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三菱一号館美術館「ヴァロットン展」の感想

フェリックス・ヴァロットン(1865-1925)はスイス出身の画家で、多くの木版画作品を残しています

現在三菱一号館美術館で開催されている展覧会は、そんなヴァロットンの木版画が「これでもか!」と展示されたものになっていますが、少なくても日本ではヴァロットンの知名度が高くないと思われるので(正直、私も今回の展覧会に行くまで知りませんでした)、「うーん、よく知らない画家の展覧会だからなぁ…」なんて出かけるのをためらう方もいるかもしれません。

そんな方に向けて、展覧会に行ってきた率直な感想を残しておきます。

まず第一声でお伝えしたいことはこちら▼

マンガっぽいし、分かりやすい!

例えば、普段美術館に足を運ばない人が「ポロックの抽象画」や「ジャコメッティの彫刻」などが並ぶ展覧会に訪れても
「うーん、なんだかすごいような気がするけど、よくわからない…」
という感想を抱き、十分に展示を楽しめないまま帰ってしまうのではないかと予想されます。

一方ヴァロットンの木版画はというと、まず白と黒だけで対象物が分かりやすく描かれています。(ピカソの絵などを見たときに感じるような「これ何?」という疑問は一切湧きません!)
そして、人物や動物はかわいらしくデフォルメされ、雨や風、光なども漫画のドラえもんの絵のように単純な線で表現されています
「何これマンガみたい!」というのが私の第一印象です。

吹きつける風を線画で表現

かつ、多くの木版画には意味深なタイトルがつけられており、「これはどういうことなんだろう?」と考えずにはいられない…と言いますか、「鑑賞するためのヒント」が明示されているので、迷わずに鑑賞することができる、というように感じました。
西洋絵画鑑賞に必要とされがちな西洋絵画史の知識なんか無くたって、存分にヴァロットンの作品は楽しめるんです!

「嘘」というタイトルの作品

というわけで、誰が見ても「うん、これはおもしろいね」と素直にいえる展覧会ではないかと思います。

ただし、扱っているテーマは若干重め

前述のとおり、絵を楽しんで見れることは間違いないのですが、如何せん、嘘、裏切り、死など、不穏な雰囲気の漂う作品が多数並びます
しかもどれもモノクロの色のない世界で、モネやルノワールのような明るさを求めることはできないので、その点ご留意ください。

とはいえ、マンガのようなデフォルメがされていることもあり、フランシスコ・デ・ゴヤの「黒い絵」や、オディロン・ルドンが描いた一つ目の怪物の絵などが放つような禍々しさはまったく感じられないので、ご安心を!

なお展示室の中には、エリック・サティが作曲した「グノシエンヌ」のような不安さや憂鬱さを醸し出す音楽(実際の曲名は違うかもしれませんが雰囲気はこんな感じ)が流れている部屋がありましたが、それがとても似合っていました。
同曲をご存知ない方は、一度検索して聞いてみると絵の雰囲気が想像できると思います。

それからもう一点気になったことを▼

音声ガイドはなくてもいいかな…?

前回のシャネル展では、アプリをダウンロードすれば無料で音声ガイドが聞けましたが、今回はアプリ内課金が必要です。しかも800円です。
これまでの相場に比べかなり高いですね。(去年の展覧会では600円程度だったはず)

もちろん、感染症対策の影響などによる収入減や費用増を賄うためには致し方ないと思いますが、
・アプリをダウンロードした上で課金する
・これまでに比べて高い
・イヤフォンを持っていかないといけない
…というハードルがあると、手が出しにくい人も結構多いのではないでしょうか。

結局私はガイドなしで鑑賞しましたが、最初に書いたとおり、ヴァロットンの作品は分かりやすいものが多かったので(私が気がつかなかっただけで、作品に表れていない作者の意図なども本当はあったのかもしれませんが)、十分に満喫できました。

最後におまけ情報を。

今ならイルミネーションも楽しめる

三菱一号館美術館がある丸の内は、毎年この時期「シャンパンゴールド」のイルミネーションで彩られます
「洗練された都会の街」という丸の内のイメージにぴったりで、地方出身者の私は何度来ても「わあ、東京らしくて素敵!」と思います。

このイルミネーションは2月半ばまで灯されているので、午後からゆっくりヴァロットン展を鑑賞→暗くなってからきらきら光る街並みを楽しむ、という流れをおすすめします。
(ただ、三菱一号館美術館内のベンチは少なく、またイルミネーション時期の丸の内のカフェはどこも混み合ってなかなか座れないかもしれないので、体力が万全の状態で出向いた方がよいかもしれません)

暗くなるとこんな感じ

以上、みなさんの参考になりますように。

三菱一号館美術館内の窓
ちらりと見える前庭の風景も絵になります


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