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耳コピを諦める

多くの人にとって耳コピは諦める必要があります。

耳コピは好きな楽曲のコードやメロディを取ることができる、とても便利なスキルです。

音感トレーニングを行う上で、ひとつ目標となる耳コピですが、基本的には手順やコツを学んで出来るようになるものではありません。

耳コピは、すでに音感を持っている人が、楽曲をコピーするために使える〈手段〉のひとつであり、音感がない人の音感を良くするための〈練習方法〉ではないからです。

多くの教材や耳コピのハウツー記事で解説されているのは、実は「音感がある人が、より効率的に耳コピする方法」です。そのため、音感がない人がコツや手順を学んでも、耳コピを習得するのは難しいでしょう。

例えば、耳コピをした結果得られるものを、大学に入ることだと考えてみましょう。耳コピをした結果得られるものは曲の演奏や分析、譜面の作成です。それを得るために耳コピという〈手段〉を使う、ということは、大学受験で言うと実際に試験を受けるようなものです。

耳コピができない人が〈練習方法〉として耳コピをするのは、「授業も受けず、参考書も買わずに3年間赤本だけやってきました」という状態です。

基礎がない状態で赤本だけやっていても、受験に合格することはできないでしょう。それと同様に、できない耳コピを続けたとしても、耳コピができるようになることも、耳コピで正確な演奏や分析などを得ることもできないでしょう。

元からものすごく優秀で、赤本だけをやって合格できるようになる人も稀にいます。ただ、そうでないのであれば、まず授業を受けなければいけないし、本屋に行って参考書を買ってこなければいけません。

ギタリストやベーシストにとってはあまり馴染みがありませんが、耳コピにも「授業」と「参考書」が存在します。

耳コピにとっての授業、参考書とは「ソルフェージュ」のことです。

「ソルフェージュ」とは楽譜を用いた西洋音楽の基礎訓練であり、その中の視唱と聴音が音感を向上させるためのカリキュラムと言って良いでしょう。

聴音の初級課題と、耳コピで使われるような実際の楽曲を比べてみましょう。
なぜ赤本や授業に例えたのかが分かると思います。

聴音の初級課題と耳コピの楽曲を比べてみると、難易度に大きな差があることが分かります。

そもそも聴音の初級課題は、教育用に作られているため、順序立ててレベルアップできるようになっています。

それに対して耳コピの楽曲は教育用に作られていません。音感がない人が徐々に音感を見つけることを目的としていないため、難易度が異常に高くレベルアップするのが難しいです。

つまり、視唱、聴音を行うのが正規のルート、〈練習方法〉としての耳コピは邪道と言えるでしょう。

今「耳コピがしたい」と思っている方の大半は、実際に耳コピをするレベルには達していません。

基礎から始められる教育用の課題に取り組まず、高度な実践練習ばかり繰り返しても、耳コピができるようにはならないでしょう。

もし耳コピを習得したいのであれば、まず耳コピという〈練習方法〉を諦めましょう。


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