資料 デザイン おしゃれ」「資料 デザイン パワポ シンプル」のようなキーワードで検索すると様々な資料デザインも出てくるので、興味があれば試してみてください。

■品質を上げるためのデザインチェック項目
色合いのずれがないか
スライドごとに同じ位置にあるような要素が、違う色合いになっていないようにします。

・イラスト/アイコンがイメージと合っているか
テキストの内容を表すイラスト/アイコンを置く時に、イメージがマッチしているものを選びましょう。マッチしていると飽きさせない工夫になるが、マッチしていないと違和感があり気が散ってしまいます。

・スライド内の文字/図形の位置や幅
同じ大きさの文字や、同じ形の図形が縦や横に並ぶときは、位置をそろえて、等間隔になるように注意します。

・スライドごとの文字/図形の位置ずれ
各スライドで、文字/図形を同じ位置に置く必要がある時に、それが上や下に位置がずれないようにします。

・改行の位置
改行された後の下の行が1文字のみの場合や、見出しで意味の切れ目が不自然な位置で改行している場合など、見づらい改行は避けましょう。

・同じ階層のフォントサイズの統一
スライド内の同じ階層にある文字のフォントサイズを統一します。

・グラフの強調
グラフでどの部分に注目すればいいかわかりやすいように、グラフ内での注目点を色や枠で強調します。

・画像の解像度
画像の解像度が高いかどうかを確認し、特にスクリーンショットのように解像度が粗いことの多い画像を扱う場合に注意しましょう。

■初心者が資料のデザイン性を見分けられるようになるには
この記事を執筆する私自身もともとデザインのセンスはゼロで、「それはありえない、お前ほんとセンスないな」と上司や同僚からバカにされていたくらいでした。

それが今では顧客から「非常にスタイリッシュで、細部までこだわりを持って制作いただいていると感じました、ありがとうございます」と感謝されるまでに至ています。デザイナーの努力はもちろんのこと、私のデザインの見極め力アップのたまものです。

じゃあ何をしたかというと、デザインの講座に通ったとか何か特別な訓練を受けたわけではないし、資料デザイン作成に関する本すら読んだ記憶はありません。

やったことはただ一つで、すきま時間にできるだけ多くの公開資料を流し読みし続けたことです。私の場合は、20件を超えると良い悪いの感覚がついてきて、50件を超えると良い時と悪い時の共通点が見えてきました。

長く見ているうちにそれぞれの資料・ページごとに「見やすいな」「かっこいいな」「きれい」「ダサいな」など、マネしたいポイントや気をつけなければいけないポイントが自然に身についていきます。見る目を養い、トップレベルとそうでないものの良し悪しの判断基準を明確にしました。

これはデザインだけではなくビジネス全てにおけることだと思いますが、最高のサービスを提供するには、それを味わったことがなければそもそも最高がどういったものなのかのイメージがつきません。

例えば接客の仕事に携わる人が、学習や研修でリッツーカールトンといった高級ホテルにわざわざ泊まりに行くのは、一流の技を実際に味わいその基準を学ぶためだと言えます。

デザイナーではない限り、資料デザインの制作スキルをつける必要はありません。まずは資料をたくさん見て良し悪しを判断できるようになり、どこをどう修正すれば改善していくか指示ができるようになることからです。

<ホワイトペーパー制作の4STEPに沿って作った例>

弊社では過去に『ホワイトペーパー制作完全ガイダンス』という、初心者向けにホワイトペーパーの企画・制作方法が丸わかりできるホワイトペーパーを制作したことがあります。

(営業電話はしていませんので、読んでみたい方はこちらから資料請求)

そのホワイトペーパーに関して制作に取り掛かる上で扱ったメモ書きを参考として共有させていただきます。

<STEP 1 企画づくり>
①誰に対して
ホワイトペーパー制作に関心があるマーケティング責任者、ホワイトペーパー制作を任されたマーケティング担当者もしくはインサイドセールス担当者

③どのような状態になることを目指して
シャベル株式会社がホワイトペーパー制作の専門会社として想起されやすくする。社内で制作するための人的リソースが足りない時に、シャベル株式会社に相談が来る

