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カップヌードルでブランドリスニング&「消費者理会」イベント告知note

株式会社秤の小川と申します。10年以上の総合広告代理店での経験とデジタルマーケティングコンサル会社やPR会社でのコンサルティング経験を経て、2018年にマーケターに有用な効果検証法マーケティング・ミックス・モデリングをメインテーマとして統計や因果推論の知識をまとめた「Excelでできるデータドリブン・マーケティング」を出版、2019年12月に法人を設立し、今は業務委託で複数の役割で活動している複業マーケターです。

このnoteでは、JX通信社が提供する、SNSのデータ収集ツールのFASTALEART(ファストアラート)のマーケティングでの活用について紹介します。noteの最後には尊敬するマーケターのおふたり(ニューバランスジャパンの鈴木氏とJX通信社の松本氏)との無料オンラインイベント「夜会」の告知をさせて頂きます。

JX通信社とは

「テクノロジーで『今起きていること』を明らかにする報道機関」を目指す報道ベンチャーです。同社が提供している代表的なサービスを2つ紹介します。

ひとつめは「FASTALERT」(ファストアラート)です。これはAIを用いて自然災害・事件・事故・情報漏洩・SNS炎上・新型ウイルス最新情報など様々なリスク情報を提供するサービスです。

一般消費者の発信の中から災害、事故、事件などの緊急情報を収集し、多くの報道機関や公共機関、企業に配信しています。共同通信のほか、NHK、日本テレビ放送網、テレビ朝日をはじめとする全ての民放キー局と全国の多くの報道機関や当局に緊急情報の配信を行っています。メディア企業に対してテクノロジーを活用した情報基盤を提供することで信頼を得ています。

ふたつめは、「NewsDigest」(ニュースダイジェスト)です。これは、一般消費者が「スマートフォンで最も速くニュースを知る手段」となることを目指して開発されたアプリです。ニュース速報や地震・災害速報のほか、鉄道情報など生活に必要な情報を最も速く伝えるライフライン型のニュースアプリ(無料)です。Google Playベストアプリ2019 生活お役立ち部門賞や、アジアの優れたデジタル報道に贈られる「アジア・デジタルメディア賞2020」の特別賞も受賞しています。

重要なポイントは「NewsDigest」では、速報を探して見つけて、ユーザーに伝えるまでの全てのプロセスがほぼ完全に自動化されているということです。「機械でも、人間の期待に応えられる」ということを体現しています。

参考サイト:JX通信社サービス紹介

ここで紹介した2つのサービスに共通する技術基盤を集約しているのが、同社の基盤ニュースエンジン「XWire」(クロスワイヤ)です。上記2サービスはいずれも「XWire」を活用して開発・運営されています。産経新聞グループの旗艦ニュースアプリ「産経プラス」などの大手媒体でも、バックボーンとして活用されています。主に自然言語処理技術をベースとして、ニュースの編集・配信に関わる業務を人手を挟まずに自動化することを目指したエンジンであり、編集人員の数の抑制、運営コストの低減に貢献しています。

JX通信社が「テクノロジーで『今起きていること』を明らかにする報道機関」を目指す新しいタイプの報道ベンチャーであることについてお分かり頂けましたでしょうか?独自のテクノロジーを活かしたサービスによって、メディアや公共機関などの企業や団体から多くの信頼を得ている企業です。

JX通信社 「FASTALEART マーケティング・アンバサダー」としての私の役割。

私は同社のマーケティング責任者の松本健太郎さんのお声がけから、同社の新たなチャレンジをサポートする役割を担っています。松本さんは龍谷大学法学部卒業後、データサイエンスの重要性を痛感し、多摩大学大学院で統計学・データサイエンスを学び直し、デジタルマーケティングや消費者インサイトの分析業務を中心に、さまざまなデータ分析を担当するほか、日経ビジネスオンライン、ITmedia、週刊東洋経済など各種媒体にAI・データサイエンス・マーケティングに関する記事を執筆しており、テレビ番組の出演も多数あります。noteやTwitterなど、SNSを通じた情報発信も積極的で、noteで活躍しているオピニオンリーダーの知見をシェアする「日経COMEMO」メンバーとしても活躍中です。 『誤解だらけの人工知能』『なぜ「つい買ってしまう」のか』(光文社新書) 『データサイエンス「超」入門』(毎日新聞出版)『グラフをつくる前に読む本』(技術評論社)など著書多数です。テクノロジーとマーケティング双方の理解がある希少なマーケターだと思います。私は6年ほど前に広告会社に在籍していた当時、氏と出会いました。当時、計量経済学の分析モデルをマーケティング施策の効果検証に活用する取り組みを行なっていた氏と協業の機会をいただき、それをきっかけに私はデータサイエンスを学び、冒頭に紹介したマーケティング効果検証の書籍を出すに至りました。私の心の師匠です。

では、松本さんをはじめとしたJX通信社のみなさんとこれから取り組む新しいチャレンジとは何か?それはJX通信社が保有するテクノロジーとツールを活かして、マーケティングにおけるブランドマネジメントやコミュニケーションの意思決定をする方向けに、FASTALEARTの機能をアレンジして提供し、マーケターへの浸透を図ることです。既存からあったソーシャルリスニングに内包される概念としてブランドリスニングという新たな価値をマーケター向けに提供します。炎上監視とも重複します。

炎上監視

ソーシャルリスニングにおいて、(主に自社ブランドにまつわる言及を察知する)炎上監視の視点に加え、そこから得られる消費者の声を自社のマーケティング活動に活かし、ビジネスをスケールさせるヒントを得るものです。

ソーシャルリスニングとは?

