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詩のご紹介 370 まつぼっくり(小黒恵子詩)

 今日は、まつぼっくり(まつぼっくりの会 発行)に掲載されていた詩をご紹介します。
 まずは、「まつぼっくりの会」についての記載をご紹介します。

「まつぼっくりの会」について
  こどもたちのためにいい本をつくろう ― すこしばく然としていますが、そんな目的をもって、まつぼっくりの会は、一昨年(註:1967年)発足しました。
  会の主旨は、次のとおりです。
     ・こどもたちに愛されるいいうた(童話を含む)をつくる。
     ・こどもたちに夢をいだかせるいいうたをつくる。
     ・こどもたちの心に残るいいうたをつくる。
     ・たくましいこどもを育てるいいうたをつくる。

  まつぼっくりの会は、毎月一回、定期的に作品研究会を行い、年に四回『まつぼっくり』を発行します。
(註:1969年以降、年に四回は発行されておらず、『まつぼっくり15』では、機関誌「まつぼっくり」を発行しています。
となっており、下記の 定期購読・・・も記載されていない)
  『まつぼっくり』の定期購読ご希望の方は、1年分600円をまとめて
    東京都杉並区浜田山●~●~●
      ●●方 まつぼっくりの会(〒166)
  までお送りください。送料は会で負担いたします。また、会則をご希望の方は、ご遠慮なくお申し越しください。
  なお、会では、児童詩、児童画など、読者の作品投稿をお待ちしています。(住所、氏名、年齢を明記するようおねがいいたします)。

まつぼっくりの26  巻末

「まつぼっくりの会」について
  まつぼっくりは昭和四十二年に第一号を発行してから三十年になりました。仲間たちも色いろな出発をしてくれてうれしいかぎりです。当初のモットーは次の四つでしたが今も変わりません。
・こどもたちに愛されるいいうた(童話をふくむ)をつくる。
      ・こどもたちに夢をいだかせるいいうたをつくる。
      ・こどもたちの心に残るいいうたをつくる。
      ・たくましいこどもを育てるいいうたをつくる。
◎同じ志をお持ちの方はどうぞ   会費一五〇〇円/月

季刊日本童謡秋季号(第3巻第11号)P24より 

「まつぼっくり」9 1970(昭和45)年7月31日発行
 ・巻頭詩
 ・きつねの子(お話し)……下田幸子
 ・海の見える団地(お話し)……赤岡江里子
 ・カーディガン(お話し)……天野康子
 ・ナンバンギセル(お話し)……柳町輝子
 ・黒い絵本……高木あきこ
 ・動物のことば……もりただし
 ・こな雪……浅田真知
 ・サカナつり……渡辺敏子
 ・地下鉄……いまきれい 幸代
 ・ぼくのたのしみ……高橋吉子
 ・イナゴ……鈴木清子
 ・両手の中から……もりただし
 ・こどものひろば
 ・だあれ……浅田真知
 ・ゆき……高木あきこ
 ・家出(お話し)……天野康子
 ・ナンキン豆(お話し)……小黒恵子
 ・くずかごのうた(お話し)……すぎやまきんぞう
 ・ケンちゃんの魔法(お話し)……ふとうはじめ
 ・あさがお(お話し)……天野康子
 ・象さんとラッパ(お話し)……立石 巌
 ・最後の雪男(戯曲)……赤岡江里子
 ・巻末詩……こども

                       小黒恵子 詩
ナンキン豆(まめ)

 おばあちゃんのおみやげの中で、ミカちゃんがいちばんうれしかったのは、ダルマの形(かたち)のからにはいったナンキン豆(まめ)でした。
 いなかの土のにおいのするおみやげがミカちゃんは大好(だいす)きなんです。手のひらにのせてころがすと、中でコロコロと小さな音がしました。
「ミカちゃん。その地(じ)豆(まめ)は生(なま)なんだよ。お庭(にわ)にまいてごらん。たった一つの豆(まめ)が、三十も四十ものダルマさんにふえるんだよ」
「わあうれしい。ほんと? おばあちゃん」
 ミカちゃんは、お庭(にわ)にとんでってシャベルで小さな穴(あな)をほりました。コロコロと、またかわいい音がしたので、もう一ど手のひらにのせてころがしてみると、<ミカちゃん>て呼(よ)んでる声が聞こえました。
<ミカちゃん。どうもありがとう。土の中にうえてもらうのとってもうれしいんです>
「ナンキン豆(まめ)って、とってもかわいい名前(なまえ)ね」
<むかしね。南京(なんきん)て言(い)う所(ところ)から、舟(ふね)に乗(の)って日本に来たんです。だからナンキン豆(まめ)って言(い)うらしいです>
  「おばあちゃんは、地(じ)豆(まめ)って言(い)ってたわ。なぜなの?」
  <そうなんです。土の中が好(す)きだからです。土の中は暗(くら)いけれど、冷(つめ)たくて気持ちがいいし、モグラくんもミミズくんもなかよしだからたのしいんです。だからぼくは、地(じ)豆(まめ)って言(い)われるんです>
「お花は咲(さ)くの? どんなお花なの?」
<プリン色のきれいな花です。 そしてチョウチョとよくにてるんです。 咲(さ)いたらミカちゃんにあげましょう>
  「ありがとう。 早くお花みたいわ」
  <ぼくの花も、ほかの花と同じように、ちゃんと上に咲(さ)くけど、実(み)は根(ね)っこの方につくんです。だから落花生(らっかせい)と言われるんです>
 「まあ。めずらしいのね。そしていろんな名前(なまえ)をもってていいわネ。すごくえらいみたい。あたしなんて、ミー坊(ぼう)なんてまるでネコみたいなあだ名だけよ」
 <ぼくもっと名前(なまえ)もってるんですよ。知ってるかな?>
 「そうそう。 ピーナッツだってナンキン豆(まめ)さんの名前(なまえ)だっとわネ。 じゃ。 ナンキン豆(まめ)さん。 元気でね。 早くかわいいお花を咲(さ)かせてね」
ミカちゃんは、やわらかい土を、指(ゆび)ですこしずつかけてあげました。いつのまにか、プリン色のチョウチョが二ひき、お庭(にわ)でおにゴッゴをしていました。
 ― ナンキン豆(まめ)さんのお花、あのチョウチョのようにかわいらしいのねきっと ―
ミカちゃんは、うっとりと空をみていました。

まつぼっくり 8(1970.2.25発行)

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 次回も、「まつぼっくり」(まつぼっくりの会 発行)から、小黒恵子作品をご紹介します。(S)

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