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戯曲『宣誓!僕たちは私たちは。』

登場人物
姫ネズミ(長子)
赤ネズミ(次郎)


夜鷹
ミサゴ

トオル
母親
父親

幕部
刑務官
処刑人
幕部の部下たち

システム1
システム2

宇宙海賊の首領
宇宙海賊たち

村人1〜7


  客入れ。
  病室。子供が一人ベッドで眠っている。
  会場には心電図の音が静かに響いている。

  開演。

  母親が入ってくる。

母親  トオルー。来たよ。今日はねぇ。百合の花、持ってきたのよー。

  母親、花瓶に百合の花を挿す。
  病室の窓を開ける。


母親  今日も本読んであげるからね。今日はね。トレジャーハンターのネズミさ
    んのお話よー。読むね。(本を開く)空の向こう。広い広い宇宙にはまだま
    だ発見されていない星が沢山あります。そしてそこにはまだまだ発見され
    ていない生命たちが沢山います。これはそのまだ発見されていないネズミ
    星のまだ発見されていない赤ネズミと姫ネズミのお話です。

  場転。ネズミ星。
  システム1高い位置に登場。

システム1  (笛を吹く)次郎。

  沢山いる次郎たちが一斉に集まってくる。

システム1  5番に向かえ。

  次郎たち一斉に移動する。

システム2  (笛を吹く)長子。

  沢山いる長子たちが一斉に集まってくる。

システム2  3番に向かえ。

  長子たち一斉に移動する。

システム1  (笛を吹く)次郎。

  次郎たち一斉に戻ってくる。

システム1  7番に向かえ。

  次郎たち一斉に移動する。

システム2  (笛を吹く)長子。

  長子たち一斉に移動する。
  この調子で命令が続く。
  命令はどんどん早くなっていく。
  長子のうちの一人が転んでしまう。周りの長子は気にしない。

  それをみた次郎のうちの一人が立ち止まる。

次郎  大丈夫?

  長子、次郎を不思議そうに見つめる。

システム1・2  就寝。

  次郎たちと長子たち去っていく。
  二人取り残される。
  異様な静けさが二人を包む。

母親  二人は沢山いる次郎と沢山いる長子のうちの一人でした。

  長子、急いで戻ろうとするがまた転んでしまう。

次郎  ちょっと見せて。これ捻挫だよ。
長子  捻挫?って?
次郎  足がグニャってなっちゃって痛くて歩けなくなっちゃうんだよ。
長子  (絶望している)
次郎  大丈夫だよ。ちょっと待ってて。

  次郎テープを持ってくる。
  長子不思議そうな顔をしている。
  次郎、長子の足をテープでぐるぐる巻きにし始める。
  長子びっくりして次郎を殴り始める。


次郎  待って。ちが。大丈夫だから。(完成する)できた。

  長子の足が明らかにやりすぎなくらいテーピングされている。
  ただ、そのテープは明らかにテーピング用ではない。

次郎  歩いてみて。

  長子、恐る恐る歩いてみる。
  初めはうまく歩けるがすぐ転ぶ。

次郎  どうしてだろう。

  しばらくして。

次郎  そうだ。冷やそう。(移動しながら)川に行こう。こっち来て。
長子   (首を振る)
次郎  大丈夫だよ。もう何回も出てるけど一回もバレてない。ほら、おいで。

  長子、恐る恐るついていく。
  場転。河原、二人が居た施設から少し離れると美しい風景が見える。

次郎  足入れてみて。

  長子、足を入れる。

長子  気持ちいい。
次郎  よかったあ。
長子  どうしてこんなに色々知っているの?
次郎  見てこれ。

  次郎、スマートフォンを取り出す。

長子  何それ。
次郎  三日前ここで拾ったの。何かは知らないんだけど。色んな情報が載ってる
    んだ。
長子  へぇー。これはなんて書いてあるの?
次郎  これは政治家って人が汚職って言うのをしたんだよ。
長子  へぇー。これは?
次郎  これは不正って言うのがされたんだ。
長子  へぇー。これは?
次郎  それはね。ちょっとここでは言えない。
長子  なんで?
次郎  ここで言うのはまずい。
長子  そうなの?
次郎  そう。
長子  ふぅん。

  間。

長子  ここ。赤くなってるよ。
次郎  うん。どんどん減っていってるんだ。
長子  減っている?

