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2023年度おがる・親の会共催研修報告

2023年9月2日(土)に一般向け研修として、「広めよう発達障がいの理解〜自分のことを知るコツを学ぼう〜」を開催しました。
この研修は札幌市内で活動されている家族会の皆さんとの共催で、2019年から開催を続けています。
コロナ禍では、一度開催を休止しましたが、オンライでの実施に切り替え継続してきました。
今回もzoomウェビナーで開催し、55名の方が参加されていました。ありがとうございました。

第1部は基調講演として、千葉大学教授の大島郁葉先生に「発達障がいのある成人当事者の自己理解」をテーマにお話しいただきました。

まずは自閉スペクトラム症についての基礎的なお話があったのちに、メンタルヘルスが悪くなりやすいこととその仕組みについて解説してくださいました。

自己理解や身近な人に理解されることも重要ですが、それよりも社会に受け入れられることの方が、メンタルヘルスとの関連が強いとのお話はとても印象に残っています。おがるが発達障害者支援センターとして、発達障がいの普及啓発活動を続けていくこと、正しい理解につなげていくためにはどうしたら良いのかを改めて考えさせられました。

メインテーマの自己理解については、大島先生が開発されたACATについて、事例を交えてお話しされています。
ACAT(Aware and Care for my Autistic Traits)は認知行動療法を用いて、「自閉症の自己理解やポジティブなアイデンティティの構築・機能的対処方略の構築を最大限に引き出すプログラム(Ohshima et al,2020)」です。

自分の強みと弱みを把握し、問題の構造を理解した上で、対処行動を考え実践していくこと、繰り返しやって対処を身につけていくことで、自閉症である自分を大事にしながら過ごしていけるようになっていくのだと思いました。
テキストも販売されてますので、詳しくはそちらをご参照ください。


第2部はシンポジウムとして、札幌市障がい者相談支援事業所配置ピアサポーターの皆様に、「自分を知るためにやってみたこと」をテーマに自分のご経験をお話しいただきました。
コメンテーターとして、就労支援推進部会部会長の松本さん、自閉症者地域生活支援センターなないろ所長の加藤さんもご参加くださいました。

過去の自分を振り返る、書籍を読む、自分の苦手を知るためにいろいろ試してみる、当事者研究をするなど、自分を知るためにやってみたことと、やってみたことのメリット・デメリットについてお話しくださっています。中でも、共通の意見として、やはり「仲間と共有する」ということは、とても安心感があり、力になったとおっしゃっていました。

また、今はピアサポーターとして活動されている皆さんですが、発達障がいである自分を受け入れるまでには、いろいろな苦しみ、葛藤があることもお話しされています。

大島先生も、ACATを実施するには、ある程度自分の自閉症というものを扱える状態になっていなければならないということをおっしゃっていました。

周囲はすぐに自己理解をし、対処行動が取れるようにならなければならないと勧めてしまう傾向がありますが、そこに至るまでには、とても時間がかかるし、そんな簡単なものではないということを改めて認識したところです。

第3部では、社会資源の紹介として、各家族会の紹介をしています。
最近は、SNS等のインターネット上で情報を得たり、同じ立場の人とつながれる時代になりましたが、やはり、直接会って話を聞いたり、一緒に何かをしたりするというのは、ネット上では得られない場となると思います。
当時者の方々と同様、ご家族も同じ立場の仲間と一緒に共有する機会を持つには、家族会も活用していだたけるといいなと思います。


今回の研修に参加していたおがるのスタッフからは、自分はあまり自分のことを知らないかもしれないし、知る必要性を感じたことがないという感想がありました。

この世の中は、多数派仕様に作られているため、多くの人は生活の中で困る機会も少ない。だから、自己理解をそこまで深くする必要性がないのでしょう。
一方マイノリティである発達障がいのある方々は、多数派がしなくて良い努力をしなければならない状況に追い込まれてしまっているのだと思います。

いろいろな立場の人が、できるだけ楽に過ごせるように、発達障がいの正しい理解を広めていくために、活動を続けていきたいと考えております。

こちらの研修は、登壇者の方々のご好意により、見逃し配信をしておりますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。


見逃し配信の再生リストはこちらからも見られます。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLHuIMWqrNGp-_3lRyNXNLljR8a-uL4mlu




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