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2日目 資産家の息子

鍵の掛かったドアがある
ー周りの景色は不明、あったような気がするし無かったような気もするが私の記憶には代わりに真っ白な風景が補填されているー
私はそのドアの鍵を持っている
鍵を開ける
私は資産家の息子であった

この夢において、私はとても満たされていた
普段持っているようなあらゆる渇望を失い、虚無すらも持っていない
何も気にならないし何も知ろうと思わない
私が座る長テーブルには、私の頭によぎった物は何でも現れる
食べ物やお金、娯楽に睡眠、健康や愛情までもこの長テーブルは満たしてくれる

だから私は何も思わない
この長テーブルが何なのかも知らないし
自分の親が何をしているかも知らないし
ここが何なのかも知らないし
自分が誰なのかも知らない
唯一知っていることは自分が資産家の息子であるということだけ

ゆったりとした時間が流れている
私は何も思わない
それでも私は満たされている


この夢は満たされているようで満たされていない
なんなら大きな大きな劣等感から生まれた夢であろう
知ることで自分を救えると思っていた
しかし、今自分は認知の檻の中にいる
何も知らずに幸せでいられることへの羨望の眼差し

恐らく、あの長テーブルの上には大きな私の眼球があってあの資産家の息子を瞬きもせず観ていたのであろう
しかし、彼はそんなことすらも知らない

いただいたお気持ちは必ず創作に活かします もらった分だけ自身の世界を広げます