次郎  最初は白かったんだけど。僕ね。トレージャーハンターになりたいんだ。
長子  とれじゃ?
次郎  トレージャーハンター。宇宙中を周って宝物を探す仕事なんだ。宇宙中だ
    よ。
長子  お宝。
次郎  そう。
長子  すごい。
次郎  でしょ。
長子  でもそれって。
次郎  、、、。
長子  この星から出るってこと?
次郎  そう。
長子  そんなことできるの?
次郎  出来ない、と思う。
長子  そう。

  間。

次郎  僕ね。連絡してみたんだ。
長子  連絡?
次郎  ここに。(スマホを見せて)
長子  まっとないとほーくす?
次郎  ここに入ればトレージャーハンターになれるらしくて。
長子  すごい。
次郎  それで僕もマットナイトホークスに入れてください、って。
長子  すごいすごい。どうやって?
次郎  このメールっていうなんか、あの、電波でビューンってなって。
長子  ほぉん。
次郎  それでね。返事が来たんだ。
長子  マットナイトホークス?
次郎  マットナイトホークス。
長子  え。すごいすごい。なんて来たの?
次郎  面接するって。
長子  すごいすごい。
次郎  うん。
長子  いつなの?
次郎  今日。だった。
長子  そっか。
次郎  うん。

  間。

次郎  しょうがないよ。元々、この星を出ることなんて出来るとは思ってなかっ
    たし、自分はここで生きて死んでいく。別にそれが悪いことなんて思って
    なかった。思ってなかったんだけど。これで色んな世界があるんだって知
    って、それで、ちょっとだけ夢を見てしまった。それだけ。

  間。

長子  あ。

  スマホ、バッテリーがなくなってしまう。
  必死にあちこちのボタンを押すが動かない。

次郎  帰ろうか。
長子  うん。

  二人立ち上がる。
  施設の方で爆発音が聞こえる。
  二人、走って施設に向かう。
  施設に着くと次郎たちと長子たちが怯えている。
  謎の小型飛行物体が施設に衝突したようである。
  中からミサゴが出てきて何かぼやいている。

ミサゴ  やってしまった。やはりナイトグラス(※1 )がないとダメだな。全く、急
     な仕事渡しやがって。全く。(次郎たちを睨みつけ)次郎、とやらはいる
     か?

  次郎たち怯える。

次郎  あの、僕です。
ミサゴ  面接をすっぽかすとは何事だ。
次郎  すみません。あの、マットナイトホークスの人ですか?
ミサゴ  そうだ。
次郎  どうして。
ミサゴ  面接の連絡をしたのにお前が来ないからだ。
次郎  迎えに来てくれたんですか?
ミサゴ  そうだ。サービス残業だ。いいから早く来い。夜鷹様がお待ちしてい
     る。

  次郎、感極まっている。

ミサゴ  ほら早く来い。
次郎  はい。

  たくさんの次郎と長子たちがこちらを見ている。
  その中にさっきの長子を見つける。

次郎  来る?
長子  え?
次郎  一緒にくる?
長子  いいの?

  警報がなり始める。
  外からシステムたちが騒いでいる声が聞こえる。

ミサゴ  早くしろ。
次郎  おいで。

  たくさんの視線を感じる。
  しかし、それを振り切って二人は小型飛行物体に乗り込む。

ミサゴ  シートベルトしろ。

  二人、あたふたしている。

ミサゴ  それだそれ。

  ため息をつきながらベルトをつけてあげる。

ミサゴ  (色々起動させながら)大気圏を出るまでは揺れるからな。口開けるんじ
     ゃないぞ。出発!

  出発とともに病室にて風で花瓶が倒れる。

母親  ありゃりゃりゃ。(窓を締めながら)風が強くなってきたねー。

  床に溢れた水を拭き。花瓶に水を足す。
  ふと、子供のおでこを触る。
  穏やかな寝顔である。物語の続きを読み始める。

母親  暗い宇宙をすごいスピードで進んでいく三人。しかし、夜行性ではないミ
    サゴの運転はちょっと、ううん、かなり不安定でした。なので、宇宙船に
    到着した時には次郎も長子も満身創痍でした。

  宇宙船に着く。
  荒々しい運転で二人は満身創痍である。

ミサゴ  全く、早く宇宙にも外灯をつけて欲しいものだな。ほら、何している。
     早く、夜鷹様のところへ向かうぞ。

  二人、よろめきながらも頑張ってミサゴに着いていく。
  ミサゴは歩くペースを落としてくれない。
  やがて、夜鷹の部屋に到着する。謎の美しい花が飾られており、その周りを蝶
  が飛んでいる。

ミサゴ  夜鷹さま。例のネズミを連れてきました。
夜鷹  ご苦労さま。下がっていいぞ。
ミサゴ  はい。

  ミサゴ、部屋を出る。

夜鷹  君が、次郎だな。
次郎  はい。
夜鷹  どうして、面接に来なかった。
次郎  それは、その。来る手段がなくて。
夜鷹  なるほど。
次郎  すみません。
夜鷹  まあいい。送ってきたメールに年齢三十九歳とあるが、どう見てもそんな
    年には見えないが。
次郎  すみません。その、自分の年齢が分からなくて、適当に書いてしまいまし
    た。
夜鷹  なるほど。
次郎  すみません。
夜鷹  まあいい。身長一七八・九、体重六九・八、とあるが。
次郎  すみません。自分の身長と体重が分からなかったので、男性の理想の身長
    と体重を調べて出てきたものを書きました。
夜鷹  なるほど。
次郎  すみません。
夜鷹  まあいい。一緒にいる彼女は?
次郎  彼女は、その。
長子  私もトレージャーハンターになりたいです。トレージャーハンターにして
    ください。お願いします。
次郎  トレージャーハンターにしてください。お願いします。
夜鷹  なるほど。

