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「マーケターのように生きろ」を読んで、求められる自分の価値を考えた。

(株)秤の小川と申します。数学マーケター森岡毅氏と氏が率いるマーケティング精鋭集団の「刀」社にあこがれて、2019年に「秤」という会社を作りました。


イベント会社、広告会社、PR会社、デジタルマーケティングコンサルティング会社と、事業会社を支援する立場でマーケティングに20年近く携わり、8年位前から戦略策定のための調査と分析に特化してきました。

マーケターは主に企業や団体が扱う商品やサービスなど、どんな価値をどうやって届けるか?仕組みを考えます。実務として関わる方が多いのは広告やPRなどのコミュニケーション領域です。統計や因果推論、確率モデルなどの分析を使って検証することで確かな意思決定ができます。そうした知識を「秤」として浸透させたいのですが、今はマーケターの常識にはなっていません。

浸透を目指して、個人向けに月数回オンライン研修を開催しています。企業向けには研修と調査分析を併用した戦略策定やアドバイザーなど、複数の企業を支援しています。コンサルティングから実行支援まで行ってきた経験を生かして、経営者やCMO、経営企画などのアドバイザーとしてコミュニケーションやサービスデザインの戦略意思決定のサポートや分析ノウハウの共有を行っています。

20年近くマーケティングに関わり、8年前からは戦略意思決定に役立つ分析の知識を浸透させたいという想いで活動してきました。しかし、その想いが強いが故に、相手を起点に考え、求められる価値を提供するマーケティングの本質を見失いかけていました。支援では、クライアントの顧客を起点に考えていますが、自分が提供する価値のマーケティングでは、大事なものを見失いかけていたのです。

それに気づかせてくれた書籍が「マーケターのように生きろ」(「あなたが必要だ」と言われ続ける人の思考と行動」)です。

著者は井上大輔氏です。ニュージーランド航空、ユニリーバ、アウディ、ヤフー、現ソフトバンクとマーケティングの一線で活躍されています。

どんな書籍なのか?Amazonの書籍紹介ページから概要を参照します。

「何者でもない自分」が最強の武器になる生き方
「個」の時代だと言われます。在宅勤務が急速に普及し、副業も一段とやりやすくなりました。インターネット経由で単発の仕事を請け負う「ギグワーク」も一般的になってきました。こうして働き方が多様になるのは、働き手にとってはいいことのようにも思われますが、見方によってはとても過酷なことだとも言えます。頭抜けて優秀なフリーランスに、事務や営業の仕事までを外注するのが一般的になったら、多くの人が会社での居場所を失ってしまうでしょう。(中略)

そうだとすると、「表現できる自分」なんて持っていない人は、どうすればいいのでしょうか?そもそも自分を表現するなんて性に合わないという人は?あるいは、そうしたくても才能がないと自覚していたり、1度は挑戦してむなしくも挫折した人は?そういった人たちは、誰も際立った「個」を持つことはできないのでしょうか?

それは違います。 そんな人には、「相手をよく知り、その期待に応える」という生き方があります。 自分を表現するのではなく、人の期待に応えることを追求するのです。そのために、まずは相手をよく知り、相手が何を求めているかに思いをめぐらせます。そして、自分にできる精一杯でそれに応えます。 この本では、そんな生き方を「マーケターのように生きる」と呼んでいます。マーケティングとは、そうして「常に相手からスタートする」という考え方を体現したものだからです。(「はじめに」より抜粋)

この書籍はマーケティングを自らの生き方に適用する、相手を起点に考えて、自分の価値を見定めて「求められる人」になるための手引きです。

マーケティングの専門的な話もありますが、そう感じさせない書き方なので万人に読みやすい内容です。マーケターの視点で深く読み解いても共感できる内容です。

Amazon参照引用

著者からのメッセージ
自分に特別な才能がないことは自覚しています。 もしあったとしたら、あの「暗黒時代」はなかったはずです。 私が「人から必要としてもらえる」ようになったのは、 そんな暗黒時代から現在に至る20年で体得した、 「生きる知恵」としてのマーケティングのおかげです。 私はマーケティングを理解することを通じて、 仕事の幅を大きく広げることができました。 そして、キャリアプランを見直すこともできました。 のみならず、それを生き方のレベルにまで広げることで、 個人としての情報発信や趣味も充実させることができました。 本書ではそんな「生きる知恵」としてのマーケティングを、余すところなくお伝えします。

