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超個人的、今日のおすすめの本『國崎出雲の事情』

 殆ど表紙を見て買った本だったが、思わず大好きになった漫画、『國崎出雲の事情』を今日は紹介していく。

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 この作品は歌舞伎をテーマにした、主人公國崎出雲とその周囲の人物たちの心と演技の技術の成長を描いた作品である。全19巻なのでとても集めやすい。(主観)

 とりあえずこの作品は歌舞伎を何も知らなくても楽しめる。私自身がそうだった。そして、全ての話が出雲が敵(その時々変わる。基本、皆出雲大好き)と歌舞伎をすることになり、敵の持っている事情や悩みを歌舞伎で吹き飛ばし、一つの解決を得るというパターンになっている。故に少しワンパターンに感じて退屈に感じてしまうかもしれない。しかし私はそこにこの作品の魅力を見た。

 それについて話す前に、主人公と主要人物について説明しようと思う。

 主人公は上に書いた通り國崎出雲。歌舞伎の名家である國崎屋の跡取り息子だが、とあることが原因で歌舞伎を嫌いになる。出雲は素顔の状態で、女性に見間違えられるほどの美貌を有している。故に彼は女形、つまり女性役を行うのだ。歌舞伎から八年離れていたため最初は演技は拙い所はあるものの、元々天才女形と呼ばれていたという事もあり、一度コツをつかむとアレンジを題目に取り入れたり、歌舞伎の伝統を守りつつ新しい風を起こすと言った技術を必要とする事を行い数々の舞台を成功させる。終盤の出雲の成長もこの漫画の面白い所だ。

 次は栂敷紗英を紹介する。彼は栂敷屋の跡取り息子で、出雲が復帰後初共演をした相手。登場時は自分を歌舞伎界のプリンスと称し、高慢な性格であった。しかし、出雲と共演したことで、そんな性格に変化が訪れる。後半の巻になるが紗英がもの凄くかっこいいシーンがあるので是非読んで欲しい。本当に序盤と後半で一番印象の変わる人物だ。

 三番目は源玄衛だ。彼は二番目に出雲と共演した。彼は出雲と共演するまで、子役しかやってきておらず、彼の親もその路線で玄衛を売り出そうとしており、歌舞伎を止めさせ芸能界にデビューさせようとしていた。当初は両親の言うとおりにする事に疑問を感じていなかったが、彼もまた出雲と出会い気持ちに変化が訪れる。子役だけでなく立ち役(歌舞伎の男性役の事)も経験する中で、自分もいつまでも子供ではなく大人になるのだと決意し、さらに出雲ともっと歌舞伎をしたいと思うようになり両親を説得。晴れて歌舞伎の世界に残る事に。身長が小さくかわいい印象を受ける人物だが、一貫して腹黒い性格をしており、印象はある意味変わらない。

 四番目は菅原松樹。兄の梅樹と共に出雲と共演した。兄弟間の仲はとてつもなく悪く、一緒の舞台に出るのも顔を合わせるのも嫌なほどだった。しかし、この二人の関係も出雲と関わったことで好転した。この共演以降は出雲の困難に堅実な方法で協力した。彼は落ち着いたところが好きなクールな性格だが、よく出雲のバイトしているメイド喫茶へ訪れる。

 五番目は菅原梅樹。先に書いた松樹の兄で、名門菅原屋の長男で跡取り息子。しかし、松樹が跡取りになりたがっていたことを知っていた為、わざと不良になり、自らの評判を下げていた。オラオラ系のイケメンで、不良時代の時間が長かったからか、喧嘩っ早い所がある。出雲との共演数は一番多い。

 最後に皇加賀斗を紹介する。彼は出雲が國崎家から離れた八年前に入れ違いで國崎屋へ養子に入った青年。出雲と同じ女形で、その腕は梨園の直系の生まれでないために主役を張れることが少ないが、天才的な演技力を誇る。女形に誇りを持っており、その感覚を身につけるため、そして女性の格好をするのが好きなため、普段から女性の格好をしている。とてもやさしい性格をしているが、歌舞伎に対してはかなりストイックで負けず嫌い。出雲に何時間も通しで指導したり、様々な事情から、出雲と同じ期間に別の演目に出ることになった時その事を秘密にして、出雲に挑戦するなどした。

 さて、いよいよ上に書いたワンパターンがなぜ魅力なのかを話そうと思う。これは一見マイナスなポイントになりそうな事だが、これはパターンの中に一個一個別の歌舞伎の演目をしており、ストーリー進行にメリハリをつけてくれるのだ。それこそパターンが一つの演目のように感じられるのだ。

 もう一つこの作品の魅力を挙げるとするならば、とても丁寧に歌舞伎というものを描いているというところである。歌舞伎もいわゆる歌舞伎座などで行われる伝統的な歌舞伎だけでなく、斬歌舞伎と呼ばれるものや、復活狂言なども描いており、それで私は歌舞伎にハマった。

 この漫画は、正直ここに書ききれないくらい面白い漫画だ。故に、最後にこの漫画で私が特に好きな台詞を書いて締めようと思う。

「どんなことがあったって時には誰かと乗り越えていけたら、男も女も関係なく、何より自分らしい生き方ができるんだ」

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