  間。

夜鷹  トレジャーハンターだ。
二人  え?
夜鷹  トレージャーハンターじゃない。トレジャーハンターだ。

  二人、赤面すると同時に落ちたと思い落胆する。

夜鷹  まあいい。仲間に入れてやろう。
二人  え?
夜鷹  我々は常に人手不足だ。トレージャーハンターだろうがなんだろうが味方
    になってくれるなら大歓迎だ。

  二人、大喜び。
  しばらくして、夜鷹の視線に気づき冷静になる。

夜鷹  それでは二人にコードネームを与える。
二人  コードネーム?
夜鷹  トレジャーハンターとしての名前だ。マットナイトホークスに所属してい
    るやつは全員コードネームを名乗っている。コードネームじゃないのは俺
    とあと一人しかいない。まあいい。早速、コードネームを与えよう。(次
    郎に)赤ネズミ(長子に)姫ネズミ。これがお前たちのコードネームだ。
赤ネズミ  赤ネズミ。
姫ネズミ  姫ネズミ。
赤ネズミ  姫ネズミ。
姫ネズミ  赤ネズミ。
赤ネズミ  姫ネズミ!
姫ネズミ  赤ネズミ!

  二人、感極まって抱擁する。
  しばらくして、夜鷹の視線に気づき冷静になる。

夜鷹  部屋は用意してあるからそこで寝泊まりするといい。仕事がきたら招集を
    かける。以上だ。ミサゴ。

  ミサゴ、部屋に入ってくる。

ミサゴ  なんでしょうか?
夜鷹  赤ネズミと姫ネズミを部屋に案内してやってくれ。
ミサゴ  わかりました。(二人に)着いてきな。
二人  はい。

  ミサゴ、二人を部屋に案内する。

ミサゴ  ここが赤ネズミの部屋で、ここが姫ネズミの部屋だ。わかったな?
二人  はい。
ミサゴ  いつ招集がくるか分からんからなるべく休んでおけ。
二人  はい。
ミサゴ  よし。部屋に戻れ。
二人  はい。

  二人、それぞれの部屋に入る。
  部屋の窓からは広い宇宙が見える。
  ノックの音がする。

赤ネズミ  はい。

  ドアを開けると姫ネズミがいる。

姫ネズミ  赤ネズミ。
赤ネズミ  どうしたの?
姫ネズミ  コードネーム。
赤ネズミ  姫ネズミ。
姫ネズミ  もう一回。
赤ネズミ  姫ネズミ。

  姫ネズミ、感銘を受けている。
  ふと、窓の外をみる。

姫ネズミ  もう、帰ることはないのかな。
赤ネズミ  そんなことないよ。僕らはもう自由なんだから。いつか帰れる日も来
      る。
姫ネズミ  なんか、私だけこんなに幸せになっていいのかな。
赤ネズミ  いつか。みんなのこと迎えに行こう。絶対。それで夜鷹さんにコード
      ネームをつけてもらおう。
姫ネズミ  うん。わかった。じゃあね。
赤ネズミ  うん。おやすみ。

  姫ネズミ部屋を出ていく。
  赤ネズミ、窓の外を見ながら故郷に思いを馳せ、そのまま疲れ果てて眠ってし
  まう。しばらくして。

ミサゴ  起きろ。起きろ、赤ネズミ。赤ネズミ。

  赤ネズミ、目を覚ます。

ミサゴ  初仕事だ。いくぞ。

  三人、小型飛行物体に乗り込む。
  発信する。

赤ネズミ  どこにいくんですか?
ミサゴ  ここから四〇五,〇〇〇km先にある未開の星に秘宝があるという情報が
     入った。知っての通り俺たちは宇宙中の秘宝を見つけ出し集めるのが仕
     事だ。
赤ネズミ  取った秘宝はどうするんですか?
ミサゴ  金持ちに高値で売り払う。秘宝一つで星が五つ買える。
姫ネズミ  それは高いんですか?
ミサゴ  あ、ああ。かなりな。
姫ネズミ  へぇ。すごいね。

赤ネズミ  うん。
ミサゴ  夜鷹様が秘宝のある場所を探し、そこに実際に向かうのが俺たちの仕事
     だ。わかったか?
二人  わかりました。
姫ネズミ  夜鷹さんはどうやって秘宝がある星を見つけているんだろ。
ミサゴ  あの人がどうやって秘宝のありかを探しているかは分からない。謎の多
     い人だよ、全く。着くぞ。