氏は特別な才能はないと自覚されています。生きる知恵としてのマーケティングに救われたともあります。書籍だけでなく寄稿などの執筆や講演なども多数の井上氏をはたから見ると才能のある方にしか見えないのですが、書籍を読むと、客観的に自身を捉えた上でマーケターとして人一倍、相手が何を求めているかを考えて来られた方であることが分かります。

初めて私が氏をマーケターのバンドイベントでお見かけした際は、相手起点で考えられた氏のパフォーマンスで会場は大盛り上がりでした。(書籍にそのイベントと思われるエピソードも書かれています)

井上氏だけでなく、マーケターにはすごい方が沢山います。挙げればキリがありませんが、たとえば現ファミリーマートCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)の足立光氏です。氏が参加されてから同社は絶好調です。過去のマクドナルドCMOでの業績アップなど逸話は尽きません。昨年から氏の塾に参加して学んでいます。

参考 足立光の無双塾


マーケットインを個人の生き方に適用する

足立氏も著書やインタビューなどでおっしゃっていますが、マーケターにとって顧客理解は重要なテーマです。

マーケターは顧客に耳を傾け、ときに自分の中に別の人格を作るようなイメージで、自分とは特性の違う様々な消費者の思考や行動を想像しながら戦略を考えます。自分たちが作りたい商品やサービスを起点にするのではなく、市場を起点に求められる価値を徹底的に考える。マーケットインで個人の価値を考え、生き方に適用するのがマーケターのように生きるの要点です。

マーケティング用語で市場や顧客を起点に求められる商品やサービスなどの価値を創造することをマーケットインと言い、対義語としてプロダクトアウトという言葉もあります。プロダクトアウトは作り手が作りたい商品やサービスを作るものです。

私は8年前、広告会社の電通ダイレクトフォース社(現電通ダイレクト社)で働いていた時に統計モデルでTVCMやインターネット広告などの施策それぞれによって売上がいくら増えていたかを定量化して把握する方法を知り、衝撃を受けました。その分析を全てのマーケティング組織の常識にしたいと思いました。

価値の届け方

分析を習得するために勉強して、ノウハウを体系化していきました。2018年12月にPR会社カーツメディアワークス社でデジタルマーケティングを担当していた際に、統計モデルによる効果検証や因果推論の知識をまとめた「Excelでできるデータドリブン・マーケティング」を出版しました。

同社執筆で2021年7月15日に発売される「図解デジタルマーケティング・ハンドブック」では、著者の石黒氏からお声がけ頂き、効果検証に関するインタビューで執筆に参加しました。

ビジネスの為にSNSでの発信を模索されている方も多いと思います。私は書籍の販促のために2019年からnoteを書きはじめ、休眠状態だったTwitterを再開しました。

はじめて多くの反響があったnoteがこちらです。

マーケティング意思決定に有用だが、あまり知られていない因果推論の知識(交絡因子、準実験など)を紹介しました。小難しい言葉から苦手意識をもたれない様に、TBSの水曜日のダウンタウンの○○説のタイトル画像をnoteのキービジュアルにする演出をしました。金曜日の夕方に公開しましたが、週末にかけてTwitterとnoteの通知がひっきり無しでした。

○○説の面白おかしい雰囲気で中和していますが、このnoteの切り口はマーケターの効果検証の間違えを指摘するもので、

みなさんが行っている効果検証は間違っているかもしれません!

