「もしドラ」感想※ネタバレ注意

少し前に話題になった「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」という小説を読む機会がありました。私自身も、野球部のマネージャーではありませんが、一つの組織を束ねていかなければならない役を仰せつかってますので、その立場から見た感想を私なりに書いてみたいと思います。
小説の概要は、新任マネージャーとなったみなみがいきなり「野球部を甲子園に連れて行く」とチーム(組織)の目標設定をして、その目標実現のために様々なことをドラッカーの「マネジメント」を考え方の参考書として実践していき、その成果が甲子園に出場する目標を達成する、といった内容の著書ですが、その中で特に印象に残っていることは、ドラッカーの言うマネージャーに必要不可欠な素質は「真摯さ」であるということです。
真摯さとはなにか。マネージャーに欠けてはいけないそれは、辞書によるところの誠実・正直ではとは少し違うと感じました。ではマネージャーに必要とされる「真摯さ」とはなにか自分なりに考えてみました。
与えられた業務を誠実に正直にこなすことは仕事の対価として給与をもらう立場としては当たり前のことであり、それはマネージャーとして求められる真摯さとは違うのと感じました。
部下や同僚の悩みごとを真剣に聞いて親身に相談に乗ることも少し違う気がします。広義には「真摯さ」に入るのかも知れませんが。
「真摯さ」ということ形容詞だけではなく「真摯に向き合う」という動詞として考えてみると、物事に真摯に向きあうこととは、好きなことには興味を持って理解し、深堀し、吸収しようとする。逆説的に考えると、嫌なことや苦手なことには興味を持たとうとしない。理解しようとしないし深堀しようともしない。もちろん、吸収しようともしない。これが「真摯に向き合う」の逆説だと思います。
仕事において、好きなことや得意な分野のことには興味を持つが、いやなことや苦手分野には興味を持たない、では真摯に向き合っているとは言えません。時にはやりたくないけどやらなくてはいけないことは私に限らず多くの人にあると思いますが、その事柄についてもその内容の意図を考え、なにを求めているのかを考える必要があります。時間のムダだと感じることもあろうかと思いますが、発信者・発案者の考えも汲み取らなければなりません。
人間関係に関する部分は更に顕著で、好き嫌いは当然人間ならば誰でもあることだけれど、好き嫌いだけの人付き合いをすることは社会人・大人として皆無に等しいです。特にマネージャーとして組織を統括する立場であれば、表面上の感情をあらわにした人付き合いは組織の崩壊を招く恐れがあります。著書の中にもあるが、「誰が正しいかではなく、何が正しいか」を考えなければならないということです。
ドラッガーの著書にこうもあります。「ともに働く者、特に部下に対しては、紳士であるかどうかは2.3週間で分かる。無知や無能、態度の悪さや頼りなさには、寛大たりうる。だが、真摯さの欠如は許さない。決して許さない。彼らはそのような者をマネージャーに選ぶことを許さない」
この意味とは、どんなに苦手なタイプの人間が同じ職場にいようとも、決してその人が正しいか正しくないかを決めるのではなく、組織としてその人の強みを生かし弱みを中和させ、なにが正しいかを常に考える必要があることだと思います。
真摯さとは「成果をあげるためになにが正しいかを考え、組織と個人の強みを発揮させて弱みを中和させ、成果が最大ではなく最適になるようにあらゆる事柄に向き合う姿勢」ではないかと自分なりに感じました。その真摯さがあって初めて、組織のあるべき姿へ向かっていくためのあらゆる方策を講じることが出来るのではないでしょうか。真摯さがなければ、ドラッガーの言う通り何を言っても何をやっても周りの人達が同調してくれないし、聞き耳も持ってくれない。そもそも組織を統括するマネージャーとして認めないのはずです。
この「真摯さ」については、これからの私自身の課題であり、永遠のテーマであると思っています。今までは仕事ができて愛想がよくて誰からも好かれるような人物=マネージャーの素質があると思っていましたが、そうではないと気付きました。
一つの組織を統括する者として、ともに働く人達と会社あるいは組織の設定した目標の達成のために舵を取り、一緒に働く人全員の仕事に責任を持たせ、各々の仕事の成果が最適になるような仕組みを作り上げていくことがマネージャー=マネージメントする者に求められています。
このことを忘れずに、常に「真摯さ」を持って仕事やあらゆる事柄に対して向き合っていきたい、そう思う次第です。ありがとうございました。                                                                                                                                



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