  目的の星に到着する。
  高い木がたくさん生えている暗い星。

ミサゴ  じゃあ、お前ら。あとは頑張れよ。
姫ネズミ  一緒に来てくれないんですか?
ミサゴ  俺も別件があるからな。帰りにまた迎えに来る。じゃあな。

  ミサゴ、去ってゆく。

赤ネズミ  行っちゃったね。
姫ネズミ  探すって言ってもどうすればいいんだろ。
赤ネズミ  とりあえず、歩いてみようか

  二人、彷徨い歩く。
  しかし何も見つからない。

赤ネズミ  探し方のコツとかミサゴさんに聞いておけばよかった。こんなに広い
      ところ探すなんて無理だよ。

  二人、疲れてしゃがみ込む。
  近くの草むらで物音がする。

姫ネズミ  何?

  草むらから小さい子供の手が出てくる。

赤ネズミ  子供?
姫ネズミ  迷子かな。

  子供の手は震えている。

赤ネズミ  怖がってるのかな。
姫ネズミ  大丈夫だよ。こっちにおいで。

  子供の手、徐々に近づいてくる。
  しかし、段々と子供の手をしたそれが子供ではないことに気づく。
  悍ましい姿をしたそれと目が合う。
  二人、絶叫して逃げまとう。
  どこからか「ヒョーヒョー」という鳴き声が聞こえる。

姫ネズミ  何か聞こえる。
赤ネズミ  行ってみよう。なんだか呼ばれてる気がする。

  鳴き声がする方に向かう。すると、小さな祠が見える。

鵺  こっちだよ。

  祠から声が聞こえる。
  二人、祠に身を隠す。
  化け物が迫ってくる。その瞬間、美しい蝶が祠から出てくる。
  化け物は蝶に連れられてそのままさってゆく。
  二人、恐る恐る出てくる。

赤ネズミ  いなくなったみたいだね。
姫ネズミ  うん。
鵺  大変だったね。

  二人、驚く。

鵺  怖かったでしょ。
赤ネズミ  だ、誰ですか?
鵺  君たち新しいトレジャーハンター?
赤ネズミ  見えますか?
鵺  うん。

  赤ネズミ、感極まっている。

姫ネズミ  もしかして、助けてくれた人ですか?
鵺  そうだね。
二人  ありがとうございます。
鵺  いいよ、いいよ、そんな。初仕事?
赤ネズミ  わかりますか?
鵺  なんとなくね。夜鷹にしては雑なことをするな。それともまたミサゴがヘマ
   したのかな。秘宝、どこにあると思う?

  二人、考え込む。

鵺  そう遠くないみたいだよ。
姫ネズミ  もしかしてあれ?(さっきまで隠れていた祠を指さす)
鵺  勘はいいみたいだね。

  二人、急いで祠の中を覗く。
  すると、そこには美しい光を放った秘宝が小さい台座に置かれている。
  赤ネズミがそれを外すと放たれていた光が消え少し色が霞む。
  二人、喜び飛び上がる。

鵺  未開の星なんて言われているけど、それは開発する側の主観であってそれぞ
   れに文明を持っている。それぞれの星がそれぞれの形で自分たちの神を作り
   上げてきたんだ。皆んなその神様を信じて神様もみんなを見守っている。

  二人、キョトンとしている。

鵺  ごめんごめん。難しい話しちゃったね。要はその星の中で一番文明を感じる
   場所に秘宝はある。覚えといて。
赤ネズミ  あのあなたは。
鵺  俺は鵺。よろしくね。

  姫ネズミ、美しく咲く奇妙な花を見つける。

姫ネズミ  綺麗。さっきまで咲いてなかったのに。
鵺  綺麗でしょ。でも、この花は荒地百合って言って星を滅ぼす花なんだよ。
姫ネズミ  え?
鵺  荒地百合が咲くと他の植物が育たなくなる。その星は荒地百合の花粉に覆わ
   れ生物が住むことができなくなる。
姫ネズミ  じゃあ、この星は。
鵺  近いうちに滅びるだろうね。
姫ネズミ  そんな。どうして。今?
鵺  さあ、どうしてだろうね。
赤ネズミ  鵺さんはマットナイトホークスのトレジャーハンターなんですか?
鵺  トレジャーハンターか。

  悍しいうめき声が聞こえる。

鵺  俺は、宇宙海賊だって名乗っておこうかな。一応。

  後ろを振り向くとさっきの怪物が恐ろしい形相でこちらをみている。
  「ヒューヒュー」という鳴き声が聞こえる。
  振り向くと鵺はいない。
  二人、逃げる。化け物すごい怒り狂っている。