というものです。面白おかしく演出せずにこのメッセージをそのまま伝えていたら、ただのマウンティングです。


もっとも重要な価値を決める

確かな効果検証を行うことで得られる価値をどうやってマーケターや経営者に届けるか?その届け方について、最近弊社にお問い合わせいただいた企業のマーケティング課題の議論をしていた時に、ヒントを得ることができました。

問い合わせの入り口は、森岡毅氏の分析を活用したいというものでした。氏は確率モデルなどの数学手法を駆使してUSJや丸亀製麺、西武園ゆうえんちなど、多くの企業の戦略に関わり、事業を成長させているマーケターです。著書も多数ですが、私が最も活用させて頂いている書籍が「確率思考の戦略論」です。

この書籍で紹介された需要予測の分析が魔法の様に便利です。活用法を紹介するnoteをいくつか書いてきました。最近は丸亀製麺をテーマに書きました。

2017年から低迷を続けていた同社は、氏が率いる刀社とのパートナーシップによって「すべての店で粉から作る」価値の訴求に注力し、2019年春から客数を増やしていきました。

私がご相談頂いたマーケティング課題に話を戻します。

議論を進めると、そのブランドの本質的な課題は、丸亀製麺における「すべての店で粉から作る」というもっとも重要な価値を、

そのブランドでは何にするかを決めることだと分かりました。その価値をコミュニケーションの軸として中長期で事業をスケールさせる目的です。

確率思考の戦略論では、USJで初年度200万人の集客を見込んでハリーポッター・エリア450億円の投資に踏み切った際、集客を達成するプロセスの一つとしてハリーポッター訴求のあるなしでTVCMのABテストを行ったことが書かれていました。

もっとも重要な価値を決めるには、調査だけでなく、全国展開の前に地方でTVCMを放映してテストを行うなど、消費者に実際にコミュニケーションして因果効果を推定する必要があります。調査で買うと言った方が実際に買うとは限らず、誤差があるからです。

効果検証というと、短期的な広告や販促の因果効果の推定と考えがちですが、

中長期視点で、もっとも重要なブランドの価値を見定めるためにも有用です。

効果検証ノウハウという価値の提案例

以前書いた○○説のnoteの切り口はマウンティングになりかねないものでした。

みなさんが行っている効果検証は間違っているかもしれません!


↑これを改め、


丸亀製麺を復活させた「全ての店で粉から作る」のように、もっとも重要な価値を決めて中長期でブランドを成長させませんか?

↑こうすれば、相手(マーケターや経営者)の目線に立った価値の提案にできているかもしれません。

あとは、この提案に実際に価値を感じて頂ける方がどれだけいるかが重要です。TVCMなど潤沢なマーケティング予算がある企業でも、確かな検証から、ブランドのもっとも重要な価値を捉えていないマーケターや経営者はいるかもしれませんが、それを課題と感じているか?課題と感じていて、この提案によって解決したいと思って頂く、または解決できるかもしれないと期待して頂ける方がいらっしゃることが重要です。それが分かれば、この提案には価値があると判断することができます。

アンケート調査を行わなくても、このnoteの反響からニーズがあるかを推し量ることが出来るかもしれません。

個人に置き換えた場合

例えばTwitterでは、いいね!やコメント、リツイートなどの反応は投稿内容によって変わります。

このnoteもそうですが、自分で仮説した価値をコンテンツにしてSNSで発信してみて、その反応からヒントを得ることができます。

私はnoteを書いてTwitterで紹介することを2年半行ってきましたが、全く反応がないことも。。。悲しいですがそれもヒントです。そうしたヒントから、自分が提供する価値を見定めていくことが重要です。

マーケターのように生きろ

井上氏のSNSで知りましたが、増刷数回に加え、マーケターのように生きろは、台湾と韓国での販売も決まったそうです。多くの人々にその価値が求められている証だと思います。

万人向けの書籍ですが、氏が特にオススメしているのは、自分の夢や使命などよくわからないけど、模索を試みている方や挫折を経験したことがある方です。

私も当てはまります。今はマーケティング戦略を決める分析で仕事をしていますが、高校数学すらまともに勉強していなかったので分析を学ぶのに役立つ数学の素養はゼロでした。書籍を出して今に至るまで、模索と挫折の繰り返しでした。

人生、苦があれば楽ありです。これからも悩んだり迷ったりすることはあると思いますが、マーケターのように生きろを読んだことで、そうなった時に何を一番大事にするのか?指針が出来ました。相手目線で考え、自分が提供する価値によって創られる幸せの総量を最大化することです。

