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横浜DeNAベイスターズのPLAYBACK9と新たなファンアイテムとしての動画NFT

はじめに

一昨日、DeNAからPLAYBACK9というベイスターズのNFTアプリケーションがローンチされました。ユーザーは、短い動画の切り抜きをトレーディングカードとして自身のWalletの中で管理することや、友達同士でカードを交換することができます。
今回はショート動画というコンテンツのNFTがこの先どのような可能性を有しているのかについて過去のインターネットミームを事例としながら、書いてみたいと思います。(あくまで私個人の所感であり、今後の機能開発などとは一切関係がありませんのでご注意ください)


さて、このような動画NFTは、カナダのDapper Labs社がNBA選手のプレー中の動画をトレーディングカードにした「NBA Top Shot」をきっかけに、注目を集め、TickTockが仕掛ける"TikTok Moments"をはじめ、類似の事例が続々と登場しています。


ショート動画はこれまでも、TwitterやFacebookなどSNSのタイムラインなどを通じて、ユーザーが短時間で認識し広がりやすいなどのメリットから、様々な人気コンテンツが作られてきました。最近では、Youtubeなどにおける「切り抜き動画」も大変な人気となっています。これまでYoutubeにおいては、他人のコンテンツを勝手に切り抜き、配信されることは著作権の侵害とも捉えられていましたが、徐々に切り抜き動画は、それなりのUGCスキルが必要であることに加え、切り抜き動画を入り口(広告塔)として、公式のチャンネルへの集客効果も見込まれることから、オフィシャルからの許諾と金銭上の契約を結んだ上で、一つのコンテンツとしての地位も確立されてきました。#APEXClipなどのハッシュタグが有名ですが、人気ゲームをショート動画で配信するチャンネルなども非常に人気があります。また、ゲームの実況動画をNFT化するプラットフォームなども現れ、こちらも非常に話題になっています。


ショート動画のNFTはこれらの事例から、さらにはコンテンツをユーザー自身のWalletに管理し、収集できることや、二次流通ができることによって、その楽しみの幅が広がると言われており非常に大きな可能性があるのではないかと思います。

ショート動画の元祖はインターネットミームか?

ショート動画やNFT自体の起源をもっと遡ると、それはインターネットミームであると言われています。インターネットミームとは何かと調べると下記のような説明がされています。

ミーム(meme)とはイギリスの進化生物学者リチャード・ドーキンスが1970年代に提唱した、生物の遺伝子のように自身のコピーを残す性質を持つ情報全般を指す科学用語であり、遺伝子を意味する「gene」と模倣を意味するギリシャ語、「mimeme」を語源に持ちます。

例えば、Slackでおそらく見たことがあると思うのですが、よく使われるPartyParrotもインターネットミームの一つで、アニメーションGIFなどで動く様子は、非常に可愛らしいものとなっています。

他にも、GrumpyCatは非常によく使われるキャラクターでこちらも、動くアニメーションGIFやムービーなどに使われています。

エンジニアの方であれば、コードレビューなどでLGTMなどアニメーションGIFなどのミームコンテンツを用いてGithubで表現したことがあるかもしれません。または日本人にとってはミームと言うよりは、「ボケて」などの方がもう少し身近に感じるでしょうか。いずれにしろ、オリジナルのコンテンツに対して、何らかしらのパロディ要素を混ぜ込むことによって、生み出される二次コンテンツのことをミームと表現します。(もちろん動画以外の静止画も数多くあるわけですが、動画の要素は、これらのミームに対してより多くの表現を可能としました)
インターネットミームから生まれたNFTは非常にたくさんあり、NyanCatや、Charlie bitmyfingerなどもそういった事例の一つです。2007年に投稿されたチャーリー・デイビーズ・カーという名前の英国の幼児が兄のハリーの指を噛んでいると言う56秒の動画は、元々のYoutubeからは削除され、NFTと言う形に生まれかわり、760,999ドルと言う高額で販売されたと言う事例があります。


相互運用性(Interoperability)におけるタッチポイントとしてのNFT

先に述べた、イギリスの進化生物学者が提唱したインターネットミームと言う造語、そしてそこから生まれたNFTに対して、PLAYBACK9をはじめ、このような商業的なIPのNFTで期待されるのは、その圧倒的な相互運用性におけるタッチポイント、つまりユーザー認知における手数の多さであると思います。プロ野球チップスのカードから野球ファンになった人も少なからずいるかもしれません。またはファミコンのゲームをきっかけに球場に足を運ぶようになった人もいるかもしれません。ブロックチェーンにおける相互運用性(Interoperability)を通じて、NFTは、いろいろな場面で様々なタッチポイントを作ることが可能となります。姿形を変えながらも生物の進化のように、脈々とDNAを受け継ぎながら生きながらえていくコンテンツは、時にはトレーディングカードであり、時にはメタバース内におけるアイテムや装備であり、時には、リアルな建造物のデジタルサイネージのようなものであるかもしれません。過去には、価値の交換と言うような意味で、トークンエコノミーとも呼ばれていましたが、このような価値の交換や物質の変化によって、コンテンツはアメーバーのように様々なプロダクトの間をシームレスに行き来することができます。NFTのInteroperablityについては、先日のNFT.NYCの中でも語られていますが、相互運用性による様々なプラットフォーム間の連動が日々議論されています。