ソーシャルリスニングはマーケティングにおけるリサーチ手法の一つで、ソーシャルメディア(SNS)上に投稿された消費者の生の声を収集して分析し、示唆を得ることで、それを自社のマーケティング意思決定に活かすものです。今、SNSはみなさんの生活に浸透しています。浸透する以前は、ネットアンケートモニターなどの消費者パネルや、無作為に抽出した調査対象者に対してヒアリングすることでしか消費者の声を把握する手段はありませんでした。しかし、今は一般の方がネット上に様々な意見を書き込んでいます。それら、ネット上に公開されているビッグデータから特定のテーマを絞り込んで、データを集め、観察または分析することで示唆を得ることができます。SNSの中でも利用者が多く、投稿も(鍵アカを除いて)公開されているTwitterのデータが特に活用されています。FASTALEARTもTwitter社との提携により、報道機関に向けたテーマで情報収集をしていますので、FASTALEARTも、ソーシャルリスニングツールの一つと捉えることもできます。

「カップヌードル」を題材にソーシャルリスニング

ここでは無料ツールで行えるソーシャルリスニング法を紹介します。今回は定番商品として支持され続けているメガブランド、私も大好きカップヌードルをテーマにさせて頂きました。

ここでは私も有料ツールと併用でよく使っている「ついすぽ」を使ってツイートデータの抽出を行います。グーグルクロームのアドインツールです。

ついすぽをグーグルクロームのアドインとしてインストールした後、Twitter以外のページでChrome開発者ツールを開いてから、(「F12」キーを押すと開きます)
Twitterの検索ページに移動し、興味のあるキーワード(ここでは「カップヌードル」)で検索を行ってからダウンロードしたい分だけスクロールを続けて、好きなタイミングで「Download」と書かれたボタンをクリックすることで、それまでに読み込まれたツイートがCSVでダウンロードできます。

私は、自動スクロールというアドインを併用してデータを抽出しています。

さっそく、ツイッターの画面で「カップヌードル」で検索します。デフォルトでは「話題のツイート」という検索結果となりますが、これはツイッターが独自のアルゴリズムで選択したツイートを表示するものなので、「最新」というタブで検索時点での最新のツイートから上位表示して、アドインを使って自動スクロールさせます。

4月10日(土)の17時から抽出しました。矢印の先にある緑色の円に白い矢印にマウスオンすると自動スクロールしてくれます。(キャプチャは途中段階です)

スクロールで抽出

1時間弱自動スクロールを行うことで、4月3日位までさかのぼって9,725件のツイートが抽出できました。さすが「カップヌードル」抽出できるツイートの量が予想以上でした。

ついすぽでは当該ツイートの投稿日時、ツイートのテキスト、リプライ数、RT数、いいね数、引用数、ユーザー名と名前、ユーザーの自己紹介テキストとフォロー数、フォロワー数、過去のツイート数やアカウント作成日時までCSVで吐き出すことができます。

テキスト抽出

「カップヌードル」のソーシャルリスニングで把握したいのは消費者の声です。公式アカウントやアフィリエイトっぽいアカウントなどのノイズを除去した純粋な言及に絞ることが理想です。ここでは簡易的なクリーニングとしてテキスト数の列からエクセルの「重複の削除」で同じ「テキスト(ツイートの言及)」を削除、そして次にフォロワー数を1万以上のツイートを削除しました。

ここで行った方法はざっくりしたやり方です。本格的な分析の際、リソースをかける場合は「ツイート」の内容を視認して企業アカウントやアフィリエイトアカウントのような言及(同じ内容を何度もつぶやく)などを丁寧に削除していく場合もあります。

残ったツイート数は9,133件です。ここからテキストマイニングをかけていきます。私が主に使うのは高機能なマイニングが行える「KH Corder」というフリーソフトウェアです。様々な分析が行えます。

その機能の中でも、特に感覚的に語句の関係をつかみやすい「共起ネットワーク」という分析を紹介します。共起ネットワークとは一つ一つの文書で出現する単語「抽出語」のうち「距離」が近いか遠いかを計算し、図示するものです。

その手法で、「時間帯ごと」の言及のされ方の違いをつかんでみます。前処理としてExcelの「HOUR関数」を使って投稿時間の値を導き、6時~11時、12時~17時、18時~23時、0時~5時までの4つの時間帯のフラグを作ります。

