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大人と子供と令和の夏 ~「オラ夏」配信によせて~

※この記事は、この世に生を受けた一介のVtuberが好きなことを好きなように語った随筆っぽいものです。


ひろしの回想

「クレヨンしんちゃん」と「夏」。
この2つの単語から連想されるものとして、筆者の頭に最初に思い浮かんだのは、「オトナ帝国」こと「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」だった。

20世紀≒昭和への回帰を目論む悪の組織イエスタディ・ワンスモアと、それに立ち向かうカスカベ防衛隊や野原一家の、未来を巡る戦いを描いた映画作品。「泣ける」「感動した」「クレしんらしくない」と様々な評価を生んだ不朽の名作である。
その中の1シーンで流れる「ひろしの回想」は、聴くだけで涙を流す人もいるほどの名曲であることは、概ね同意いただけるのではないだろうか。

幼少期のひろしが夏空の下で父の漕ぐ自転車に揺られるシーンから始まり、初恋と失恋、上京、就職、仕事での挫折、みさえとの出会い、しんのすけの誕生と回想は続く。
家族の団らんのために汗水を流して働き、その証として沁み付いた足の臭いを以てひろしが記憶を取り戻す一連の流れは、大人になった今だからこそ共感できる、という人も多かろう。(諸説あります)

この「ひろしの回想」、楽曲として何が凄いかと問われれば、情緒に訴えかけるメロディーもさることながら、時の流れに応じた楽器の使い分けではないかと思う。(諸説あります)
冒頭から学生時代はエレキピアノ(と言えばいいんだろうか)とアコースティックギターのノスタルジーな音、ひろしが就職してからはリコーダー(で合ってるか…?)とアコギの優しい音色、続くしんのすけの誕生シーンからストリングスや管楽器の華やかなオーケストラサウンドに変わり、最後の家族で自転車に乗るシーンで再びリコーダーとアコギに帰ってくる。

この最後にリコーダーとアコギに帰ってくる展開が実に秀逸で、彼の人生がしんのすけやひまわりに受け継がれていく、それは「大人から子供へ」、イエスタディ・ワンスモアの標榜する懐古主義と真っ向から対立するテーマと言える。(諸説あります)

季節の移ろいに合わせて子供は大人へと成長していく。音楽が人生を物語るとはまさにこのことなのだろう。(諸説あります)

令和の大人と子供

このように、オトナ帝国では「昭和と平成」「過去と未来」「大人と子供」のような二項対立を主題として、幼児向けアニメとは思えないシナリオを、あくまでも子供も笑えるようカラッと描いている。

ただ、(映画の出来に対して決してとやかく言うつもりはないことを大前提とした上で)令和という時代は、少し状況が異なっているようにも思う。

インターネットやSNS、動画サイトの発達と普及により、人々は誰もが手軽に情報を発信できる側に立った。
それは人と人との間の「境界」を下げ、良くも悪くも色々な物を明確にし、同時に曖昧にしていった。新技術の功罪というものだろう。

様々な境遇の人がいること、様々な考えの人がいること、画一的な価値観に縛られない多様な生き方が許容されることを、パソコンやスマホの画面を介して我々は知った。
そんな中で、「大人と子供」という境界すら、今となっては曖昧になっているのではなかろうか。

いい歳して」等の表現も今となっては陳腐になりつつある。大人だって子供の側面があり、子供だって大人らしさを併せ持つ。大人になっても無邪気に笑いたいときはあるし、趣味に没頭したいときもある。
また、若い世代が大人たちのコミュニティに交ざってゲームをする光景を筆者は多く見てきた。
大切なのは0か1かで論ずることではなく、その間に無数に横たわる要素全てを以てその人自身であること、そしてそれを否定ではなく許容することではなかろうか。
(「他人の全てを受け入れろ」ということが言いたいわけではない。「そういうのもあるんだ」と受け止めることが重要なのだ)

そしてこのように様変わりした令和の世において、「昔はよかった」と嘆くよりも、「これもまた一つの変化、あるいは成長」とポジティブに捉えられると、人生が少しだけ豊かになるように思う。

おとなももこどもも、おねーさんも

だからこそ、かつて少年少女だった大人たちがあの夏に戻れる、言い換えれば子供と大人の境界を崩す「オラ夏」が、オトナ帝国20周年というこのタイミングで発売されたことが、筆者にとっては格別に愛おしく感じるのである。
上映当時はまだ小さかった子供たちも、20年も経てば立派な大人。近いところではBUMP OF CHICKENの「アカシア」と共にポケモンシリーズを振り返る「GOTCHA!」といい、最近のクリエイターは本当に粋なことをしてくれるものだと感心するばかりだ。

そして同時に思い起こされるのは、筆者が子供の頃から愛するゲームのキャッチコピー「おとなもこどもも、おねーさんも」である。
あのゲームも語り出せばキリがないため、いつか機会があればこうして筆をしたためたいと思う。

大人も子供も、そしてしんちゃんの大好きなお姉さんもきっと楽しめるであろう「オラ夏」を、この令和3年の夏に遊べることが、今から楽しみでならない。



※本日7/22(水)21時から、YouTubeで「オラ夏」の実況プレイをライブ配信する予定です。もしご興味があれば見に来てください。今後も定期配信予定なのであわよくば次回以降も見てください。


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