【心霊】ワーカーホリックと金縛り

今回も心霊体験になります。
いや、正直なところ、心霊体験だったのか心傷体験だったのか未だに判断できない出来事の話となります。

これは私が25歳、社会人5年目の時に体験した話です。


私は社会人1年目からIT企業に従事しておりまして、
当時の私は本っっっっっっっっ当にブラックな職場で仕事をしていました。

どれだけブラックだったかと言うと…

・朝6時に起床して通勤する。
・通勤中は脳内で設計する。
・職場ではデスクに張り付く。
・トイレ休憩は10分以内(その間も設計する)
・1日13時間勤務。
・退勤中は明日やることを整理する。
・日付を跨いでから帰宅する。
・シャワーと歯磨きは合わせて15分
・就寝は2時
・スーツを着て寝る(着替える時間がもったいない)
・夢の中で設計する(運が悪いとテストか悪夢)
・なぜか1時間置きに起きる。

こんな毎日を過ごしていました。
1月の残業時間が100時間を超えており、仕事以外は何も考えていませんでした。

今の現状からすると考えられないのですが、当時の私はワーキングプア、かつ、ワーカーホリックであったと思います。


そんなある日のことです。
私はその日も夜遅くに帰宅して明日の準備をして就寝しました。

当時、敷布団の真ん中に炬燵を置いており(布団を買うのが勿体なかった)炬燵を掛け布団の代わりにしていました。マットレスの代わりに(買うのが勿体なかった)布団の上に座椅子を置いています。

座椅子は角度調整ができるタイプのやつで、炬燵上でパソコンを操作する際は80度、寝る時は160度に調整しています。
これ一つで椅子にもマットレスにもなるということで重宝していました。

冒頭でも記載したのですが、私は就寝しても1時間置きに起きるという習性を持っています。その日も通例通り起きました。


時刻は2時30分。部屋の中は無論、真っ暗です。



当時は寝具をケチっていたのですが、カーテン等の遮光品はとことん拘っていました。理由は以前の記事で書いた通り、薄暗い場所が苦手だからです。
カーテンの甲斐あって部屋は真っ暗で手元にある物すら見えません。

明日も(と言っても今日ですが)朝早くから仕事なので、さっさと寝てしまおうと思いました。一度起きてしまうと寝付くのは大変ですが、この暗さなら安心です。私は背筋を伸ばして、寝付こうとしました。


私「?!?!体が動かない」?!?!


金縛りになったのは幼少期以来でした。
私は半ばパニックになりながらも体の部位に1か所ずつ力を入れ、辛うじて動かせる部位を探しました。

しかし、どうやら動かせるのは目だけのようです。

私は動けない状態で部屋を見回しました。
真っ暗で何も見えませんが、徐々に暗闇に目が慣れてきました。
それに伴って、うっすらと部屋中の物の配置が見えてきました。

見慣れた部屋に安堵していると、ふと炬燵の上が気になりました。
上半身は160度の座椅子、下半身は炬燵の中ですので、辛うじて炬燵の向こう側が見えます。炬燵の上には何か黒い物体が置かれていました。

私「こんなところに何か置いたかな?」

私は寝ぼけた頭をフル回転させて記憶を辿りました。
寝る前の炬燵の上。置かれているのはノートパソコンと充電器に繋いだスマホと…目覚まし時計だけ。

しかし…
目覚まし時計にしては大きい…
それに時間が経つに連れて目覚まし時計は別に置いてあることが何となく視認できました。

…ではこの黒い物体は一体?

考えを張り巡らしているとあることに気が付きました。

黒い物体は炬燵の上に置かれていませんでした。

…炬燵の向こう側に…浮いていました。


全身に鳥肌が立ちました。
目の前にある物体から目が離せません。

人間の脳とは不思議なもので、この黒い物体が「自分の部屋にあることが前提」だと思っている内はその正体に全く気が付きませんでした。

しかし「本来自分の部屋に無いもの」だと確信すると、その正体はすぐに解明しました。



…女性だ…


炬燵の向こう側にある、その黒い物体は髪の長い女性だ。
真っ黒な女性の頭が宙に浮いている。


そう確信しました。

いや、間違っていました。


頭…じゃない...いや、正確には…後頭部じゃない。


こっちを見てる


長く伸びた髪を顔に垂らして

こっちを見てる


表情は全く見えない

でも、髪の毛の隙間からこっちを見ている。


そんな気がする。
これはまるで…


貞子だ…


私達は炬燵を挟んで、互いに見つめ合っていました。

体は動かず、この場から逃げられない。
私の恐怖は最高潮に達していたと思います。


ズズッ…ズズッ…


そうこうしていると謎の音が聞こえてきました。
私はある事に気が付いたのです。

女性が少しずつ大きくなっていく。

少しずつ。少しずつ。
相変わらず髪の毛で顔が見えません。
そのままの姿で大きくなっていきます。


いや、違う。
大きくなっているんじゃない。


炬燵を跨いで、近付いて来てるんだ…


髪の毛で顔は全く見えません。
その状態で少しずつ、私に近付いて来ています。
相変わらず、謎の音もします。

私は強く目を閉じました。



私は目をギュッと閉じたまま念じました。

私にとって最大の恐怖。

金縛りになってから、ずっと頭の中で考えていた恐怖。

私の精神は限界でした。

私は心の中で恐怖に思っていたことを解き放ちました。


「明日仕事なのに!このままじゃ眠れない!」


その瞬間、私はハッとしました。

「何をやっているんだ…どうせ寝るだけなんだから無理に動く必要ないじゃないか」

私は目の力を緩め、深呼吸しました。

気持ち良い…
今日は安心して眠れそうだ…
思い返せば、寝る前に深呼吸して心を静めたのは何年ぶりだっただろうか。

睡眠とは三大欲求の中で最も重要。
睡眠不足により死に至ることさえあります。
思い返せば、社会人になってから仕事仕事の毎日で安心して眠れてませんでした。

うっすら目を開くと炬燵の真ん中には、さっきの女性がいました。
女性は「ズズッ…ズズッ…」と音を出しながら炬燵の向こう側に下がり、そして消えてしまいました。


今日は安心して眠れそうだ…


私は今日一番の確信を持って床に就きました。
翌日、寝具を買うために仕事を早々に切り上げました。

この日を境に私にとって一番の楽しみが更新されました。


大の字になって寝る


これ以上に幸福を感じることは早々ありません。

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