見出し画像

マクドナルドVSケンタッキー、緊急事態宣言時の需要を2年分析した結果

このnoteでは、2020年、2021年と2年続けて緊急事態宣言となったゴールデンウィークのデリバリーとデリバリー以外(テイクアウト、店内、ドライブスルー)の需要を可視化します。1年以上に渡って断続的に発動されてきた宣言の影響で外食の需要はどの様に変わったでしょうか?

マーケティング戦略意思決定に有用な分析をご紹介し、その分析方法を共有するオンライン研修もご紹介させていただきます。

【更新情報2024年5月26日】

「その決定に根拠はありますか?」

確率思考でビジネスの成果を確実化するエビデンス・ベースド・マーケティング

戦略を導く為の「エビデンスの作り方」をテーマに、これまで体系化してきたノウハウを紹介したマーケティング・インテリジェンスの書籍を出版致しました。5問の調査でTVCM(施策)→コンビニで商品を見た(要因)→売上がいくら増えたか?→年間16.67億円(効果)の様に経路ごとに構造的に効果を把握する国際特許(PCT)を出願した分析法など、確率モデルや因果推論をプロジェクトで実際に活用している方法を特典の動画講義も活用して実装レベルの知識まで提供しています。

自己紹介

(株)秤の小川と申します。日本を代表するマーケター森岡毅氏と氏が率いるマーケティング精鋭集団の「刀」社に触発されて、2019年に「秤」という会社を作りました。

マーケターは主に企業や団体が扱う商品やサービスなど、どんな価値をどうやって届けるか?仕組みを考えます。戦略を検討する際、統計や因果推論、確率モデルなどの分析を使って検証することで確かな意思決定ができる様になります。そうした知識を「秤」として浸透させる支援を行っています。個人向けにオンライン研修を開催したり、企業向けにも研修を軸にしたコンサルティングや戦略策定アドバイザーなど、複数の企業を支援しています。

確率モデルで需要を構造的に把握

「最後にいつ、〇〇しましたか?(ここでは食べたか?)」というアンケートから購買回数の分布を把握できる「ガンマ・ポアソン・リーセンシー・モデル」という分析があります。森岡毅氏と今西聖貴氏の共著「確率思考の戦略論」で紹介されたものです。

USJが競合の東京ディズニーランドの来場数を推計する方法としても使われていたものです。競合比較で自社の顧客の状態を把握できます。

この方法でマクドナルドとケンタッキーの2020年と2021年のGWの需要を見ていきます。2020年は5月7日から、2021年は5月6日からツイッターで調査しました。推定する期間は調査日からさかのぼって10日間です。

各年代ごとに購買分布を把握

以下は「確率思考の戦略論」で紹介されていた消費者の購買回数の分布をつかさどる数式です。

NBDモデル

これは、左辺のPrを求めるものです。Prは回数別の市場浸透率です。一定期間(ここでは10日間)において、0回、1回、2回・・・、それぞれの回数買った人(ここでは食べた人)が何パーセントかという割合です。

これを求める右辺の式の鍵は、MKという2つの係数です。は、自社ブランドを全ての消費者が選択した延べ回数を消費者の頭数で割ったものです。たとえば、AKB48のCDが1年間に1,000万枚売れた場合、(人口が1億人として)1,000万÷1億なので0.1です。Kは分布の形を決めるものです。

Twitterで調査

Twitterのアンケート機能と年代性別ターゲティング広告を使って10代~40代男女で調査しました。設問は2種類です。1種類めはデリバリーでの利用です。もう1種類はデリバリー以外での利用です。

以下は2021年の30代男性のマクドナルドのデリバリー以外の調査です。

Excelの計算ツールのソルバーで予測値と実績値(アンケート結果)の誤差を最小化するMKそれぞれの値を求めます。

ソルバー


MKが分かれば

Pr(回数別の市場浸透率)を元に、各性別年代のMと総購買回数。1回以上食べた人の人数で割った平均購買回数を整理できます。

まずはマクドナルドのデリバリー以外で2021年と2020年を比較してみます。

2年比較 マクドナルドデリバリー以外

購買回数と人数ともに2021年になって増えています。特に男性20~40代が増えています。

続いてケンタッキーのデリバリー以外です。

2年比較 ケンタッキーデリバリー以外

こちらは減っています。特に男性20~40代が顕著に減っているようです。

続いてマクドナルドのデリバリーです。

2年比較 マクドナルドデリバリー

こちらも減っています。特に男性20~30代の購買人数が減っています。30代の男性は購買回数も顕著に減っている様です。

最後にケンタッキーのデリバリーです。

2年比較 ケンタッキーデリバリー

かなり減っています。購買回数は2020年の半分強です。特に40代男性(私も)と女性が減っています。昨年のGWには「家で映画でも見ながらケンタッキー」訴求のTVCMを見た記憶があります。初の緊急事態宣言で、プチ贅沢としてケンタッキーを楽しむ人が増えた特需だったのでしょうか?