姫ネズミ  さっきより怒ってる。
赤ネズミ  振り向かないで。追いつかれるよ。

  ミサゴが飛行物体に乗って登場する。

ミサゴ  秘宝は見つけたみたいだな。やるじゃねぇか、チビども。
二人  ミサゴさん。

  ミサゴ、二人を飛行物体に乗り入れる。
  3人、その星を去る。化け物の咆哮が聞こえる。

姫ネズミ  よかったのかな。
赤ネズミ  何が?
姫ネズミ  なんでもない。

  場転。夜鷹の部屋。

夜鷹  二人とも、よくやった。今回の報酬だ。受け取れ。

  袋いっぱいの金貨が二人の前に置かれる。
  二人、目を輝かせる。

夜鷹  初仕事で疲れただろう?今日はゆっくり休め。いいな。
二人  はい。
夜鷹  下がってよし。

  二人、部屋から出ていく。
  ミサゴが声をかけてくる。

ミサゴ  チビども。
姫ネズミ  あの。
ミサゴ  なんだ?
姫ネズミ  私たちはチビどもじゃありません。
ミサゴ  悪い悪い。そうカッカするなよ。赤ネズミ、姫ネズミ。お前らこれから
     どうするんだ?
赤ネズミ  部屋に帰ってゆっくり休みます。
ミサゴ  お前らそんなことじゃこの先やっていけないぞ。
赤ネズミ  え?だって昨日は。
ミサゴ  この仕事はストレスが溜まるんだ。なのに、働いて寝て働いて寝て。そ
     の繰り返しじゃいつか壊れちまう。
赤ネズミ  そうなんですか?
ミサゴ  まあまあ、安心しろ。ストレスを溜めない方法がある。
赤ネズミ  どうすればいいんですか?
ミサゴ  機械っていうのはな、油を差さなきゃいけないんだよ。それは俺たちも
     同じだ。じゃあ、俺たちにとっての油はなんだと思う?
赤ネズミ  なんですか?
ミサゴ  ついてこい。

  赤ネズミ、着いていこうとする。

姫ネズミ  行くの?
赤ネズミ  大丈夫だよ。トレジャーハンターをやっていく上で大事なことなんだ
      と思う。一緒にいこ。
姫ネズミ  わかった。

  二人、ミサゴについていく。

  場転。

  船内のクラブ。重低音が鳴り響く。
  船員たちが非日常を楽しんでいる。
  ミサゴ、赤ネズミ、姫ネズミの三人が入ってくる。
  ミサゴ、ナイトグラス(※1 )をかける。
  三人、席に着く。ミサゴ注文をしている。

姫ネズミ  すごい音。
赤ネズミ  ここはなんの場所ですか?
ミサゴ  ここは避難所だ。
赤ネズミ  避難所。
ミサゴ  現実から逃げたいことって沢山あるだろ?そういう時はここに逃げるん
     だ。
姫ネズミ  ここは現実じゃないんですか?
ミサゴ  (笑いながら)姫。お前面白いこと言うなぁ。

  三人の前にカラフルな液体が用意される。

赤ネズミ  なんですかこれは。
ミサゴ  これこそが俺たちの油だよ。

  ミサゴ、目の前の液体を一気に飲み干し。

ミサゴ  あー、効くねぇ。ほら、赤、お前も飲め。

  赤ネズミ、生唾を飲む。
  姫ネズミ、それを心配そうにみている。

ミサゴ  どうした。次郎。飲め。
赤ネズミ  次郎って呼ばないでください。
姫ネズミ  あ。

  赤ネズミ、カラフルな液体を飲み干す。
  視界がゆらぐ。

ミサゴ  いいぞ。赤。いい飲みっぷりだ。
赤ネズミ  次郎って呼ばないでください。僕は赤ネズミれす。
ミサゴ  そうだ。赤ネズミ。飲め飲め、もっと飲め。

  赤ネズミのグラスにカラフルな液体が注ぎたされる。
  赤ネズミ飲み干す。
  会場が湧き上がる。

ミサゴ  最高だよ。赤ネズミ。お前は最高のトレジャーハンターだ。
赤ネズミ  そうれす。僕はトレージャーハンターなのれす。僕はもう次郎じゃな
      い。
姫ネズミ  赤ネズミ。
ミサゴ  そうだ。お前はトレジャーハンターの赤ネズミだ。
赤ネズミ  そうだあああああああああああ。
姫ネズミ  赤ネズミ!
ミサゴ  姫。お前も飲め。
姫ネズミ  飲まない。
ミサゴ  そうか。赤ネズミ、お前は上にいく男だ。だったら、これもやってみ
     ろ。

  ミサゴ、ポケットからカラフルな粉を取り出し赤ネズミに吸わせようとする。

姫ネズミ  だめ!

