ユーザーの想像を超えるサービスは、つくり手の想像をも超える。
こんにちは。マネーフォワードの小川です。
久しぶりのnoteです。
マネーフォワードでは、5年ほど人事を担当し、現在は社長室 Startup Studio部にて『マネーフォワード キャリア』というキャリア支援サービスの事業責任者を担っております。
事業責任者としてはまだまだ経験が少なく未熟さを感じるばかりなのですが、だからこそ気付ける(気付かせていただく)ことが多く、最近もユーザーやサービスと向き合う上で影響を受けた3つの象徴的な経験をしたので、書き記したいと思います。
約6年前、人事としての経験が少ない中でマネーフォワードに飛び込んだ時も、試行錯誤しながら仕事をしている中で、気付くことが多かったなぁとあらためて思い返します。
下記がこの記事の内容です。
事業責任者になって半年の自分に影響を与えた3つの体験
・想像を超えるユーザー体験をした話
・「User First」なサービスづくりについて金言をもらった話
・自身のサービス運営で気付きをもらった話
著名な書籍などに基づいた話ではなく、実体験の生々しい話です。興味をお持ちいただけたら、読み進めてください。
想像を超えるユーザー体験をした話
話は、2019年のクリスマスに遡ります。
当時9歳だった僕の娘は、サンタクロースに手紙を書きました。
手紙の内容はこうです。
サンタさんへ
毎年ありがとうございます。
わたしは今年、むかしだいじにしていた、クマのクーちゃんがほしいです。
じつは、わたしはクーちゃんをなくしてしまいました。なのでなくしたクーちゃんをみつけてきれいにして、わたしてくれるとうれしいです。
むりなおねがいすいません。むりだったらいいです。
我が子ながら、なんて心が綺麗な子なんだ!?何とかクーちゃんを見つけてあげたい!
「クーちゃん」とは、娘が3歳の時にそれはそれは大事にしていたクマのぬいぐるみなのですが、外出した際に失くしたきり見つからなくなってしまったものです。さらに補足をすると、実はもともと妻が大学生の時(×〇年前)に旅行先で買ったもので、再度購入することは絶望的なものでした。
でも、親(サンタ)としては、娘のこの純粋な想いにどうしても応えたいと思い、考え得るあらゆる手段を使ってクーちゃんを探しました。最終的には「探偵!ナイ〇スクープ」に依頼をしようと思ったこともありました(していない)。
ですが、どうしても見つからない。。。
藁にもすがる想いでTwitterで投稿したところ、善意で探してくださる方もいらっしゃり、Twitterの優しい世界に触れたりもしたのでした。
でも、それでも見つからない。。。
唯一の手掛かりは、メルカリで出品されていた形跡(既にSOLDOUT)を見つけただけでした。
結局その年のクリスマスには間に合わせることができず、娘には
クーちゃんを見つけたよ。
でも、拾われた他の家族のもとで幸せに暮らしていた。
だから連れてこられなかった。ごめんよ。
でもいつか、自分の意思で君のもとに戻ってくるかもしれないよ。
という手紙が、サンタから届きました。(察してください)
そして、約一年が経った今年のクリスマス。
なんと、クーちゃんを購入することができたんです。
そう、メルカリで。
実は、見つけられなかった昨年から、メルカリ内で「似た写真の商品を探す」機能を使ってクーちゃんを探すことが僕の日課となっていました。
でも、それでも見つからない。
「今年もダメか」と諦めかけていた12月4日、信じられない光景を目にします。
クーちゃんがそこにいました。しかもまだ買われていない。
メルペイ残高を使って、光の速さで即購入。
880円のクーちゃんは、他のどんな高い買い物よりも、今年一番の価値のある買い物になりました。
メルカリには、膨大な量の「クマのぬいぐるみ」が出品がされています。その中からメーカーもわからないようなマイナーなぬいぐるみを検索して発見することは困難ですし、やろうとも思えませんでした。「クーちゃんに似た商品を探す機能」があることによって、僕のこの奇跡の体験は生まれました。
そもそもメルカリがなければ、探そうという気持ちも起きなかったかもしれません。
この場を借りて、メルカリに関わる全ての方、特に「似た写真の商品を探す機能」を開発してくださった方々に心からの感謝を伝えたいです。
あまりにも尊い体験をしたため、想いが溢れた僕は、メルカリの中の人であるさきっちょさん(@sakicchoo)にこの体験のことを伝えました。
すると、さきっちょさんはすぐにメルカリ社内にシェアしてくださり、同社内で「お客さまとどう向き合うべきかという議論がされるキッカケになった」と教えてくれました。
世界で1億を超える方々にダウンロードされているようなサービスを提供している同社内でも、何の指標を優先するべきなのか、優先指標のみを追いかけていてはお客さまのWowな体験を生み出すことはできないのではないか!?という議論がなされており、一石を投じるユーザーの声となったようです。
いちユーザーの声に、そこまで耳を傾けてくれるメルカリの方々に感動を覚えると共に、僕が神機能だと思ったものが、必ずしも合理的な判断で生まれるものではないと痛感したのでした。
それどころか、僕に奇跡の体験をもたらした機能も、使っている人が少なく、削られてしまう可能性がある対象ですらあるかもしれません。