OUR関数

まずは時間帯ごとの傾向を考慮せず、KH Corderのデフォルトの設定で共起ネットワークの分析を行ってみます。

多次元尺度構成法 1回目

この時期には4月7日(水)20時1分の配信で、FNNプライムオンラインからの掲載でYahoo!ニュースで、カップヌードルの残り汁を固める商品についての記事があり、それについての言及が多いことが分かります。

この分析結果だと、大枠の傾向しかつかめません。抽出語句の精度をあげるため、KH Corderと連携して使用できる専門用語(キーワード)自動抽出Pythonモジュールのtermextractを使って、複合語を抽出します。

termextractでは、複合語からなる専門用語を抽出します。用語は重要度(スコア)でランキングされます。ここでは6,000語を超える複合後が抽出されましたが、重要度のスコアが低い語句は、ノイズと思われるものも多いため、ここではスコアの値が高い上位1,000語を複合後として設定しました。

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複合語を追加したうえで、共起ネットワークの抽出条件を調整します。デフォルトとして選択された語句の頻度、最小出現数を150から30に変更し、関係が強い上位の語句の数の指定を上位60から100まで増やして分析を行うと下記のような結果が出てきます。

抽出後2回目

KH Corderでは上記のアウトプットのうち、気になる単語をクリックすると対応するテキスト(ここではツイート)が出てくるため、それを見て、ツイートの内容を把握していきます。

次に「外部変数」という機能を使って、さきほど作った4つの時間帯というフラグデータを外部変数とした共起ネットワークを行いました。

多次元尺度構成法 2回目 (時間帯)分析

Dgree1というオレンジ色の語句は4つの時間帯の各々と結びつきが深い語句、Dgree2はいずれか2つの時間帯との結びつき、Dgree3は3つの時間帯との結びつきが強い語句、Dgree4はすべての時間帯に共通する語句として分類されています。

例えば、18時~23時は「@Youtube」「作る」との結びつきが強く、12時~17時は「カレー」「麺」「普通」との結びつきが強いことが分かります。夕方から夜にかけての時間はYoutubeでも見ながら、カップヌードルを作る方、昼は「カレー」のカップヌードルを食べている方が多いのでしょうか?あとはざっくりと分類してくれた語句をヒントにそれぞれの語句に対応するテキスト(ツイート)の中身をKH Corder上で見ていきながら、仮説を探索していきます。

今回は作業時間の関係で1週間程度しかツイートを吐き出しませんでしたが、1年を超える期間のツイートで分析する際は、「春(3月~5月)」「夏(6月~8月」「秋(9月~11月)」「冬(12月~2月)」というフラグを作り、それを外部変数として分析しています。それぞれの季節と結びつきが強い語句を分類してシーズナリティのニーズを探索できます。これはあくまで抽出したツイートのテキストマイニング法の一例ですが、ぜひ、みなさんが関わるブランドのソーシャルリスニングで活用していただきたいです。KH Corderで行う共起ネットワークの詳しい操作方法は下記の記事に詳しいのでぜひ参考にしていただければと思います。

一方で、高機能な「KH Corder」でも、語句を分析するための前処理には、けっこうな時間がかかることも事実です。前処理の時間をショートカットしていただく方法もご紹介したいと思います。

FASTALEARTによる「ブランドリスニング」とは?

テクノロジーを生かして、JX通信社がマーケター向けにFASTALEARTで提供する価値はシンプルです。それはユーザー(マーケター)の興味がある1テーマ(ブランド)に分析対象を絞り込み、そのテーマでのツイートの抽出と、さらに分類までを機械学習によって行い、人間が行うと膨大なリソースがかかる前処理を効率化し、ブランドの消費者の動向や仮説のタネをいち早くキャッチすることをサポートします。速報性のあるニュースを収集するテクノロジーを保有するJX通信社ならではの提供価値だと思います。ブランドリスニングに特化し、それに必要な機能に特化して提供価格を抑えたソーシャルリスニングサービスです。

以下のフィルタ項目で当該ブランド(ここでは「カップヌードル」)に対する言及を機械学習で分類、タグ付けしてくれるので、そこから分類してツイートを見ていくことで、マーケターは自身が興味をもつブランドのツイートの内容を素早くキャッチアップすることができます。

フィルタ

たとえば「商品やサービスに関する要望」(4月10日20時時点)でピックアップされたものは以下です。

商品に対する要望

フィルタ条件を「他社比較」とした場合は以下です。

他社比較

※いずれも一部のツイートが表示されている管理画面のキャプチャです。

KH Corderで行ったような分析はツイッター上の消費者の声とじっくりと向き合いヒントを得るために、リソースをかけて分析できる際には非常に有用な手段です。

一方で、日々、ブランドのグロースのためにスピーディな意思決定が求められるマーケターにとっては、最新の動向をいち早く、無理のない作業時間でキャッチアップするスピード感も必要です。FASTALEARTが提供するのは、そうしたマーケターの日々の業務における意思決定や仮説発見のスピーディなアシストです。「仮説のタネ(定性的なヒント)」をツイートからいち早く発見するための武器となるものです。

詳しくはサービスサイト(以下リンク)をご覧ください。


2023年4月14日更新

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