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書籍「左遷社長の逆襲」読了


https://booklog.jp/users/ogawakoichi/archives/1/4023319910

◎タイトル:左遷社長の逆襲 ダメ子会社から宇宙企業へ、キヤノン電子・変革と再生の全記録
◎著者:酒巻 久
◎出版社:朝日新聞出版


トップの意識で会社は変わる。逆に言えば「魚は頭から腐る」もまた真なり。変革しなければ、死ぬだけだ。
既存事業がすでに衰退の状況になっているのに、なかなか意識を変革できない。
それこそイノベーションのジレンマであるが、子会社の場合は特にそういう事例が多いと感じる。
当方が働く会社も、あるグループ企業の所謂「子会社」である。
本書に記載されていたようなサボリ社員のエピソードは、正直かつての日本企業は似たり寄ったりだったと思う。
ある程度親会社から仕事が流れてくるために、自立性は失われ、考えもせずに言われたことだけやるようになる。
それでも変革しようとして立ち上がる社員もいるはずであるが、大抵は「余計なことをするな」と頭を押さえつけられるのが普通だったのではないだろうか。
日本企業の停滞の原因は様々あると思うが、こういう内向き思考が蔓延ったことも大きな要因だろうと思う。
企業文化を変えるのは本当に難しい。
とにかく日本人はリスクを嫌う傾向がある。特に子会社の社員はその置かれた状況から、リターンを求め大きなリスクを張ることはあり得ない。
とにかく「言われたことを一生懸命黙々とやる」ということが根付き過ぎていて、もはや「思考停止」としか言いようがない。
改革をするには、やはり最初はトップダウンだ。
もし頭が腐っていたら、いくら改革をしようにもどうにも進まないはずだ。
昼間から仕事もせずにスポーツクラブに行き、碁会に精を出す役員に変革を求めても無駄だ。
本書でも改革の1年目にまずやるべきことは、「残す人を見極める」と明確に示している。
これは本当にそうだと思う。
名著「ビジョナリーカンパニー」でも「誰をバスに乗せるか?」が最重要であると説いていた。
しかし、これがなかなか出来ない人が多い。
仕組みの上では、取締役は任期1年だし、管理職であればラインを外せばよいだけである。
トップ人事を英断できるのは、社長だけである。
当たり前であるが、スタートはここからなのだと改めて感じた。
改革のメンバーが揃えば、次は社内業務の棚卸。
無駄の排除は当然であるが、自社の保有技術や、強みの再認識が実は大事なポイントだと思う。
さらに社内人材の能力把握が進めば、自然と次の戦略は見えてくるのではないだろうか。
この状況でも、改革に否定的な人たちは出てくるかもしれない。
しかし、改革側の仲間を少しずつでも増やして、心折れずに大義を持って邁進するしかない。
自分たちが「行ける!勝てる!」と信じられれば、人はついてくる。
改革が進んでいくような気がする。
本書内では「アイディア募集で、1件につき100円支給」という施策を何度も行っている旨が紹介されていた。
未来工業でも似たような制度があったが、これは非常に良い取り組みだと思う。
「現金か?」「たった100円か?」など否定的意見を言う人もいるかもしれない。
しかし、仮に5,000件のアイディアが集まっても、経費としては50万円程度。
一人で何件応募してもよくて、100件応募すれば1万円である。
ほんの数行ずつでも言語化し、100件の企画をひねり出すのは、社員の能力UPには有効ではないだろうか。
普段から受け身でしか仕事をしていない会社にとっては、充分な刺激策になるような気がする。(それでも応募しない人は多数いるだろう)
改革はトップから行う必要があるが、上手に仕組みを組み合わせて、末端の現場から自主的に動けるようにしていくのが理想的だ。
それではミドル層は何をするかということであるが、実はミドルの動きこそ重要となる。
年齢的にもフットワークが落ちている年代だと思うが、ここが上下それぞれの情報を、どうやってスムーズに社内流通させるかの手腕にかかっている。
結局、遊んでいる人員がいたのでは会社が機能するはずはない。
誰もが自分の持ち場で、自分の役割でどうやって力を発揮するか。
特別な施策は何もない。愚直に当たり前のことをやるだけなのである。
(2023/5/17)


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