マンガワンの埋もれてしまった名作を紹介 『はなまる魔法教室』『白星のギャロップ』
マンガワンというマンガアプリがあります。
週刊少年サンデーなどを刊行している小学館が運営しています。「灼熱カバディ」や「モブサイコ」など、ヒット作を多数生み出しています。PCからは裏サンデーというサイトで読むことができます。厳密には細かい違いがあるようですが、多分ほぼ同じです。
長期連載を続ける人気作品の裏で、クオリティは高いものの様々な事情で連載を終えてしまった漫画があります。そのような漫画にはなぜか公式サイトの連載終了作品にも掲載されていないものが少なくありません。(出版側の作品に対する誠意を疑ってしまいます。)
そんな埋もれてしまった名作を紹介したいと思います。
『はなまる魔法教室』 井上知之
https://csbs.shogakukan.co.jp/book?book_group_id=12391全3巻(第3巻は自費出版)
突然小学校の担任となった魔女の先生が子供たちに魔法を使えるようにしていく話です。その中で、子供たちに起こる変化を描いています。
素晴らしいなと思ったのは、2番目に魔法を使えるようになる女の子にまつわるエピソード。彼女はしっかりもので周りに気配りができる子ですが、幼馴染の男の子には冷たく当たってしまいます。ところがある魔法と出来事がきっかけで、彼女は本当の気持ちを知ります。
特に、この女の子の場合は
・自分を愛すること
・他人を愛すること
というような大人でもできているかどうかと言われると首を傾げてしまうようなことを小学生なりの感性で学んでいきます。そのロジックが優しいタッチで描かれることで、良質な作品に仕上がっているのです。
この漫画で特に優れているのは「魔法が使えることは特別ではない。」というメッセージです。魔法が使えるようになったその先で、もっと大切な何かに子供達が気づきます。
あなたや私にとっての「魔法」はどこかに多分あるんじゃないか。大人にもそういう気づきを与えてくれる漫画です。
マンガワンには、3巻分までの話数が掲載されたものの、実際に小学館から出版されたのは2巻分まででした。
第3巻は作者によって自費出版されました。その際に、有志によってはなまる魔法教室の続編を読むためのプロジェクトが立ち上げられるなど、とても愛されていた作品だということがわかります。
紙媒体の自費出版は完売してしまいましたが、現在は電子版をコミックウォーカーで購入できるようです。
また、井上知之さんは、現在新作漫画を発表されているようです。合わせてチェックしてみてください。
『白星のギャロップ』 西連助
https://csbs.shogakukan.co.jp/book?book_group_id=12603全3巻
母と自分を捨てて離れていった騎手の父を超える野心を抱いた主人公が競馬学校に入学する話です。いわゆる父殺しの物語と言えるでしょう。
競走馬の世界では、血統がとても重要で素晴らしい成績を残した馬が、種馬として次の世代へ多くの馬を生産していきます。(あまり詳しくないですがここを掘っていくと相当深そうです。)
ジョッキーの世界でも兄弟や親子で同じ道に進むことが多いようです。そんな血を巡る業界を題材にした漫画であるが故に、主人公を含めた登場人物がしがらみに対してもがく様が説得力を持って描かれています。
競馬学校という特殊な世界に身を置く同期はライバルであり、志を共にする戦友です。彼らの関係性にも常に独特の緊張感が漂っています。
そんな環境に置かれたからこそ育んでいく仲間意識。それが刹那のものであるとわかっているが故に展開される、あるシーンが私はとても好きです。
不器用な主人公が出会いを通して少しずつ進んでいく段階で唐突に最終回を迎えています。丁寧に主人公の成長を描いていく意志が感じられたことから 、長く連載してこそ真価が見られる漫画だったんじゃないかなと、とても残念な気持ちになります。(最終巻の最後に、新編がマンガワンでリスタートされる旨の告知があるのですが、何らかの理由で立ち消えになったようです。)
この2作を振り返って思うこと
内部の事情はいろいろあるでしょうし、売上が振るわない作品が連載終了になってしまうことは致し方ないかもしれません。
しかし、アプリで掲載していた話を最後まで単行本化せずに最終巻が作者さんの自費出版になってしまったり、続編が発表さていながらその後何のお知らせもなく立ち消えになったこの2作を思うともうちょっと他にやりようはあったのではないかなと思ってしまいます。せめて作者さんファーストであって欲しいなという一読者の切なる願いです。
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