己の力のみを頼ることなかれ
デビュー作である『極刑』(2020年刊)は、もともと双葉社のweb文芸マガジン「カラフル」において、「憐れみの詩」のタイトルで連載されたものです。当時からお読みなっていた方はわかると思いますが、単行本のプロローグ部分は、連載時にはありませんでした。あれは単行本化にあたって加筆したものです。
ちなみに連載開始時点では、単行本の中盤にあたるところまでしかプロットが固まっていませんでした。書きながら登場人物の動きを追い、あのような展開になったのです。
かように海のものとも山のものともわからない作品が、最終的にひとつの作品としてまとまったのは、双葉社のYさんのご尽力があってこそです。執筆前からアドバイスや励ましをいただき、そのおかげで書き続けられたのですから。それは現在連載中の「妻が逮捕された日」についても同様です。
本に限らず、何かがかたちになるまでには、多くの方の力を頼らねばなりません。私が単行本を上梓し、作家としてデビューできたのは、編集のYさんをはじめ、双葉社の皆様がいてこそです。本が店頭に並ぶまでも考えれば、取次や流通、書店員の方々の存在を抜きには語れません。
逆を言えば、自分ひとりでは何もできないということです。
また、本それ自体に価値はありません。誰かが読み、そこに何かが生まれることで、初めて本は意味を持つのです。
多くの支えがあって、作家・小倉日向は存在できる。そのことを忘れずに、今後も書き続けていきます。