絶望する前に思い出す果物
最近しきりに思い出すのは、今をときめく、バナナマンさんにインタビューをしたときのことだ。
調べたら、もう15年近く前のことらしい。単独ライブに向けてのインタビューで、設楽さんが、駆け出しの頃から書き溜めてきた、ネタ帳の話をしてくれた。
ちょっと何かを思いついたら、そのノートに書き留めてきた。だからライブのネタに困るたびに、ノートの山に立ち戻って、新ネタとして蘇らせてきたのだと。
「でもね、それも全部、燃えちゃったんですよね」
ちょうどその頃、設楽さんのおうちが、火事で焼けてしまったばかりだった。家族はみんな無事だけど、ネタ帳は持ち出せなかった。これからどーしましょうかねー、って設楽さんが平然と言う。私は何て言ったらいいのかわからなくて「……そういう時期だったんでは!」って言葉を絞り出したら、日村さんがたいそう喜んでくれた。
そこからの彼らのご活躍は、みんなが知ってる、あの調子である。
蛇足ながら付け加えておくと、その単独ライブのロビーで売られていたのは「設楽さんちの焼けちゃったラジカセの写真」とか「焼けちゃった本棚まわりの写真」とかをプリントしたTシャツだった記憶がある。
なにか悲しい出来事があったとき、ああ自分は大切なものを失ってしまった!って絶望してしまう前に、まずは、このことを思い出すようにしています。(2021/02/19)
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