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ぶらり旅に同行させてもらった。(1)

ある日の夜。
突然1年以上会っていなかった友人から、
「おがさん、突然ですが遠くに行かない?」とLINEが入った。

「明日一人旅しようと思ってるんだけど、よかったらどうかなって!」

それすでに『一人旅』じゃなくなるんだけど良いのか???
と思いつつ、
「何時にどこに行けばいい!?」とほとんど反射で答えていた。

翌日は朝一で、10分ほど打合せ電話をする約束があったので、
それを終えてから、友人とは途中の駅で合流することになった。
おおよその終わり時間と合流できそうな予定時間などだけを友人に伝え、
行き場所などの旅の詳細は友人からも知らされないまま、
完全お任せスタイルで同行させてもらうことがサクサクと決定。

そして当日。

朝から仕事の電話がつながらない。
おいおい、マジかよ。しょっぱなから詰んだよごめんよ。

当初の目的通り、一人旅にしますか…?、と謝罪の連絡をしたところ、
「いや、別にがっつり決めた旅じゃないから待ってるよ」との返事が。

ごめんよ、ありがとう、走る!
と、心の中で何百遍と土下座と懺悔を繰り返し、
骨折した右手をかかえて駅まで走った。
そして予定時刻を30分強ほど遅れて駅で合流。

「あ、おがさーん、久しぶ…………、って右手どうした!?」
「久し振り! 遅れてごめん! あ、折った!」
「折った!?」
「あ、いや、折れた?」
「どっちでもいいわ! でもちょうど良かった!」
「骨折が、ちょうど良い、とは……?」

1年ぶりの再会はハイテンションな会話からのスタートとなった。
友人いわく、本日のプランに温泉を入れようとしていたけれど、
ほかに回りたい場所を見つけたため、入館時間の兼ね合いでやめにしたそうだ。
私が温泉に入りたかったら申し訳ないなと思っていたと。

いや、そもそもどこに行くかわかってない旅行なので、
温泉がある地域にむかうんだ?????? へえ????????
と、ここで初めて思ったくらいだ。
なくても全然大丈夫。問題なし。

第一プランに入っていたという『西武秩父駅前温泉・祭の湯』

さて。
合流を果たした友人に
「じゃあここで一回乗り換えるんだけど、ちょうどいい時間のがあるよ」
とスマホを見ながら教えられ、ホームを目指して歩いていく。

ティリリリリリリリ…………

階段を下りている最中、下から発車のベルが聞こえてきた。
だが友人はまだのんびり歩いている。
あれじゃないのか。じゃあ次の電車かな。
私達がホームに降り立つ直前にドアが閉まり、電車は目の前でゆっくりと動きだした。
それを見た友人が、おもむろに再びスマホに目を落として一言。

「あれ? はは、今のだわ」
「今のかーーーーーーーい!!!!???」

かくして、次の電車に乗車した私は、
これからどこに行くのかを知らないまま、ガタゴトと揺られること1時間。
(その後、べつの駅で乗り換えが1回あるも、間違えてさらに1時間ほどホームで過ごす。)

お昼ご飯を食べる予定とされている西武秩父駅に到着。

これは帰りに撮った西武秩父駅

え、めっちゃ立派。なんかおしゃれ。
駅の中にご当地お土産ショップや焼き肉屋や温泉もある。
もうこの一駅で完結できちゃうじゃん、旅、とちょっと思った。

しかしここからは、バスに乗り替えるとのこと。
ここまで色々時間にロスがあったため、
目標のバスの出発時刻は既に20分後とせまっていた。

でもまあ、20分もあれば余裕っしょ。

そう思っていた私に、友人は駅内を先陣きって歩きながら一言。
「おがさん、ご飯食べるの早くいける人?」
なにその質問。急だな。早くってどんくらい??

ゆっくり食べろと言われれば時間をかけるし、
5分で食べろと言われれば早食いもできるので、そう伝える。

「良かった。ここ名物の『わらじカツ』があるから食べよう!」

わらじ、カツ……?
まって? カツって揚げない……?
ねえ、揚げる時間考慮されてなくない……?

そうは思ったが、友人は目星をつけていた店にサクサクと入っていく。
行動力すごいな。
まあいいか。乗り遅れたらまた次のに乗ればいいんだし。

わらじカツ。そのままで味が染みこんでる!

そう思って食べ始めたのは、発車時刻まであと10分強。

「あ、そうそう。このバスに乗れないと、後ろの予定全部だめになるんだよねー」
「はい!!????? 待って??? それ早く言おう!!!????」

むしろそれならここで食べなくても良かったのでは。
コンビニでおにぎりとか買って食べても良かったのでは。

とも思ったが、友人曰く、
「ここでわらじカツを食べようと思ってたから」と強い意志を感じる。
ふんわり旅路のなかで譲れない目的の一つだったらしい。

衝撃の告白をのんびりされたあと、名物わらじカツを飲むように食べた。

そして走った。
バス停まで走った。
私たちがバスに乗った1秒後、「出発します」のアナウンスが車内に流れ、
バスはゆっくりと西武秩父駅を出発したのだった。(1)











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