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八芳園(紀行編)ーー庭園とはテーマパーク

結婚式。それは新郎新婦が、病める時も健やかなる時も共に過ごし、愛をもって互いに支え合うことを誓う日。二人が人生で最も輝く瞬間といっても過言ではないだろう。ここ八芳園はそうした方々のための結婚式場としてお馴染みだ。建物はとても立派で、人生最高のイベントを行うにはふさわしく、会場では幸せそうな顔をした人たちが楽しそうに会話をしている。建物の外の日本庭園では、新郎新婦と家族親族がずらりと並び集合写真の記念撮影。そんな様子を横目になんと他に心を移している者たちがいた。私たちである。私たちは八芳園の庭園に夢中であった。もちろんこの場所において、本日の主役は彼ら彼女らである。しかし、だからといってやすやすとこの場を譲り、帰宅するわけにはいかない。こちらもこちらで庭園鑑賞者としてのプライドがあるのだ。というわけで、私たちがこの八芳園を庭園目線でどのように鑑賞したのかを述べたいと思う

ツツジとサツキがつくるピンクの絨毯

庭園に入り、まず目に飛び込んできたのは丘陵地全体に広がるツツジ、サツキがつくるピンクの絨毯であった。私たちが訪れたのは6月上旬。満開の時期とは少しずれ、咲き終わった花殻がところどころに目立つ状態ではあったものの、圧倒されるほどの鮮やかなピンクが非常に美しかった。ネットで満開時の様子を調べると、それはもう息を吞むほどの美しさで、ぜひこの時期にもう一度訪れてみたいと感じた。庭園では、最初に目に飛び込んでくるもののインパクトが大切である。今まで訪れた庭園でも、やはり入園と同時に心をつかまれ、一気にその庭園の世界に引き込まれてしまった場所というのは今でも記憶に残っているものだ。私たちは庭園をエンターテインメントの空間、いわばテーマパークだと認識している。そのため、よく現代の日本のエンターテインメントの聖地、東京ディズニーリゾートと比較をすることが多い。東京ディズニーランドでいえば、最初に目にするのは、メインエントランスに入ってすぐのミッキー花壇である。カラフルな花々で、ミッキーマウスの笑顔をかたどった大きな花壇のインパクトは絶大で、それを見た時点で、我々はディズニーの世界、夢の世界に没入するための魔法にかかっているというわけだ。そういった意味では、ここ八芳園の庭園のツツジは、八芳園の世界に没入するため来園者を出迎えるミッキー花壇ということになる。

あずまや「角亭」

もうひとつ私たちが注目したのは、あずまやである。あずまやとは、休憩を目的として造られた小さな建物のこと。居心地の良い日本庭園には必ずこのあずまやが園内にバランスよく配置されている。これも訪れる人々を楽しませようという想いから来たサービス精神、ホスピタリティの表れである。どれほど美しい庭園でも、やはり長時間園内を歩かされては人間疲弊するに決まっている。そんな時、「そろそろひと休みしたいな」と思ったところにあずまやがあったらどうであろう。来園者は自分の気持ちを想像してくれたことに感動し、この庭園のことがより好きになる。八芳園の庭園はまさにそんな庭園だった。あずまやの数は4つ。すべてベストな場所に配置されていた。そしてそれらひとつひとつには名前が付けられており、特色も異なる。私たちは角亭と水亭というあずまやで休憩をとった。角亭は自然に溶け込んでおり、木漏れ日で照らされた様子が美しい。机は木と石で作られていて、屋根は苔で覆われている。そんなあずまやの中でとる休憩は自分自身が自然と一体となるようでとても気持ちが良いものだ。一方で、水亭はエンターテインメント性が高くかっこいい。あずまやのギリギリまで水が押し寄せており足場は石組。それだけでもうわくわくする。だが、感心するのはまだ早く、この水が太陽の光を反射し、その光をあずまやの天井に映し出した時、そこに自然が作り出すプロジェクションマッピングが完成するのである。このきらきらが揺れる感じがたまらなく美しくかっこいいと私たちは思うわけである。

あずまや「水亭」

さて、そんなふうに庭園を一周した私たちだったが、出口手前で、新郎新婦ふたりの記念撮影の現場に出くわした。八芳園の庭園をバックにたたずむ二人の姿はやはり輝いており、二人の思い出の写真にこの庭園が貢献しているのだと思うと、庭園の存在意義はやはりとても大きいものだと感じた。ちなみに東京ディズニーシーでもホテルミラコスタのオプショナルプログラムとして、開園前のパークでドレスアップした新郎新婦の写真を撮影してもらえる素晴らしい体験がある。名前は「フォトグラーフィア・イン・メディテレーニアンハーバー」。日本庭園と同じく、ゲストへのホスピタリティが溢れる東京ディズニーリゾート。しかし、エリアやイベントの名称に関しては極めて難解であり、まったく優しくはない。

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