まずは、昨年比較でサクっと見ていきました。



確率モデル活用の醍醐味、カテゴリーのマーケットサイズから伸び代を把握

「あなたは最後にいつ、飲食店の料理をデリバリーしましたか?」と聞くことで、カテゴリー(デリバリーとデリバリー以外)の購買行動の回数を把握することができます。

森岡氏がUSJに着任してからのV字回復の足掛かりとなったハロウィーン・ホラー・ナイトは、ガンマ・ポアソン・リーセンシー・モデルでハロウィーンの時期の集客を前年7万人から2倍以上に伸ばせると予測し、そこに注力する戦略による施策でした。(実際は40万人の集客となったそうです)


どういった質問をしたかまでは書籍に記載はありませんでしたが、おそらく最後にいつテーマパークに行ったか?などカテゴリーを把握する質問を行い、月次などで分析したことで、ハロウィーン時期を2倍に伸ばせると判断されたのだと思います。「最後にいつ〇〇したか?」を「いつ聞くか」によって回答結果が変わるため、月次など一定期間ごとに需要の違いを把握することができるのがこの調査の醍醐味です。


2021年のGWの調査では、①②のカテゴリー調査も行いました。

①飲食店の料理をデリバリー以外(テイクアウト、店内、ドライブスルー)で最後にいつ食べたか?
②飲食店の料理をデリバリーで最後にいつ食べたか?


カテゴリーの購買回数に対してのブランド購買回数のシェアを年代性別ごとに見ていきます。市場の中における自社ブランドや競合ブランドの位置付けを構造的に把握することができ、伸びしろや課題をみつけることができます。

デリバリーとデリバリー以外のカテゴリに対して、マクドナルドのブランドがどれだけのシェアがあるか?見ていきます。

まずは、デリバリー以外です。

カテゴリ比較 MACデリバリー以外

カテゴリー(デリバリー以外)の購買回数が男女ともに年齢が上がるにつれて増加しています。40代男性が突出しています。「大人を楽しもう」というコピーが印象的なサムライマックのTVCMは、こうした需要を狙っているのかもしれません。


続いて、デリバリーです。

カテゴリ比較 MACデリバリー

対象年代全体のシェアが4割!?一瞬目を疑いました。男性13~19歳は72.9%、13~19歳女性は60.45%ものシェアとなっています。10代男女にとっての飲食店のデリバリー=マクドナルドといっても過言ではない位の数字です。

カテゴリーの回数の合計は4,051万回強で、デリバリー以外の18%程度ですが、今後も、のびる需要だと思います。20代女性のカテゴリ回数が849万回と突出しています。ここは伸びしろかもしれません。

マクドナルドのデリバリーのCMは、男性を奮い立たせるようなサムライマックのTVCMとは違って、大学生の女性を中心に4人家族の食卓を描いた、ほんわかした雰囲気のクリエイティブになっています。


マーケットサイズとブランドのシェアを競合比較で把握して戦略を導く

ここではマクドナルドの分析例を紹介しましたが、ケンタッキーでも同じ様に年代性別ごとのカテゴリーに対するブランドの購買回数のシェアを分析することができます。

「あなたは最後にいつ○○しましたか?」と聞くだけでここまで分かります。

毎月、月初に調査をかけて前月の需要をカテゴリーとブランド(自社と競合、年代性別ごと)で把握することをおすすめしています。マーケットサイズとブランドのシェアを競合比較で月次で見ていくことで、競合との相対比較で自社ブランドが、どのターゲット年代に購買されているか?強みと弱みを明確に把握することができます。分析結果から、どこに注力すべきか?戦略を導くことができるはずです。

ここで紹介したマクドナルドとケンタッキーの例や、追加で調べたレッドブルとモンスターエナジーの調査の実例データを使った演習で分析法を習得することができるオンライン研修も開催しております。

データを元にロジカルにマーケティング戦略を描く方法を学んでみませんか?ご興味頂ける方はぜひ、以下のリンクから講義内容の詳細をご覧いただけますと幸いです。

マーケターの意思決定に有用な統計や因果推論の知識と分析を学ぶことができる、Excelでできるデータドリブン・マーケティングという書籍を出版しました。同書でメインテーマとした効果検証ノウハウを共有する研修も開催しています。

お問い合わせは、以下の弊社HPからお気軽にご連絡ください。

【更新情報2024年5月26日】

「その決定に根拠はありますか?」

確率思考でビジネスの成果を確実化するエビデンス・ベースド・マーケティング

戦略を導く為の「エビデンスの作り方」をテーマに、これまで体系化してきたノウハウを紹介したマーケティング・インテリジェンスの書籍を出版致しました。5問の調査でTVCM(施策)→コンビニで商品を見た(要因)→売上がいくら増えたか?→年間16.67億円(効果)の様に経路ごとに構造的に効果を把握する国際特許(PCT)を出願した分析法など、確率モデルや因果推論をプロジェクトで実際に活用している方法を特典の動画講義も活用して実装レベルの知識まで提供しています。