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【3話】 ドメインうぉーず! 〜EP1 空とNULLの姉妹〜

前回

3話


○病院

ヌル「(だめ……それだとあなたは不幸になる……!)」

有海 空「なってないし、これからもならないよ」

???「~~~~~~~!!」

同階層から上の階へ登れなかったはずの大柄の怪人の声が響く。

そして、その足音は少しずつ空たちがここにいるのを気づいているのか近づいてきいる。

ヌル「(……っ!)」

有海 空「……私に今できる全てを教えて」

ヌル「(……一個だけ……逃げない方法は……ある)」

有海 空「教えて」

ヌル「(……あなたに有海玖弎のCUBEのアカウントを移管させる。まだアカウントは生きてるから)」

ヌル「(でも、そうすればあなたは厄災としてCUBEの全てからデリート対象として狙われる……!)」

ヌル「(この道を選べば、たくさん辛い目に遭う……! その先で全ての真実を知ったあなたはきっとこの選択を後悔する……! 私は……有海玖弎はそんなこと望んでなんかいない……!)」

有海 空「じゃあ、これから証明させて」


病室のドアの壁が破壊される。

白煙が発生し、その煙の中から武器を持たないあの大柄の怪人がゆっくりと現れる。

空はその対象のいる方向に振り返りこう真っ直ぐに言った。

有海 空「どんな結末や未来でも最期はあなたの妹で良かったって笑って逝けることを!」

有海 空「(正直、また自分は逃げてしまうんじゃないかと考えるのが怖い)」

有海 空「(だけど、その弱さで目の前の大切な人を泣かせるぐらいなら……!)」

すると、空中からノイズが発生し、カードを差し込む側面があるハンドガンと複数枚のカードが現れる。

それを空は手に取った。

ヌル「(……カードからNULLと書かれたキャラのカードをその銃に差し込んで天井に向けて撃って)」

空はこくりと頷いて銀髪の長い髪で白い装甲を纏った少女のカードをハンドガンに差し込む。

すると待機音ような音が鳴り響き、空がそのまま天井に向けて引き金を引く。

怪人は危険を感じたのか空に向かってくるが、部屋が光包まれると共に電流のような音で何が斬られる音が響く。

有海 空「……っ!」

光が消えるとその目の前には白の装甲を纏った銀髪の少女が立っている。

長い髪がなびく少女の手には先端が刃が三つに分かれた槍が握らされている。

そして、少女の目の前にいる化け物の胴体が縦に両断されていた。

切れ目には電流が走っている。

パックリと割れた胴体は左右の床に崩れ落ちる。

空はふと後ろを振り返るが妹の姿が見当たらなかった。

有海 空「……く……み……なの……?」

銀髪少女「私はその名前を名乗る資格もまだ勇気もない、ただのヌル……」

銀髪の少女は振り返らずにそう言った。

ヌル「それでも、あなたが私を想ってくれるなら、私もあなたを想うから……」

有海 空「……うん、今はそれでいいから、その時が来るまで待ってるから……! 本当の名前を教えてね……ヌルっ!」

ヌルは振り返り空に向かって目を潤わせながら、こくりと頷いた。

有海 空「ヌル、う、後ろ……!」

ヌル「……これは」

そこにはヌルの槍によって分断された化け物の肉片が一箇所に集まり大きな集合体となる。

それはあまりにも歪で、しばらくするとその肉塊が突如中から現れた2本の腕によって引き裂かれる。

そこから現れたのは血に濡れたローブを纏った仮面の機械人間、イケロスだった。

イケロス「……ひひ、まさか、あなたもCUBEに選ばれた者だったとは」

夢裏 悦「……はぁ、はぁ、はぁ!  くそ、置いていきやがって……!」

頭を押さえながら、夢裏も走ってやって来た。

夢裏 悦「……おい、なんだこれ……? ウゼェな本当にウゼェなお前っ!! 雑魚のふりしながら最後は私つえーてか!! そうやって弱者を潰して楽しいか……!?」

ヌル「正直さっきまで話聞いてたけど、空はそんな人を潰すようなことはしてない。そもそもそんな人なら私はここにはいない」

夢裏 悦「ははは、主人も主人ならお前もウゼェな! もういい、ここで終わりだ」

夢裏はカードをハンドガンに差し込んでイケロスに向かって引き金を引く。

機械音声 「チェーン・バースト」

すると光の玉が放出されそれを浴びたイケロスは両手を空たちに向ける。

ヌル「……っ!」

空「ヌル!?」

ヌルは空をお姫様抱っこして、いつ間にか割れている大きな窓から飛び降りた。

その瞬間壁はイケロスから放出された無数の鎖によって破壊される。

有海 空 「ええええええええええええええええ!?」

ヌル「ちょっと、飛び降りる」

有海 空「もう飛び降りてる!! ここ3階!!」

ヌル「覚悟決めてたっぽいから飛び降りてもいいかなって」

有海 空「飛び降りる方の覚悟はしてなかったよっ!!」

ヌル「あんまうるさいと放り投げる」

有海 空「理不尽……!」

ヌルはコンクリートの地面に綺麗に空を抱えて着地した。

敵のいる病院からしばらく距離を取ると空を降ろす。

