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AI時代の到来によって「音声」の価値はどう変わるか?【声の履歴書 Vol.94】

こんにちは。Voicy代表の緒方です。

この「声の履歴書」という連載は、Voicyがこれまで歩んできた道のりや、いま考えていることについて創業者の私があれこれ語っていこうというシリーズです。よかったらマガジンをフォローしてくれると嬉しいです。

今日はいま話題のAI、ChatGPTによって、音声コンテンツ市場はどうなるのか、そして僕らの生き方にはどんな変化が求められているのか、について書きます。

「音声」にとってAI時代の到来はチャンス

ここ数ヶ月、僕らはChatGPTの衝撃を目の当たりにしています。ちょっと前までは顔写真を加工するくらいだと思っていたのが、いつのまにか顔の画像そのものを作るようになり、音楽をつくるようになって、文章まで書くようになってしまって、もう本当にAIで何でもつくれるようになりました。

そこでちょっと考えてみたいと思います。AIがいろんなクリエイティブ活動をサポートしたり、肩代わりしたりする時代に、唯一最後に残るものは「人間らしさや本人性」くらいではないでしょうか。

情報って現状、手でつくって目に入れるか、口でつくって耳に入れるしかない。そのなかでもすでに、手でつくったものからは本人性がけっこう失われています。

たとえば僕が書いてるこの文章。文章と言うのは今後ほとんどの部分はAIをつかって書き上げられます。文字だけだと僕らしさというものは出せないのです。

そういう状況の中で、僕らの人間性や本人性を届けるには「声」しかないのでは、と思いはじめています。いまのところAIは人の感情までは生成できません。人間が自分の気持ちを表すために、わざわざつくらないといけないものは声くらい、と言えるかもしれません。

おそらく今後、世の中は自動生成した情報で溢れ、テキストは泉から無限に湧き出てくるような社会になってきます。そこで求められるのはきっと、「誰の」「どういう感情か」みたいな部分になってくるのかな、と思います。

ぼんやりと、声でちゃんと発信することの大事さがますます増えてくるんじゃないかと思うんです。

もちろん、「声だってデータを集めて自動生成するんじゃないですか?」という意見もあります。だけど、声については、その人が持っている感情や温度感がほしいので、「自動生成したものがほしい」「自動生成したい」というニーズが薄いように思います(情報としてのニュースの音読などは別ですね)。

そうなってくると、これからの時代、声で発信することはできていたほうがいいし、声のコンテンツがこれまで以上に求められるようになるんだろうと、ややポジショントークながら思っています。

今はいろんな分野で「おいおい、これからどうする?」と言っていますが、その中で「声」は頭一つ抜けられるかもしれないぞ、という予感があります。

そもそもですが、音声というものは「音」と「声」に分かれていますね。「音」のほうは音楽など生成物です。AIによる自動生成がこの分野は大きく変化が迫られています。一方で「声」はより良いものや集合知を求められるものではなく、人間の魅力を出すための1つの軸になっていくはず。

個を持つことが新しい可能性を拓く

VoicyでもAIを使ってやりたいことはたくさんあります。いつかやろうと思っていたけれどずっとできなかったことが、「気合いの書き起こし」と「気合いの要約」です。人を割いて気合いで音声コンテンツを書き起こして、要約して、メディアをつくるというアイデアはずっとありました。

今はもうChatGPTでそれが全部できちゃう時代になっています、音声の書き起こしや要約というものはかなりの精度で大量生産できます。それが1つのテキストメディアになる、みたいな試みは、今後挑戦してみたいと思っています。

Voicyのコンテンツが内容までちゃんとGoogleにインデックスされて、しゃべった内容が探せるだけでも十分に良さそうな感じはします。いまはあちこちで「大革命だ」とか「産業革命がきているんじゃないか」と盛り上がっていますが、その後ろからひたひたと「声」の足音が聞こえてきている、ように僕は思います。

これから、いったいどんな備えが必要なのでしょうか。たとえば企業で商品を売りたい人や、マーケティングをしたい人は、何を準備すればいいのか。

ものと情報がさらに溢れまくる世の中で、人に選ばれたり、買ってもらったりするのはますます難しくなります。どうやって自分の価値を人に理解してもらうのか。ただ情報を出すだけではなく、「いかに好かれるか」ということがすごく大事になっていますよね。なので、「内側にちゃんと人間がいるんだな」と思えるようにつくっていくことは、けっこう大事だと思います。

たとえば後藤達也さんは日経新聞のいち担当者であったころより、日経新聞出身の後藤さんのほうが、フォロワーを集めてあっさりとマネタイズに成功しました。そういうことがこれからどんどん起きてくる。「個」のほうがニーズがある時代で、その「個」を組織がどう抱えられるか、どう表現していくか、も鍵になってくるでしょう。

個人目線でいえば、普通に会社の中で仕事をしていると、作業的なことはAIに淘汰されてしまうかもしれない。けれど「個」を持っていれば後藤さんのように個人をメディアにして仕事ができるかもしれない。少なくとも新しいチャンスを探すきっかけにはなります。

だから、ひとまずこのタイミングで、自分はどれくらいのことができて、何が難しいのか、今後どんなことを身につければ変化に対応できるのか、ということは整理しておいてもいい気がします。

VoicyにAIを組み込むなら

ここまでAIの影響が及ばないところで勝負しよう、みたいな話をしてきたようにも見えますが、もちろんVoicyもAIには真剣に取り組んでいきます。

その結果、Voicyがどうなるか? まずVoicyパーソナリティは「その人らしさ」をちゃんと表現するところに専念できるようになります。

たとえばChatGPTを使うと、話すべきネタを見つけることはかんたんです。「今日は何を話そうか」というネタ出しの助けにはなるでしょう。

10分話したら内容を分析して一番刺さりそうなタイトルをつけてくれる、とかもできますね。

あとは話を上手く聞き出してくれるなんてのもできそうです。聞き役がいると話しやすくなりますよね。相槌を打ってくれるAIを用意できたら、1人語りが苦手な人も手軽に配信できるかもしれないですね。

もっと妄想すると、AIでイケボに変えてくれる、とか、AIでしゃべりが面白くなる、みたいなものもあり得るかもしれない。実際どうやるんだろう?みたいな感じですけれど、AIの助けを借りると、みんなが聞きたいくらいあなたの話が面白くなるとか。こうなったらもはや本人の話じゃないですね笑

現実的には話した内容に自動でタグを付けてくれるだけでもいいですよね。そうするとAさんのこのエピソードを聞いた人には、同じタグがついたBさんのこのエピソードがおすすめ、ということができるようになります。

Voicy内のレコメンドが強化されると、いろんなパーソナリティの番組をより多くのリスナーに届けることができます。番組の内容を解析できなかったのは以前からあった音声の弱みでした。それが消えるわけです。

自分のオリジナルを表現しよう

というわけで、AI時代に僕らはどんな表現を目指すべきか。

少なくとも声の価値は相対的に上がりそう、というのがここで言いたいことです。これから世の中で、僕らは結局、人としての自分の「オリジナル」が出せるような道を選ぶ必要がある。そして人としてのつながりが資産になると思います。

ただし、その方法はどんどん狭められている。でもある分野では、これまで以上にオリジナルを深めることができる。そんなことを最近はずっと考えています。

ーー最後まで読んでいただきありがとうございました。

声の編集後記

記事の執筆後に、内容を振り返って音声でも話しています。よかったらこちらもお聞きください。

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