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LOOT-NFTにみるDAOで実現する次世代GamePlatformのカタチ

NFTブームが加熱し、世の中のあらゆるものをNFT化する流れが進んでいます。世の中のデジタルアイテム は急速にブロックチェーン技術にシフトし、将来的にはすべてのものがNFTでつくられるようになると予想する人もいます。完全にすべてのデジタルアイテムが置き換わらなかったとしても、HotWheelsIDのようなICチップ入りの玩具のように、スマートフォンで遊べる車の玩具と、それ以外の車のように共存し、新たな市場を開拓していく可能性もあるのではないかと思っています。

少なくとも既存のNFTで管理されているデジタルコンテンツは不可逆なものであり、希少価値をもつそれらのアイテムが既存のシステムやDBに戻ることはないはずです。そのような中で、昨年末から、LOOTというNFTが非常に注目を集めています。前回の記事にも少しだけ記述しましたが、デジタルコレクティブル市場において、集めることにフォーカスしていたNFTがいよいよ、"使う"ことを考えるフェーズにはいったと言えます。今回はこのLOOTを中心に説明したいと思っております。

LOOTとは

Lootは、RPGに必要な様々なアイテムを入れた8,000個のユニークな「バッグ」からなるNFTプロジェクトです。このプロジェクトは、6秒短尺動画で有名になった「Vine」の共同創業者であるDom Hofmann氏がローンチしたものです。Lootバッグには、冒険者が必要とする胸、手袋、靴、頭、腰、ネックレス、指輪、武器の8つの装備が入っています。Lootは、ストーリー、体験、ゲームなどのための、フィルタリングされていない価値のない構成要素にすぎず、誰もがガス代のみで、無償で手に入れることができ、ユーザーは、これらのNFTを用いてゲーム、コミュニティ、開発ツール、ギルド、マーケットトラッカー、派生プロジェクトなど自由につくることができます。Lootは黒い背景に白地のテキストで構成されるとてもシンプルなNFTで公式としてのユースケースがなくその全てをユーザーに委ねていることが特徴となっています。Lootが示した余白に対して、世界中のクリエイターの想像力を掻き立てられ、多くのクリエイターたちが参加する状況になりました。この現象は、日本の初音ミクなどボーカロイドの声に、有志の人たちが、キャラクターを重ね、音楽を重ね、ダンスを重ね、様々な二次創作が生まれたことに非常に似ているかもしれません。徐々にそのコミュニティは多くの人を巻き込み、プロアマ問わず質の高いプロダクトの生成に一役買っているとも言えます。これらの現象をLootではボトムアップ的なアプローチとして示していますが、おそらく考え方としては過去の二次創作などと同じようなアプローチであるといえると思います。


例えば、Lootではテキスト情報にたいして、可愛らしいデザインを考える人が参加したり、

アートを生成するためのアルゴリズムに取り組んだりとオープンソースなのでコミュニティ主導で開発が行われており、色々なアイデアが生み出されています。


次世代PlatformとしてのNFTの利用ケース

様々なプロダクトが横に接続性を持ち、接続性を持つことをインターオペラビリティ(相互運用性)などと表現します。ブロックチェーンの世界では、トークンエコノミーなどこれまでも様々なワードで、同一のトークンが他のサービスに相互接続する様子を表現することがありますが、基本的な技術や考え方は同じです。このような概念はブロックチェーンゲームにおけるインベーダーとも呼ばれているCryptoKittiesの中で既に実践されており、KittyVerseという取り組みは未だにそのコンセプトと共に語り継がれています。先日行われたThe Future of Gaming | FLOW FEST 2021のなかでは、 Dapper LabsのMickey Maher氏も"this allows for any game to easily and seamlessly and permissionlessly become a platform"というように、個々のゲームがシームレスで、パーミッションレスなプラットフォームというような存在になるという表現でもKittyVerseの取り組みに触れています。(26:40前後)