②どのような課題を解決するのか
費用対効果の判断方法が分からない 、制作方法が分からないという課題を解決する。Google検索し、他社記事や資料を調査した結果、以下が判明したため。
・ホワイトペーパー制作に関して上流部分のテーマ決めや全体構成に関する情報はまとまっているが、いざ制作を進めるにあたり、制作手順や調査方法など実践的な情報が少ない
・インターネット上にあるホワイトペーパーに関する記事作成者の中で、ホワイトペーパーの制作から運用までを実際に経験している人はほとんどおらず、中でも費用対効果に関する情報は見つからない

<STEP 2 構成作り>
全体構成としては、王道のパターンに従って以下の流れとする
①問題提起:ホワイトペーパー制作者の過去の経験を元に、資料の⽬的や得て欲しい効果を投げかける
②要因分析:マーケティング施策としてのホワイトペーパーの特徴を挙げて、注目されやすい費⽤対効果に関して解説する
③解決策提示:ホワイトペーパーの外注もしくは内製を実行する上で、どのような流れで進めればいいかステップごとに紹介する
④アクション:解決を後押しする⼿段として、シャベル株式会社のホワイトペーパー制作サービスを紹介する

<STEP 3 文章作り>
過去に作成した記事「ホワイトペーパーとは?6つの種類と作り方を徹底解説!」「ホワイトペーパー外注の費用相場と注意点は?代行先の選び方も解説!」などから抜粋し、時間をかけずに文章を作成。

<STEP 4 デザイン作り>
パートナーである資料制作専門のフリーランスデザイナーに依頼し、デザイントンマナは営業資料を参考に渡して作成。特に各箇所ごとのフォントサイズとイラストを細かくチェックし、今後のホワイトペーパー制作のデザインテンプレートにできるよう心がけた。

おわりに

おわりまで読み進めていただき、本当にありがとうございます。こんなに長い文章をいったい誰が読むのだろうかと不安を感じながらも筆を進めていました。

自分が過去に失敗した経験から同じ思いを味わって欲しくないという思いで心を込めて書いてきました。どうすれば、たくさん膝をたたいてくれるのか、目から鱗を落としてもらえるのかと。

ホワイトペーパーというのは情報の塊で、無料で得られる学びの宝庫です。人は生まれてから死ぬまでに学び続ける生き物であり、人ひとりでは決して得られない企業が積み上げたきた叡智を無料で受け取れるのは素晴らしいこです。

とはいっても、日本ではまだまだホワイトペーパーが根付いていないのが現状です。例えば、アメリカでは製品を購入する際の参考材料としてホワイトペーパーがコンテンツ2位に挙がっており、BtoBマーケターの47%も利用しているといったデータも挙がっているほどです。

自分は、これまでEC会社の広告担当者や人材会社のマーケティング責任者を務め、今では事業家として真剣に仕事に取り組んできたので、働くことのプレッシャーは肌にしみて理解しています。

数字が悪ければ上司や顧客に詰められ、打ち合わせのために数字の集計と分析に夜を明かし、相談できる相手もいるとは限らず、答えが分からない中でトライ&エラーを繰り返し、先が見えない暗闇の中でも前に進まなければなりませんでした。

そういった人がビジネスで何かに悩んだ時に、その課題を解決できる一つの手段としてホワイトペーパーが日本で根付くよう、弊社シャベルは啓蒙活動し続けていきたいと思います。

また、ホワイトペーパーの制作方法だけでなく制作後の活用術まで記していきたかったのですが、途中で力つきてしまったことお許しください。もし反響があれば続きも書いていきますので、このnote記事をTwitterやSlackなどSNS・ビジネスチャット上でシェアいただけると非常に喜びます。

最後に、ホワイトペーパーを制作・運用したことがある人、ホワイトペーパーをこれから制作したいと考えている人など、どなたでもご意見・ご相談など情報交換も含めて話ができると嬉しいので、お気軽にメッセージください!

気軽な意見交換、問い合わせ/相談(無料)

▼シャベル株式会社 代表 兼 ホワイトペーパースペシャリスト 高橋 舞伎
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