  姫ネズミ、粉をはたき落とす。

  暗転。

  赤ネズミ目を覚ます。自分の部屋。頭が痛い。貰った報酬が全てなくなってい
  る。
  部屋の机で姫ネズミが突っ伏して眠っている。
  赤ネズミ、どうすればいいかわからない。自分が喉が乾いていることに気づき
  水を飲みにいく。
  夜鷹の部屋の前。声が聞こえる。
  赤ネズミ、ドアから部屋を覗く。鵺と夜鷹がいる。部屋の奥に荒地百合が飾ら
  れている。

鵺  初仕事の新人を随分と危ない星に飛ばすんだね。
夜鷹  そうか、だからか。
鵺  だからか?
夜鷹  生きて帰ってくるとは思っていなかったから。
鵺  夜鷹。雰囲気変わったね。
夜鷹  そうか?
鵺  うん。昔はあんなに小さかったのに。
夜鷹  俺は歳をとるからな。
鵺  そうだね。
夜鷹  鵺は変わらないな。
鵺  そうかなー、だいぶ変わったけどなぁ。ここら辺とか。
夜鷹  分からないよ。もう、俺の方が年上みたいだな。
鵺  老けたよね。
夜鷹  そうだな。

  間。

夜鷹  あいつらに帰る場所があるとは思えない。死ぬタイミングはあそこだろ。
鵺  でも、帰ってきた。
夜鷹  お前のせいでな。
鵺  俺の知ってる夜鷹はもっと諦めが悪いはずだよ。
夜鷹  そうだな。次はまともな仕事を渡そうかな。

  部屋に飾られている荒地百合が淡く光る。

鵺  なんて言っているの?
夜鷹  次の秘宝が見つかったみたいだな。ん?

  夜鷹、赤ネズミに気づく。ドアを開ける。

赤ネズミ  すみません。
夜鷹  赤ネズミ。ミサゴがすまなかった。あいつはよく何かに逃げたがるんだ。
    許してやってくれ。
赤ネズミ  いえ、その。
夜鷹  おそらく、明日仕事を任せる。備えておいてくれ。
赤ネズミ  はい。

  鵺がこちらに向かって手を振っている。
  夜鷹、ドアを閉じる。様々なことに困惑する。頭が痛い。
  ふと、自分が水を飲みにきたことを思い出し飲みにいく。
  水を飲み終え、部屋に戻る。姫ネズミに目を向ける。
  少し安心して眠る。
  目を覚ます。姫ネズミはすでに仕事の準備を終えている。

姫ネズミ  次の仕事だって。いこ。

  赤ネズミ、ぼーっとした頭で。

赤ネズミ  昨日はごめん。
姫ネズミ  許さないけどいい?
赤ネズミ  うん。ごめん。
姫ネズミ  そう。いこ。
赤ネズミ  うん。

  集合場所に向かうとミサゴはいない。
  代わりに夜鷹がいる。

夜鷹  きたか。
姫ネズミ  遅れてすみません。
夜鷹  構わん。赤ネズミ、大丈夫か?
赤ネズミ  はい。大丈夫です。
夜鷹  そうか、ならいい。今日はミサゴはいない。二人には今日から自分たちだ
    けで仕事をしてもらう。いいな?
二人  はい。
夜鷹  よし、二人とも乗り込め。
二人  はい。
夜鷹  この飛行船にはオートパイロットモードがある。ここで起動。そして、こ
    こに情報を打ち込めば自動で目的地まで向かってくれる。わかったな。
二人  はい。
夜鷹  よし。これがその星の地図だ。まあ、ここから北西に真っ直ぐ三九七,六〇
    〇km先にある小さな星だ。この星を探索してきてくれ。それが今日の二
    人の仕事だ。いいな?
二人  わかりました。
夜鷹  よし、じゃあ行ってきてくれ。
二人  わかりました。行ってきます。

  二人を乗せた飛行物体が飛んでいく。

鵺  見張りをつけなくていいの?
夜鷹  いいんだ。帰って来なかったらそれまでさ。

  二人、去る。
  星に到着する。
  飛行物体から降りる。
  灰色の空。破壊された文明のあと。地面は荒地百合が覆い尽くしてしまってい
  て見えない。

赤ネズミ  荒地百合だらけだね。
姫ネズミ  滅んだ星、なのかな。
赤ネズミ  とりあえず探索してみよ。
姫ネズミ  うん。

  二人歩き始める。
  何者かが二人の後を尾けている。

姫ネズミ  どうして夜鷹さんはここに来させたんだろ。
赤ネズミ  わからないけど。何か考えがあるんだよ。
姫ネズミ  (ため息をついて)赤ネズミはあの人のこと信用しすぎだと思う。
赤ネズミ  どう言うこと?