ブロックチェーンで管理されているプロダクトはそこまで多くないのでは?と思われるかもしれませんが、既に多くの人の想像を超えて、国内外で数多くのマーケットが現れているのは皆さんが、ご存知の通りです。さらには、エネルギーやサプライチェーンなどをはじめ多くのブロックチェーン事例も続々と現れており、インターネットの聡明期とは比較にならないスピードで我々の生活に浸透してきていることが感じられると思います。NBATopShotで使われているFLOWと言う基盤は既に様々なシステムと連動して、エコシステムを作り上げています。

全く異なる産業構造同士が密接に繋がりあうことで、これまで到達できなかったところにまでコンテンツをデリバリーすることができるようになることによって、例えば野球というコンテンツについても、新たなファン層の開拓につなげることができるのではないでしょうか。

コンテンツが主役となるパーミッションレスなプラットフォーム

さて、圧倒的なタッチポイント、多くの流動性を作るためには、1社で管理する閉じたネットワークにコンテンツを維持することはできません。複数のネットワークやコミュニティの中で、自由に扱われる必要がありますが、その時にコンテンツの権利や許諾という部分はセンシティブです。Youtubeの切り抜き動画を例にとっても、個々の契約の煩雑さであるとか、アウトプットされた作品をぱっとみただけでは、許諾があるのかないのか、判断がつきにくいことは想像に難くありません。
そこで本来ブロックチェーンが持っているトレーサビリティを用いて、権利者、そして途中の改変を行った人たちの履歴などを追跡することができます。さらに金銭が生じた場合には、権利者に対してお金を返すということも必要となります。このような技術は、例えば、Walmartなどが主導するサプライチェーンなどの業界で、数多くの事業者が関わる中間流通などに使われている事例が多いことを見ても分かる通り、複数の事業者やネットワークが複雑に絡み合う中で特に威力を発揮することができます。
このようなテクノロジーを使うことによって、これまでのプラットフォームは大きく形を変えます。個々のコンテンツ自体が自由に媒体を行き来することができるからです。つまりコンテンツ自体がプラットフォームであると言い換えることができます。過去のプラットフォームはユーザーを抱え、様々な機能を提供し、その中でコンテンツを循環させてきましたが、これからは全く逆で、各コンテンツが自由に、媒体を選択し、自分が流動することができるようになるわけです。CryptoNinjaによる様々な人がP2Pに結びついて生まれる新しいコンテンツの形なども生まれていますが、このようなUGCコンテンツにおいても、常に主役はコンテンツ自身です。先日行われたThe Future of Gaming | FLOW FEST 2021のなかでは、 Dapper LabsのMickey Maher氏も"this allows for any game to easily and seamlessly and permissionlessly become a platform"というように、個々のゲームがシームレスで、パーミッションレスなプラットフォームというような存在になるという表現で触れています。(26:40前後)

UGCを意識した余白を大事にする?LOOTの事例

ショート動画のプラットフォーム「Vine」の共同創業者である Dom Hofmann 氏が、テキストと NFTを組み合わせたファンタジーゲーム「Loot」を立ち上げ、5日間で4,600万米ドルの売上と1億8,000万米ドルを超える時価総額を記録しています。Loot はおおよそ8,000種類の、ユニークでランダムな冒険者の装備として構築されており、ユーザーは自由にそれらを組み合わせて様々なゲームを構築することができるとされています。CryotpKittiesのKittieVerseなどをはじめ、ある程度世界観を提供してきたこれまでのNFTに比べると、全てをクリエイターの手に丸投げをすると言う、よく言えば、余白を非常に大事にすると言えるLOOTの事例は、今後のNFTのパラダイムシフトになる可能性があると言われています。

Conclusion

さて今回は、ベイスターズのPLAYBACK9について、過去のインターネットミームを例に出しながら、将来的には様々なアプリケーションとの相互運用性によって、新たなファン層の獲得ができるのではないか、と言うテーマで書いてみましたが、いま、多くのジャンルでは、テレビ離れと言われる状況の中で、もちろん、スポーツにおいては、ライブというものが大きな楽しみであることは変わらぬものの、地上波の中継から、インターネットの中継へと場所はシフトし、いまや、メタバース空間の中での視聴というような試みもつくられています。過去のように、19時になって、テレビの前に集まってプロ野球中継をみるという体験から、時代はモバイルシフトし、どこにいてもコンテンツにアクセスできると言う利便性と、アクセシビリティが重要となっています。オリンピックのようなコンテンツにおいてはタイムゾーンなどの違いからハイライトも重要です。多くのユーザー、特にZ世代とミレニアル世代たちは、TikTokやSnapchatの中で、コンテンツを消費しているという現状があります。多様性の時代、スポーツへのタッチポイントにおいて、ハイライトとクリップの最適化は、非常に重要です。PLYABACK9のショート動画が、野球の新しいファンアイテムと言われる日はそう遠くはないのではないかと思っています。



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