私にできることは、確かな意思決定ができる分析を使いこなすマーケターを増やすことです。分析ノウハウを習得したマーケターが生み出す価値、幸せの総量の最大化をサポートしたいと思います。

2020年春から、個人と企業向けのオンライン研修で1年強でのべ1,000人以上に講義をさせて頂き、現場のマーケターが置かれている状況や、データ分析の課題を聞くこともできました。そうしたヒントから改めて相手(マーケターや経営者)起点で価値の届け方を考え、幸せの総量を増やしていきたいと思います。

戦略とは、何にリソースを注ぐのかを決めることです。日々活動する時間、思考する時間、金銭や人脈など、リソースには上限があります。何かを選ぶ際は何かを捨てる必要があります。戦略的な人は何を選び、何を捨てるかを明確に決めることができる人だと思います。私は、自分が提供する価値によって創られる幸せの総量を指針として、今後何を選び、何を捨てるかを選択していきます。

セルフブランディングとして、際立った個性やカリスマ性を背伸びしてまで考える必要はないと思います。際立った才能や能力なんて自覚できない多くのみなさん(私も)が活躍する道筋を考えるためのヒントを得ることができると思います。「マーケターのように生きろ」オススメさせて頂きます!


告知 ※適宜更新

データサイエンスとインサイト発掘などの顧客理解、双方に見識のある(株)JX通信社の松本健太郎さんと毎月開催している消費者理解をテーマにしたマーケター向けの夜会的な無料イベント「消費者理会」です。7月27日火曜日20時〜21時のゲストは井上大輔さんです。お時間合う方はぜひご検討くださいませ!

【イベント告知用note】

続いては、研修プラットフォームのストアカで1年以上続けているマーケター向け研修のご紹介です。(こちらは有料です)マーケティングの意思決定をサイエンスによって確かなものとする手法を共有しています。

確率思考の戦略論で紹介されていた需要予測の分析と、Excelでできるデータドリブン・マーケティングで体系化した統計モデルによる効果検証や因果推論を使うことで、どんな意思決定に活かすことができるのか?ご理解頂けます。分析の専門家でなくてもExcelを使える方であれば習得できる内容です。

ここからは、確かな戦略を描くことができる組織作りをサポートする方法についてです。

もっとも重要な価値を決めるのに必要なプロセスとは?

前述の議論を経て、マーケティング課題を相談頂いたブランドの皆さんとの、もっとも重要な価値を決める取り組みがはじまります。どうやって決めていくのが良いでしょうか?

たとえばTVCMのクリエイティブAのROIは120%。過去のBは110%、Cは130%など、過去行った施策の全てにおいて因果効果を定量化して捉えておけば決めやすくなります。

ROI(Return On Investment/リターン・オン・インベストメント)は利益額÷投資額のことです。投資金額に対していくら利益があったかという指標です。

実際にはそこまで単純ではありませんが、ゴールを明確にして、関係者で最低限把握しておくべき分析の知識を共有して取り組むことで、現実的な取り組みが出来ると考えています。

マネジメントから現場まで、データ分析の基礎リテラシーが浸透し、データによる意思決定が定着している企業として、数年かけてデータ分析の教育プログラムを構築して定着させたワークマン社があります。

参考note

同社の様に数年かけてデータ教育にコミットする経営判断には相当な覚悟が必要だと思います。

弊社では企業のマーケティング戦略を決めるための調査分析を初回プロジェクトのスコープとして、それを題材にした研修を取り入れながら、データドリブンなマーケティング組織を作る道筋を描く支援をしています。

弊社はブランドの成長まではお約束をすることはできません。しかし、的確な検証のプロセスを共有し、意思決定の精度を高めることはお約束ができます。この価値にご興味を頂けるマーケターや経営者の方はぜひご連絡頂けますと幸いです。

以上となります。ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました!


2023年4月14日更新

確率思考の戦略論で紹介されたプレファレンスを最適化するダッシュボードを紹介します。