抜け道を探せ! 無意味すぎる首相官邸会見の規制と裏技

 2009年、衆院選の結果により自民党を中心とする政権から民主党を中心とする政権へと移行した。いわゆる、政権交代。民主党政権の誕生だった。

 ここから3年以上、鳩山由紀夫・菅直人・野田佳彦と民主党が首相を輩出。これまで政権運営を担った経験がなかったこともあり、その政策手腕は未熟で、ときに厳しい声も飛んだ。

 民主党政権への転換は、有権者にとっても未知の世界だった。ゆえに期待も大きく、その反動で失望へと変わることも早かった。その失望に対する内容は、本論ではないのでここでは触れない。本稿で触れるのは、あくまでも中央省庁における首相および大臣の会見についてだ。

 民主党政権が発足して、大きく変わった点はいろいろあるだろう。なによりも強調したい記者会見のオープン化という部分は、自民党政権時代と比べようもないぐらい劇的に変わった。

 そして、再び自民党政権に戻ると、会見のオープン化は少しずつ後退していると言わざるを得ない。

 各省庁の大臣会見は定例会見とも言われるだけあり、火曜日と金曜日に毎週実施されている。この定例会見は、各省庁内の会見室という部屋で実施される。

 定例会見は各大臣が話をする場だが、あくまでも主催者は各省庁の記者クラブとなっている。財務省なら財研と略称される財政研究会、総務省なら総務省記者クラブといった具合だ。

 各記者クラブが主催者で、大臣はそこに呼ばれているに過ぎない。繰り返すが、会見室は各省庁内にある。つまり、庁舎内にある会見室で大臣が記者会見をしているものの、大臣はゲストに過ぎない。だから、会見のルールは記者クラブ側が決めている。

 というのが、あくまでも建前となっている。こうしたややこしいルールになっているのは、大臣もしくは省庁側に主催権があると「大臣の裁量で嫌な記者排除できてしまう」という懸念によっている。

 これはこれで、一定の理があるといえる。問題は、記者クラブが長年の慣習によって新規参入を拒み、新たな媒体の参加を認めなかったことにある。以前から、記者クラブは専門誌や週刊誌などの記者参加を拒んできた。しかし、もはや時代は大きく変わっている。

 民主党政権が誕生した2009年でさえ、ネット生配信は珍しくなかった。それから10年以上が経過し、スマホの所有率は格段に向上。通信環境も大幅に変わった。いまや生配信は珍しくない。

 ツイッターをはじめとするSNSによる個人の情報発信も盛んで、新聞社・テレビ局も公式アカウントを使って宣伝・告知に励んでいる。個人発信に比べ、新聞社・テレビ局の情報発信の方が精緻で速報的。

 なによりも労力をかけているという点では、いまだテレビ・新聞は群を抜いている。だからといって、新たなメディアの参入を妨げられるものではないだろう。

 しかし、記者クラブは頑なに新規参入を拒んできた。そのため、情報量に劣る野党は情報発信という点で不利を強いられる。与党である自民党は強者としての立場を盤石にし、情報発信を武器にますます強者へとなっていった。弱者は、持つ情報量の少なさ&重要性の低さから弱者のままを余儀なくされる。

 そうした情報量・質の力学が大きく転換したきっかけが、民主党政権の誕生だった。民主党が掲げた政治主導は時に迷走し、官僚を疲弊させた部分もあったが、なによりも国民の知る権利である“情報”へのアクセス権をきちんと整備した。情報へのアクセス権を具体的に書けば、大臣会見のオープン化である。

 これまで官邸の首相会見をはじめ、大臣会見など多くの会見を取材してきた。それについてあちこちで書く機会を得ている。

 それでも、記者会見のオープン化が一般的に重要だと考えられる風潮は強まっていない。知る権利も蔑ろにしれている、それほど重要視されていないとも感じる。

 内容が重複してしまう部分もあるが、記者会見オープン化の一端は、2020年4月9日付けのアーバンライフメトロ に前後編にわたってリポートした。

“【前編】新型コロナ禍の首相会見 「記者クラブ」は正しく機能しているのかルールが異なる記者会見”

“【後編】新型コロナ禍の首相会見 「記者クラブ」は正しく機能しているのか”

 この時は、コロナ禍ということもあり、首相会見のみならず政治に注目が集まっていた。ゆえに、記者会見のあり方にも注目が集まった。

政治家がコントロールする記者会見

 政治家が実施する会見は、星の数ほどある。それこそ、選挙が近くなれば出馬会見という名目で記者を集めて自身の政見を述べる。

 2020年9月には、菅義偉議員・岸田文雄議員・石破茂議員の3候補による自民党総裁選が実施されたが、それら3候補はそれぞれ出馬会見を開いている。

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総裁出馬会見時の菅義偉議員

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