でも、実際に僕は今回の体験で感動し、メルカリのファンになり(前からファンでしたけど)、こうして体験を文章にしているし、他の誰かがこの文章を見てメルカリのファンになるかもしれません。
ユーザーの何を見て、サービスを通してどんな価値を届けることが正解なのか。自身でもサービスを提供する立場として、非常に考えさせられる体験となりました。ただ、あらためて自分は、「Wowな体験を提供する」ことは忘れたくないと強く思ったのでした。
「User First」なサービスづくりについて
金言をもらった話
当社に今年5月に入社された尊敬するメンバーからサービスづくりに対する考えを聞いて、感銘を受けました。
「User First」は、ユーザーに迎合し要望に応えることじゃない。ユーザーの想像を超えることである。これは、当社が「User Focus」というValueを設定していることからも、以前から僕自身も認識していることでした。
では、「想像を超える」にはどうすればいいのか、ということについて大きな気付きをもらいました。
「自分」で考えること。
ユーザーの声は聞き過ぎないこと。
それは、誕生日のサプライズプレゼントと同じ。大切な誰かへの誕生日のプレゼントに何を贈るかを考える時、驚きと喜びをより大きくするために、「何が欲しい?」とは本人には聞かないでしょう?という話です。
もちろんユーザーの声は重要です。
ただ、核心に迫る答えを聞くのではなく、周辺の情報を拾い集めることで、ヒントを得るということなのだと理解しました。
「目的」から考えること。
ユーザーにどんな体験をしてもらうかは手段でしかない。最終的にユーザーのどんな課題を解決したいのか、どんな価値を届けたいのか、その目的から逆算して考える。
そもそも最初の目的の設定が「ユーザーの想像を超えている」ものでないと、様々な制約によってできること/できないことの選抜がされた後のサービスが想像を超えられるわけがありませんね。
「ユーザーの価値観」になって考えること。
ユーザーの「立場」になって考えるだけではなく、「価値観」になって考える。文章にすると当然の話のように見えますが、僕には猗窩座の拳のように突き刺さりました。
ユーザーの立場に立って考えるという物理的な話だけではなく、ユーザーの気持ちになるという精神的な話になるので、難易度が高いのは当然です。ただ、この考えがあるだけで、「User First」に対する自身の捉え方が変わるスイッチの音がしました。
自身のサービス運営において
ユーザーから気付きをもらった話
僕が運営する『マネーフォワード キャリア』は、リリースしてから5ヶ月が経ちました。
リリースに際しては、様々なユーザーのことを想像し、サービスに対する反応を予想していました。でもそれでも、「想定通りだったこと」「想定していなかったこと」がありました。ここでは、「気付き」を提供してもらった後者について触れたいと思います。
このサービスの特徴の一つは、FFS理論という科学的な理論を人材紹介のスキームに組み込んでいることなんですが、あるユーザーからいただいたFBが象徴的だったので紹介させてください。
エージェントの方には、どうしても自分を良く見せようという気持ちが働き、アピールポイントしか伝えたことがなかった。
はじめて自分の苦手なことや弱みを開示することができた。
この方は、経歴も素晴らしく、転職サイトに登録をすれば、企業や紹介会社から多くのスカウトメッセージが届くような方で、「転職すること」自体においてはあまり苦労をされないはずです。
企業との面接や紹介会社との面談においても、ポジティブな意見をもらうことが多く、自分からあえて自身の価値を下げるようなネガティブな要素を言うことはしてこなかったというのです。このインサイトは、自身も転職経験があり、人材紹介会社と人事の両者の立場を経験している僕でも、想像が及ばなかったものでした。
しかし、もしその苦手なことや弱みが、不運にも転職先で表面化してしまったとしたら、それはとても不幸なマッチングとなってしまいます。科学的な理論による客観的な分析を組み合わせることにより、それを考慮して企業を提案できるということに、ユーザーから気付かされたのでした。
また、サービスが他にはない価値を提供できていることを嬉しく思うと共に、初対面の人にキャリアという人生において重要なファクターについて相談をすること、自分の苦手なこと・弱みまで開示いただくことの心理的なハードルの高さを、あらためて感じました。
さいごに
3つの体験は、まったく別物のようで実は共通してる点が多いと思っています。自身の気付きの備忘であり戒めのため、記事にしてみました。
サービスを提供されている多くの方に少しでも気付きを提供できれば、そんなに嬉しいことはありません。
僕が運営する『マネーフォワード キャリア』は、まだまだ改善の余地があるサービスです。もっと多くの方に利用いただき微力ながら支援させていただくと共に、自身の想像を超える気付きを得ることで、更なるサービス改善に繋げていきたいと思っています。
周りで、転職をお考えでなくても、キャリアについて検討されている方がいらっしゃいましたら、ぜひご紹介いただければ幸いです。
また、キャリアに関する壁打ちや、サービスに関してご意見をいただける場合は、お気軽にMeetyにもお申込みください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?