宮沢賢治入門にお勧め作品
賢治作品の分かりにくさの理由
宮沢賢治の作品に関して、「分かりにくい」という声をよく聞きます。
確かに(笑)
賢治作品の難しさには理由があり、賢治自身が「簡単にテーマを読み取られるような作品で満足していてはだめだ」と常に自分を戒めていたというのが、一番の理由だと思います。
また、賢治が熱心に信仰していた法華経では「真に大切な事は言葉では表せない」と語っているそうです。
賢治は法華経の教えを文学に込めようとしました。ですから言葉では表せないものがテーマである以上、分かりにくいのも仕方ないかと思います。
賢治入門にお勧めの分かりやすい賢治作品
でも、賢治童話の初期作品には比較的分かりやすいものもあります。
少しご紹介しましょう。
ふたごの星・・・「お空で夜中星巡りの歌の笛を吹くのが役割」というふたごの星のお話です。星といっても人格化され、子供の姿で描かれています。この2人が心ならずもトラブルに巻き込まれながらも、素直さを失わずに元の場所に帰るという物語です。賢治特有の言葉遣いの美しさ、発想の豊かさも読みどころの1つでしょう。何とも可愛らしいファンタジーです。
ツぇねずみ・・・賢治作品は、清らかなだけではありません。人間の欲得や狡さ、醜さをテーマにした作品も多々あります。これはその最たるものでしょう。短い作品ですので、解説はしません、ぜひ読んでみてください。
猫の事務所・・・ツェネズミで描かれたエゴをさらに発展させた物語です。猫が運営するエリート事務所をモチーフに、人間社会の『差別の構造』を鋭く切り取っています。
よだかの星・・・一般的な童話と比べて、分かりやすいかというと難しいのですが。それでも、テーマは比較的つかみやすいかと思います。醜さゆえにその存在を極限にまで否定されるよだかという鳥。その悲しみが深いほど、人生への洞察を深めてゆく点が読みどころの1つだと思います。
雁の童子・・・入れようか迷ったのですが。短いお話なので、読みやすいだろうと思います。テーマも比較的つかみやすいでしょう。少年の成長物語(賢治作品によく出てくるテーマの一つです)を潜ませながらも、異国の幻想譚のような雰囲気があります。アラビアン・ナイトに入っていてもおかしくないような、エキゾチックな物語です。
賢治作品は分かりにくいために誤解を受けたり、分かりやすく読もうとされることもあるのですが。
分からないところは分からないままに、分かるところだけを読んで行くというのも読み方の一つではないでしょうか。
例えばその物語に一行でも、一言でも、心に残る言葉があれば、それは大変貴重な読書体験となるかと思います。そして、そういった読書体験を多く期待できるのが賢治作品の魅力の一つでもあるかと思います。
こう偉そうに語る私だって、実は賢治作品の全容を死ぬまでに理解できる自信はないですからね(笑)
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