一方で、複数のゲームにおけるコンテンツの再利用は非常に難しく、KittyVerseでもまだプロトタイプの域をでていないと考えられています。ゲームにおいてアイテムの相互利用を難しくしているのはそのビジュアルやテイスト、そしてパラメーター問題など多岐に渡ります。
先に述べたトークンエコノミーでは、様々なプロダクトの連携を行うためには同一の仮想通貨やトークンに一度換算することで、プロダクト間の連携を担保していました。しかしながら、ゲームのアートワークは、そういった換算を行うことができません。3Dのゲームの中にドッド絵を持ち込むことや、その逆を行うことはビジュアルとしては非常に難易度が高いといえます。NFTアートの文脈で語られているように、NFTのビジュアルはNFTの価値そのものであることが当たり前であった中で、LOOTのプロジェクトはNFTを文字の羅列だけに留め、その他の要素は、すべてプロダクトに委ねたことは大きな発明でした。さらに、そのNFT自体の価値を図るための、パラメーターについても、第三者に委ねていることも非常に大きなポイントとなります。コミュニティとして、独自の価値決定システムが提供されており、現在の主な換算方法は、NFT希少性に連動しています。

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アイテムスコアは、バッグに入っているすべてのアイテムのレアリティスコアを合計して算出され、Lootバッグの将来的な価値は、サードパーティーによる今後のアプリケーションに委ねられています。あるゲームによっては、非常に優れたアイテムであっても、他のゲームでは、必ずしも優れているとは限りません。自分が保持しているトークンのために、新たなゲームをつくり再設計することすら可能かもしれません。

https://github.com/bpierre/loot-rarity


複数のプロダクト間におけるゲームアイテムの連動は他にP2P(PlayToPlay)とも表現されており、EthereumのWalletという共通の概念によって結ばれる新たなプラットフォームの形になるのではないでしょうか。

オープンソースコミュニティで作られているLootの開発事例

既にLootのコミュニティでは、さまざまな派生プロジェクトも生まれていてゲーム開発者を助けています。

1.LootCharacter

https://www.lootcharacter.com/
LootNFTから自動でピクセル画像を作成し、ゲームで利用可能にする試み

2.Loot Inventory
https://0xinventory.app/

Lootのアイテムの希少価値を可視化。
希少性に応じて、個々のアイテムを評価。

3.LootMart

4.Loot Maps

https://twitter.com/Maps_Proj

発見されたLootアイテムにマップされたランダムな場所を生成。
物語や言い伝えの構成要素として、機能することを目指すプロジェクト。

5.Loot Explores
https://www.lootexplorers.quest/
メタバースを作ってLootキャラクターで遊べる計画
https://ethereumnavi.com/2021/12/23/what-is-lootarp/

4.LootDungeon

5.Loot Sound

Loot NFTによってサウンドを生成し、他のアプリケーションやゲームで利用可能にするプロジェクト。

6.Lott Explores
https://www.lootexplorers.quest/
メタバースを作ってLootキャラクターで遊べる計画
https://ethereumnavi.com/2021/12/23/what-is-lootarp/

7.LootLARP
https://www.lootlarp.xyz/
実際にスペインのバルセロナにある城に集まってLootの装備を身に着けて遊ぼうというプロジェクト
(Lootの装備リストを物理的な装備にきちんと紐づけるためにSiLo
(Silicon-Locked smart contract)というチップを使う)

MoreLootやSynthetic Lootなど新たなLoot

LOOTはEthereumのガス代の高騰をうけて、非常に高額になっているため、それらを回避するためにLOOTの発案者が非NFTであるSynthetic Lootをローンチしています。
https://opensea.io/collection/lootproject

https://etherscan.io/address/0x869ad3dfb0f9acb9094ba85228008981be6dbdde#readContract

tokenURIのwalletAddressにアドレスを入力するのみで簡単に見ることができます。

また、このコントラクトをWeb上で簡単に実行するアプリケーションも開発されています。

Conclusion

私自身も、ブロックチェーンという技術に関わり始めて、様々なゲーム間でのアイテムやキャラクターの相互互換性を担保するために、2019年にTokenParameterHubというゲームパラメーターのゲートウェイとなるための、アーキテクチャ技術を開発しています。パラメーターの強さは、LOOTのレアリティと同じで、発行枚数などを元に自動生成で算出しています。LOOTのレアリティと少し異なる点は、トークンの広がりによってもパラメーター強度が変化することで、この機能によってトークンの独占、買い占めなどがおこらないように設計し、パラメーター強度を上げるためには、市場へのトークンの浸透もあわせて考える必要があるような設計にしています。ただ、Wallet自体は同一人物でも複数発光できてしまうため、本来の意味でこの機能をワークさせるためにはDIDなどによって本当に複数人物によるトークンの保有であるのか、独占的なトークンの保有であるのかなどを組み込むなど改良の余地があると思っています。


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