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【コラム】令和のモトコンポ? 話題の電動モビリティ「タタメルバイク」ってなんだ!? <前編>

オートバイと自転車用のヘルメットの製造メーカー「株式会社オージーケーカブト(以下、Kabuto)」は、さまざまな人たちを「応援」しています。わたしたちはまた「新機軸」を生み出す「パイオニア」たちにも注目。今回のコラムは、近年大きなウェーブを起こしている「電動モビリティ」の中で、SNSを中心に大きな話題となっているバイクと、その開発者にインタビューしてみました。全3回でお送りします。

🏍マシンの名前は\タタメルバイク/

“どこでも、どこへでも。たたんでハコべる” 原付電動スクーター「タタメルバイク」

マシンの名前は「タタメルバイク」。
コンセントによる充電で走行可能な電動モビリティの中でも、折り畳み可能な「収納性」が、SNSを中心に大きな話題となっています。
プロダクトデザイナーの生駒崇光(イコマ タカミツ)さんが開発者で、販売展開するために設立したスタートアップ企業「ICOMA」のCEOを務めています。

定格出力が600Wで、区分としては「原動機付自転車(原付)」。電動スクーターとも称せるのがタタメルバイクです。「どこでも、どこへでも。たたんでハコべる」が謳い文句かつコンセプトとなっています。

全高1000mm(全長は1230mm)全幅650mmと、全体的にコンパクトなフォルムが特徴ですが、さらに「タタメル」のが本機の真骨頂のひとつ。前後輪とハンドルが、中心部に向かって“収縮”されることにより、全高(全長)690mm全幅260mmにまでに変形。

これにより、「バイクは駐輪場へ」という固定概念が崩壊。例えば家の玄関口で下駄箱の隣に置いておくなんてことが可能。都市部のユーザーだと、駐車費用の節約にも繋がる可能性があります。

ガソリンやオイルを使わないから室内にも持ち込める

「電動バイク」なので電力が動力源ですが、ガソリンの代わりに必要となるのが「充電」。そして、ここでも効力を発揮するのが「サイズ」。

デスクの下にも収まるほどの大きさのため、まるで家電のようにコンセントでの充電を行えます。なお、充電時間にして3時間を要し、それにより約30キロの走行が可能。

3時間充電→30km走行が可能

そんなタタメルバイクは、デザイン性にも優れた面を見せています。中央ボディと後輪カバーに施されるカラーバリエーションは千差万別。純粋な見た目に加えてさらなる変化を提供し、その様相は「デザイン家電」としての一面も。

まさに「デザイン家電」

色とりどりのボディですが、この部分にはさらにある「機能」が備わっています。

📺新たな宣伝ツールに?

それは専用の液晶パネルを取り付けることで、サイネージ広告の表示や動画配信が行えるということ。「広告宣伝カー」としての可能性を秘めており、例えばフードデリバリー企業に新しい切り口を提供できるかもしれません。

例えばオートバイレースの現場でレーシングサービススタッフがヘルメットをピットに運ぶこともありますので、パドックの宣伝ツールとして活躍してくれるかも知れません。

パネルにF-17のサイネージ広告を表示させパドックで使いたいゾ!

従来のバイクの価値観が大きく変える可能性を秘めたタタメルバイクは、SNSを起点として話題を呼び、海外でも高い注目を集めています。

直近では、2023年1月にアメリカ・ラスベガスで開催された世界最大の家電見本市「CES」に出展。

会場では、現在のVR(仮想現実)の火付け役となった「オキュラスリフト」の創設者でもパルマ―・ラッキー氏をはじめとした各界著名人に、西村康稔経済産業大臣も現地視察の際に立ち寄って談笑、さらには海外向けの日本国公式Twitterでも紹介されるという快挙を起こしています。

もはやバイクどころか、モビリティとしても最注目の存在となっているタタメルバイクですが、実はKabutoとは少なからずの縁があります。それは開発者である生駒さんも同様。

「ICOMA」設立からわずか2年弱でこれほどまでの脚光を浴びるようになった彼は一体どのような人物なのか? 次回からは、CES出展直前の2022年末に敢行したインタビューについてご紹介いたします。

📝~余談~ 「タタメルバイク」は令和の「モトコンポ」なのか?

スーツケースサイズに「畳める」コンパクトさが「タタメルバイク」最大の特徴ですが、その風貌から、かつてHONDAが開発した「モトコンポ」を彷彿させるという声が多く寄せられます。

実際、生駒さんもそれは「良くも悪くも」耳にする機会が多いそう。特に気にしているわけでもないのですが、そんな中でちょっとしたエピソードを教えてくれました。

「『モトコンポ』を知っている人ほど、『タタメルバイクとは違う』って反応になるんですよ」

モトコンポは、1981年、当時ホンダから発売された1231ccコンパクトカー「シティ」とともに登場した原付バイク。同時発表された際に、49cc、2.5馬力の2サイクルエンジン搭載、シティのトランクに搭載できるバイクとして、折りたたみ式ハンドルやステップなどのギミックを採用した、エポックメイキングな伝説のマシンなのです。

いざ並べてみると、ライトの位置など、細かいフォルムの違いが存在する両機。そもそもの話、動力源も全く異なります。

筆者も以前、タタメルバイクを試走したことがあるのですが、いきなりフルパワーでスピードが出ることにちょっとびっくり。原付と同性能なはずなのに、速度の上がり方がまるで違うのです。あらためて面白いマシンだという確信は得たものの、操縦にはそれなりの練度が必要だと感じました。

一方で、日本において過去含め、話題にのぼる小型バイクは、モトコンポに勝るものはない、と思っています。(個人的な感想。漫画「逮捕しちゃうぞ」などで印象的に取り上げられて、“尾びれ”が付いている側面もあるでしょう😅)

いわばカルト的人気があった中で、SNS上に爆誕したのがタタメルバイク。読んで字のごとくの特徴に、これまでの既存メーカーがなかなか手を加えていなかった部分に“殴り込み”をかけるフォルムが、バイク業界に新風を巻き起こしています。

見方を変えると、「アンチテーゼ」ともいえそうですが、それは決してネガティブな意味合いではなく、まるでガンプラのような容易なカスタマイズが可能で、これまでのモビリティラインナップに「選択肢」を増やしてくれた、と言えます。

なにもしない“素乗り”でもモーマンタイ。カジュアルさを押し出した敷居の低さがあり、それは純然な移動手段として想定したユーザーへの新たな提案、バイクへの玄関口になり得る存在です。

そこにはコアなライダーと市場でパイを食い合う「カニバリズム」が発生せず、共存共栄することで業界が活性化する大きなチャンスでもあります。そして、ただ動力源を差し替えるだけだった「電動バイク」界隈に刺激を与えた、と言えるのではないでしょうか。既存メーカーも社内スタートアップを立ち上げプロジェクトを発足させるなど、既にいろんな動きが見えています。

ちなみにモトコンポは、2022年で発売40周年を迎え、同年9月にツインリンクもてぎで記念イベントが開催されました。実は熱烈なユーザーのひとりである生駒さんも参加し、「タタメルバイク」も持ち込んで“夢の競演”を実現させています。

そして、上述の話は、その際参加者に発せられたものでした。なお、参加者は総じて好意的な反応だったそうです。

つまるところ、開発担当者たちが40年前の時点で見せた溢れんばかりの先見の明に、改めて敬服したいエピソードともいえるかもしれません…。

次回、【中編】へつづく(取材/執筆=向山純平)

e.com/notes/n9a5d9e4a0ca9/

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