見出し画像

物ごとは、忘れちゃうもんだ。

このところ、物忘れがひどい。ひとの名前が出てこない。読んだ本や観た映画の内容が思い出せない。こうなると「物は、忘れる」がデフォルトである。物事はすべからく忘れるものであるから、常に、忘れないように対策しておかなければならない。

たとえば、朝晩、飲む薬。存在自体を忘れてしまわないように、机の上に出しておく。視界に入るたびに、「あ」と思う(ようにしている)。それが朝や晩だったら、飲む。

たとえば、ピアス。2年近く前に生まれて初めて穴を開けたのだけれど、今なお「朝、ピアスをつける」がなかなか習慣づかない。だからピアスをつけていないときは、アクセサリーケースの蓋をがばりと開けておく。つけたら、閉める。

化粧品もそうだ。机の上に出しておかないと、塗ることを忘れる。

そうすると、部屋の中がどうも片付かない。瓶入りの薬と、病院からもらってきた、シート状の薬。寝る前に塗るクリームがいくつか。蓋を開けっぱなしのアクセサリーケース。こんまりさんあたりが悲鳴をあげそうなものたちが、雑然と、私の生活を支えている。

化粧品といえば、もうひとつ困っていることがある。バラエティショップでプチプラコスメなんかを眺めていて、「あ、いいな」と思って衝動買いする化粧品の、色が全部似通ってしまうのだ。

この年になると好みも定まってくるので、「あ、いいな」があさっての方向へ暴走することはまずない。口紅も、アイシャドウも、近しい色合いのものばかりが増えていく。近しい色合いのものをすでに持っていることを、お店ではすっかり忘れている。買ってしまって、塗ってみてから気づく。売り場で気づけばいいのに。

こんなふうだから、自分の記憶力をはなっから信用していない。だから大事な局面ではものすごくメモ魔である。演劇の雑誌でライターをしていた頃、稽古場取材なんかをすると、目に映ったものをとにかくメモしまくった。

その、ノートの山が、最近、ベッドの下からたんまりと出てきた。20年近く住んでいる部屋の断捨離大作戦での出来事だ。やーーん、ちょっと懐かしすぎる! あとでゆっくり読もう♪ と横によけておいて、落ち着いてから、じっくり開いて、愕然とした。

読めないんである。字が小さすぎて。自分が書いた字だ。そう、10数年前の自分が書いた字が、小さすぎて、読めないんである。

ROGAN……

漢字で書くとショックがキツいので、アルファベット表記にしてみた。それでもノートの山は捨てるにしのびなく、今もベッドの下で眠っている。(2019/11/30)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?