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アメリカに琵琶を持って行った備忘録①楽器証明書編(2023年5月)

はじめに

去る5月26日~28日、アメリカ・ノースカロライナ州ローリーで行われましたアニメイベント「アニメいずめんと」に出演するため、琵琶を携行してアメリカへ行って、そして帰ってきました。
近年、和楽器を携行しての渡航中のトラブルについて耳にすることが多かったため、主催者様の全面協力のもと、できる限りの対策を取りました。
この手の情報は日々刻々と変わっていくので、いつまで参考になるかは分かりませんが、「2023年5月のアメリカ渡航はこんな感じだったよ」という記録として、残しておきたいと思います。

「アニメいずめんと」はこんなイベント

「アニメいずめんと」は、アメリカはノースカロライナ州、ローリーという都市で毎年開催される、日本のアニメ・マンガを中心にしたイベント。3日間でのべ20000人もの入場者を誇る一大イベントで、普段は静かな文教都市がアニメファンでいっぱいになります。

コロナ禍もあって、日本人のゲストが本格的に参加するのは4年振りとのこと。今回は、日本文化を紹介するコーナーで琵琶を演奏するため、縁あって出演することになりました。

琵琶と一緒に渡航するための問題点

琵琶を海外に持って行くに当たり、懸念材料が大きく2点ありました。

① 琵琶には素材として象牙が使われている
② 薩摩琵琶はでかいので機内持ち込みができない

これに加えて、今回は次の問題も。

③ アメリカへの演奏目的での渡航がけっこう厳しい

③については後程お話するとして、まず、①の問題を解決するべく、私は日本で、主催者側はアメリカで、それぞれ動き出しました。

楽器証明書を取得!

和楽器には、象牙やべっ甲を使用していることが多いです。
そして、象牙やべっ甲は、いわゆる「ワシントン条約」によって、国際的な取引が禁止されています。
そのため、国外に和楽器を持って行く場合、税関で持ち込みを拒否されたり、最悪の場合は没収されてしまう可能性があるわけです。
これらの問題に対処するため、経済産業省は、2021年7月より、

「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約第7条第3項及び同条約決議16.8に基づく楽器証明書」

の申請手続きを開始しました。

うん。難しそう。

しかし、何としてもここをクリアせねば、アメリカに琵琶を持って行くことはできません。
ページをそっ閉じしたくなる気持ちを何とか抑え、私は手続き方法を何とか読み進め、必要書類を何とか準備したのでした。

用意した書類
1 楽器証明(申請)書
2 楽器証明申請説明書
3 演奏等の計画を記した書類
4 製造証明書兼見解書(製造業者(第三者))
5 誓約書

1と2については、上に添付した経済産業省のHPから書式をダウンロードできます。
記入例に従って入力し、必要なところには楽器の画像を添付します。
ちなみに、今回持って行った琵琶はこちらのお方。

平成12年生まれ。ということはZ世代。

所々、白く見える部分に象牙が使われています。
(※中央の半月は金属製です)
画像の象牙部分をペイントソフトで〇囲みし、「こことこことここに使われてます!!」と明示します。
英語で記入しなければならない箇所もたくさんありますが、記入例とgoogle翻訳さんに助けられながら、何とかクリアしました。

3は、「アニメいずめんと」主催者側に、イベントのチラシを送ってもらい、それを提出しました。

4の製造証明書。
この琵琶は製造元が分かっていましたので、製造元に連絡を取り、経済産業省のHPの見本に則って書類を発行して頂きました。
「うちで使っている象牙は、ワシントン条約締結以前に輸入されたもので、それ以外は使っていません」という証明が主な内容です。
製造元が分からない場合は、所属している和楽器の団体や、骨董を扱う専門家の方に、上記と同じく「この象牙は、ワシントン条約発行後に輸入されたものではありませんよ」という証明書を発行してもらう必要があるようです。

5の誓約書も、経済産業省のHPより書式がダウンロードできます。

以上の書類を、経済産業省の所定の部署へ郵送します。
そしてドキドキして待ちます。

私の場合は、数日後に電話がかかってきて「1か所書類の不備があるので訂正して下さい」とのことで、すみませんすみませんと電話口で頭を下げ、訂正した書類を提出。
さらに数日後、今度はOKとの連絡を頂き、およそ一週間後、楽器証明書の原本と、楽器に携行するプラスチックのタグが自宅に届きました。

楽器証明書には、渡航する際に日本側、渡航先側それぞれで記入してもらう欄があり、空港の税関で手続きをする必要があります。
こちらに関しては、後日「運用編」でまとめたいと思います。

余談:レクチャーライブ(通訳付き)で使用したパワポ素材。いらすとやさんは偉大。

長くなりましたので一旦ここまで。②へ続く…!!

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