有海 空 「ど、どういうこと……」

ヌル「つまりそういうこと」

有海 空「いや、わかんないよ……。って!?」

無数の鎖が3階の窓からなぜかこちらに向かって来ている。

その鎖は地面に突き破った。

夢裏 悦「くそが……!!」

滑り台のようになった鎖から夢裏を背負ったイケロスは渡って来た。

イケロス「ひひ、逃げても無駄ですよぉ? 鎖で縛った人間に悪夢を魅せることで私は悪夢の体現者に等しい力を持てるのでねぇ」

夢裏 悦「そうだ……正義がこんな悪に屈するわけがねぇ……! これは絶対なる保証された正義だ……!」

夢裏はイケロスから降りるとまたカードをハンドガンに差し込み引き金を引く。

機械音声「ナイトメア・パレード」

イケロス「ひひひ!」

夢裏たちの周囲から複数の黒いゲートが現れる。

ゲートからはさっきの怪人や伸びる歪な無数の手や、ブドウのふさのように集まった骸骨の頭など悪夢に相応しいものが大量に召喚される。

夢裏 悦「お前らみたいな0の塊のような屑が合わさったところで何になる……! 笑えるなぁ、屑が!」

有海 空「私はーーううん、私たちは0にならない!!」

有海 空「(私たちは1【進むこと】を選んだから!)」

夢裏 悦「さあ、正義のパレードを始めようぜぇ!! 有海空ァ!!」

空は複数枚のカードからエラーのポップアップが大量に描かれたカードを見る。

すると空の脳内にカードの効果の情報が流れる。

空がそのカードをヌルに見せる。

ヌル「なるほど、でもこの一撃は関係ない敵に槍が当たれば発動してしまう……」

有海 空「大丈夫、その道は私が作るから」

ヌル「…………わかった」

空はヌルに向かってカードを差したハンドガンで引き金を引く。

機械音声「アブソリュート・エラー」

光の玉を浴びたヌルの槍は赤いオーラを纏う。

空は別のカードを差し込んで、天に向けて引き金を引く。

機械音声「ムーンショット・ボット」

ムーンショット・ボット
【最大使用回数 1回】
使用可能:コロニスト
一人で10体の攻撃型球体ボットを同等の速度と精度で操作できる。
脳に一定の負荷がかかるので注意が必要。

ノイズから10体の球体のボットが出現する。

有海 空「…………っ!」

空は謎の頭痛で一瞬ふらつく。

ヌル「……空っ……!」

有海 空「大丈夫っ……! 行って!」

ヌルは一瞬瞳が揺れるがこくりと頷いた。

ヌルは風のようにイケロス向かって駆け出す。

そして、道を塞ぐ数多の敵はボットが放つ一撃によって、怯む。

その一撃は外すことなく確実に敵に命中する。

無数の敵が押し寄せる中、ヌルの動きはますます速く、鋭くなっていった。一つ一つの動きが正確で、ボットで払いきれなかった敵の攻撃を紙一重でかわしていく。

イケロス「愚かなっ! 捨て身とは美しくないですねぇ!」

イケロスが腕から生えた無数の鎖をヌル向けて左右にクロスしながら振り回す。

それをジャンプで回避するとその一瞬の隙を見逃さずにイケロスの腹部に突き刺す。

ヌル「愚か上等っ」

イケロス「……本当に愚かですよぉ……! 悪夢で眠らせたものがいる限り、私は何度でも悪夢の体現者として蘇るのです……!」

ヌル「なら、よかった」

イケロス「……一体何をーー」

突き刺した槍がドリルのように回転し火花を散らしながら、イケロスを勢いよく吹き飛ばす。

アブソリュート・エラー
【最大使用回数 1回】
使用可能:MI

不死、無敵等の理不尽な法則を破壊する一撃を武器に込める。対象が不死、無敵等に該当する特性を持っていた場合、対象のHPを0にする。

イケロスは大量のエラーのポップアップに覆い尽くされ、突き進む槍に刺されながら爆発した。

そして、槍は回転しながら持ち主の元に帰ってきた。

ゲートから現れた怪物は全てゲートに吸い込まれていく。

ヌルは槍を持って夢裏の元にゆっくりと迫る。

夢裏 悦「おい、嘘だろ……? なんだよお前、何なんだよお前はぁ!?」

ヌル「えい」

尻餅ついて動けない夢裏の股間を足で思いっきり蹴った。

夢裏 悦「……!?!?!?」

すると夢裏は仰向けになって気を失った。

ヌル「球を潰せば皆姉妹とはよく言う」

有海 空「言わないよ……!? ……あれ……?」

空はふらついたまま、崩れる。

ヌルはすぐにそれを支えた。

ヌル「無茶ばっかして……シスコン……」

有海 空「褒め言葉かな……?」

ヌル「ちゃんとシスコンの意味を辞書引いて調べたほうがいい……」

有海 空「えへへ、……あれ? ……ちょっと疲れて眠くなってきちゃった……」

ヌル「問題ない、ちゃんと元の世界に返しとくから」

有海 空「……夢じゃないよね。私ちゃんと変われたんだよね……?」

ヌル「大丈夫。夢だとしてもちゃんと私は覚えとく。そして、伝える。あなたは変われるって」

有海 空「……そっかぁ、なら安心ーー」

空は笑顔を向けながら、ゆっくりと目を閉じてヌルの腕の中で眠りについた。

ヌル「おやすみ、空ねぇ……」

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