  そうこうしているうちにこの星で一番大きな神殿であったであろう場所につ
  く。

赤ネズミ  鵺さんが言っていたよね。その星の中で一番文明を感じる場所に秘宝はあるって。
姫ネズミ  うん。
赤ネズミ  行ってくる。
姫ネズミ  待って。
赤ネズミ  何?
姫ネズミ  危ない気がする。
赤ネズミ  大丈夫だよ。姫ネズミはここで待ってて。行ってくる。
姫ネズミ  待ってって。たまには。

  赤ネズミ、行ってしまう。
  姫ネズミに怪しげな影が迫る。
  そんなことも知らず赤ネズミは神殿の中に入っていく。
  中に入ると台座横の灯籠に勝手に火がつく。そこには美しい小さな箱がある。
  赤ネズミ、大喜びで箱に手を伸ばし開ける。
  すると、中から麻痺毒が塗られた毒針が飛んできて赤ネズミに刺さる。
  痺れて動けなくなる。
  すると、物陰から幕部と刑務官が飛び出てくる。

幕部  やった。やったぞ刑務官。二匹だ。これは私の手柄だ。やはり犯人は現場
    に戻ってくるものなのだ。
刑務官  そうですね。幕部警部の勘が当たることもあるようです。
幕部  そうだろう、そうだろう。はっはっは。
刑務官  私も笑わせていただきます。

  二人、笑っている。
  「ヒョーヒョー」という鳴き声が聞こえる。
  どこからか鵺が現れる。

鵺  大変そうだね。
赤ネズミ  ぅぇざん。
鵺  無理に喋らないほうがいいよ。
赤ネズミ  ぁぃ。
幕部  刑務官。あれは鵺ではないか?
刑務官  そうですね。あれは鵺ですね。
幕部  大物だ。捕まえろ刑務官。
刑務官  お言葉ですが、私には敵を捕獲するような能力はありません。
幕部  じゃあ、どうするんだね。
刑務官  お言葉ですが、幕部警部の能力の方が鵺を捕獲できる可能性が高いか
     と。
幕部  そうか。そうだな。よし、そうしよう。(鵺に)我々は宇宙警察である。大
    人しくお縄につきたまえよ。君。

  幕部、拳銃を向けるかのように指先をこちらに向ける。

鵺  逃げるよ。

  二人の姿が消える。

幕部  鵺が消えたぞ。刑務官。
刑務官  そのようですね。
幕部  鵺が消えたぞ。刑務官。
刑務官  そのようですね。
幕部  鵺が消えたぞ。刑務官。
刑務官  そのようですね。
幕部  刑務官。
刑務官  お言葉ですが、今回の我々の目的は十分果たせたかと。

  影たちが捕らえた姫ネズミを連れてくる。

幕部  それもそうだな。じゃあ、本部に戻ることにしよう。

  幕部たち去る。
  場転。夜鷹の部屋。

夜鷹  そうか。ご苦労だったな。
赤ネズミ  ご苦労だったな。ですか。
夜鷹  ああ。俺たちの仕事は常に危険と隣り合わせだ。このくらいのことはいく
    らでもある。
赤ネズミ  でも。
夜鷹  でも。なんだ?お前たちだけ特別扱いはできない。下がっていいぞ。

  赤ネズミ動けない。

鵺  どうして。あの星に二人を行かせたの?

  夜鷹、黙っている。

鵺  あそこに秘宝がないことはわかっていたよね。それとも荒地百合が嘘をつい
   たの?
夜鷹  赤ネズミ、下がれ。
鵺  下がらなくていいよ。
夜鷹  怒ってるのか?
鵺  怒ってる。
夜鷹  そうか。

  沈黙。

夜鷹  恐らく、宇宙警察に俺の能力がバレた。
赤ネズミ  宇宙警察?
夜鷹  今日お前らを襲った連中だ。二人は知らないだろうが俺は荒地百合の声を
    聞くことが出来る。(部屋の荒地百合を指して)こいつを通じて宇宙中の荒
    地百合の声を集めて秘宝の場所を探し出している。だから。
赤ネズミ  あの、どうして僕らが宇宙警察に狙われるんですか?
夜鷹  それは。
鵺  宇宙海賊だからだよ。
赤ネズミ  え?宇宙海賊?トレジャーハンターじゃ。
鵺  そう呼ばれているんだ。俺たちは。
赤ネズミ  え?
夜鷹  そう言うことだ。今までは俺の能力で奴らの追跡を避けてきた。だが、最
    近なぜか俺たちの行動を先回りしているように感じる。だから。

  夜鷹、言い淀む。

鵺  だから?
夜鷹  赤ネズミと姫ネズミの体内に荒地百合の種を埋め込んで捕らえさせ奴らの
    行動を把握しようとしたんだ。

  沈黙。

赤ネズミ  えっと。じゃあ、夜鷹さんは初めから僕らを捕まえさせるつもりで?
夜鷹  そうだ。
赤ネズミ  僕たちは、宇宙海賊?
夜鷹  そうだ。
赤ネズミ  えっと。姫ネズミを助けには。
夜鷹  いかない。
赤ネズミ  そうなんですか。

