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小川屋の色々裏話~手作りの琥珀糖の悩み

商品としての琥珀糖を作る難しさ

限られた和菓子店でしか見かけることのない「琥珀糖」
最近見た目の美しさでテレビで取り上げられたり、
コロナが流行って自宅でも作れる「映え」のお菓子として
若い世代を中心にSNSなどで知っている人が増えましたが、
うちのお客様でもよく聞くのは「作ってもうまくできなかった」という声。

煮詰めるタイミング、乾燥する温度、湿度、日数。

同じようにしていてもその度に変わるというのがお菓子作りの常ですが、
中でも変わり琥珀は非常にシビアです。
結構な回数作っていますが、いまだに
「同じようにしているのに出来が微妙だ」と思う時が多々あります。


琥珀糖は簡単に言えば寒天のゼリーの周りに砂糖の結晶が膜状にできたもので、ただ乾燥させてできているのではありません。
商品としては手間と時間がかかりロスも大きいため、それなりの値段になります。
普通の砂糖(と香料程度)のみで作る場合はそう難しくないのですが
果汁などを使うことで起きた悩みはたくさんあります。

小川屋の琥珀糖は「色や香りでなんとなく」ではなくしっかりとした味と香りが感じられるように作っています。
しかし結晶というものは、食塩やミョウバンの結晶づくりなどしたことがある人はわかると思いますが不純物が混ざるときれいに出来ません。
さらに素材によっては砂糖との相性もあり、いつまでたっても結晶ができないということもあります。

「商品」として販売する段階での壁もある


トップ画像は「天上コハク」という商品ですが、商品化までに相当苦労した商品です。
琥珀糖はそもそも繊細なお菓子で、きちんとした箱に動かないように入れるのが普通ですが、天文博物館のお土産として開発していたので、
「外から見える」といった見た目も大事な要素でした。

ただそうなると透明容器が密閉性が高い容器であることと、
開発をすすめていたのが夏場ということもあり、厚みのある普通の琥珀糖では中の水分で蒸れてしまい、べたつきやカビ、痛みの恐れがありました。


もう一つはお土産用途や催事での販売となると、商品自体が輸送の衝撃に耐えられるかということです。
普通の琥珀糖でこのような容器にごろごろ入れてしまうと、移動中に衝撃で表面の膜がひびだらけになってしまいます。
ひびが入るとそこから結晶が中に進行してできてしまい、中まで砂糖の結晶になってしまいます。

色々と試行錯誤して、厚みは薄めにして出来るだけ水分を飛ばし、表面の結晶を厚めにすることで頑丈にするという今の形ができました。

店頭販売は紙の箱仕様

店頭の季彩琥珀は紙の箱で、昔からある自然に水分が蒸発していける売り方にしています。同じものでも食感が異なる仕上がりになります。

何を一番優先するのかという悩み

本店以外で、外部で販売するための商品を作るということは、クリアしなければいけない条件も色々あり、何かを犠牲にしないといけないことも出てきます。(これ関してはまた別の機会にします)

頑丈さを必要とするため長めに乾燥させますが、特に果汁系はなかなか表面が安定せず、乾燥が長期になるとその間に結晶が中まで進んでしまうため
琥珀糖というよりはただの「砂糖菓子」になってしまうものもあります。


味や香りを薄めて「本来の琥珀糖」に近づけるほうがいいのか、この味や食感を楽しんでもらうのか。

商品のためにパッと見で中身が見えない箱にしたら、安いとは言えない商品を果たして買うだろうか?

などなど。悩みながらお客様の様々なご意見を伺っております。
もちろん、味覚は人それぞれですから
全ての人に完璧に合う商品をつくることは不可能です。しかし

「より多くの人に愛される商品とは」
「何が求められているのか」

それに答えるためにはたくさんの皆さまの「声」が必要です
皆さまの声をいただきながら進化し続ける、
「ここにしかないもの」をこれからも作っていきたいと思っています。
 
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