  間。

赤ネズミ  あの、すみません。
夜鷹  なんだ。
赤ネズミ  そう言うわけにもいかないんです。
夜鷹  何がだ。
赤ネズミ  お願いします。姫ネズミを助けてください。
夜鷹  助けない。
赤ネズミ  お願いします。
夜鷹  行くなら一人でいけ。
赤ネズミ  一人で?
夜鷹  ああ、そうだ。お前だけが捕まる分には何も問題はない。もしも助け出せ
    たら。どこでも好きなところへ行けばいい。今、奴らの船はここから西に
    七五二,八〇〇km先にいる。
赤ネズミ  あの、すみません。
夜鷹  なんだ。
赤ネズミ  そう言うわけにもいかないんです。
夜鷹  何がだ。
赤ネズミ  あの。

  間。

赤ネズミ  あの。僕らは故郷の仲間たちを絶対に助けにいかなきゃ行けなくて。
夜鷹  だから。なんだ。
赤ネズミ  あの。僕一人じゃ出来ません。
夜鷹  知ったことじゃない。下がれ。

  赤ネズミ。無言で部屋を出ていく。

鵺  随分悪役らしくなったじゃない。
夜鷹  ああ。
鵺  仲間のことは大事にするんじゃないの?
夜鷹  仲間が大事だから、この選択をしたんだ。奴らに捕まるわけにはいかな
    い。
鵺  あの二人は仲間じゃないの?
夜鷹  鵺。頼む。困らせないでくれ。
鵺  そう。ごめんね。

  鵺、出ていく。
  赤ネズミが出発する準備をしている。

鵺  いくの?
赤ネズミ  はい。
鵺  一人でも?
赤ネズミ  行きます。
鵺  そっか。俺もいくよ。
赤ネズミ  え?いいんですか?
鵺  うん。君一人じゃ心配だし。
赤ネズミ  ありがとうございます。

  二人、飛行物体に乗り込む。
  場転。取調室。
  姫ネズミと刑務官が幕部さんを見ている。
  幕部さんは大昔にやっていた刑事物のテレビ番組を真剣そうに見ている。
  見終わる。

幕部  流石私のライバルだ。
刑務官  幕部警部。そろそろ初めてもらってもよろしいでしょうか。
幕部  ああ。待たせたな。(姫ネズミに)君。
姫ネズミ  はい。
幕部  お前がやったんだろう。

  間。

幕部  お前がやったんだろう。
刑務官  お言葉ですが。今回の件に関してはすでにやったかどうかの話ではない
     かと。
幕部  そうか。では、私はすでに(テレビを指して)あやつより先を行っている、
    と言うことだな。
刑務官  そうですね。
幕部  そうかそうか。では、私は何を尋問すればいいのだ?
刑務官  夜鷹と鵺の居場所。又は、宇宙海賊の本部の場所を聞き出せれば良いか
     と。
幕部  そうかそうか。(姫ネズミに)貴様。夜鷹と鵺はどこにいる。宇宙海賊の本
    部はどこだ。

  間。

幕部  刑務官。此奴、答えないぞ。
刑務官  そうですね。
幕部  貴様。なぜ答えない。

  間。

幕部  我々も舐められたものだな。
刑務官  そうですね。
幕部  刑務官。思い知らせてやりたまえ。
刑務官  わかりました。

  刑務官。姫ネズミの頭に触れる。

刑務官  宇宙警察?この人たち怖い。というか、宇宙海賊って私たちのこと?そ
     ういえば鵺さんが言ってた。ってことは私たち以外はわかってたってこ
     と?これからどうなるんだろう。赤ネズミが私の言うこと聞いてくれな
     かったからこんなことになったんだ。
姫ネズミ え?え?え?
刑務官  そもそも。赤ネズミは私のこと見下してる。あの夜だって私が助けてあ
     げたのに。きっと赤ネズミにとって私はまだ長子のうちの一人でしかな
     いんだ。ひどい。自分だって次郎の癖に。大嫌いだ。バーカバーカ。て
     いうか、心読まれてる。うわあああああああああああああああああああ
     あああ。やだやだ。読まないで。(幕部さんに)と申しております。
姫ネズミ  最悪。
幕部  なんだ?喧嘩か?いいぞぉ、衝突は自己の確立にも繋がるからな。存分に
    やるがいい。
刑務官  しかしこれでは奴らの居場所がわかりません。
幕部  それは困ったなぁ。しかし、これを止めるのは私の主義に反する。
刑務官  あー。そうなんですね。
姫ネズミ  あの。
幕部  なんだ。自己の確立には成功したのか?
姫ネズミ  あの。それはわからないんですけど。
幕部  なら話しかけるんじゃない。このスカポンタン。
姫ネズミ  ごめんなさい。

  沈黙。

姫ネズミ  あの。
幕部  なんだ。
姫ネズミ  一つだけ聞いてもいいですか?
幕部  それは自己の確立に必要なことなのか?
姫ネズミ  あ、えっと。そうです。
幕部  ならば良い。
姫ネズミ  夜鷹さんと鵺さんはどうして狙われているんですか?

  二人、爆笑し始める。

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