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ブランドづくりに関わるデザイナーが意識すると良さそうな4つのポイント

この記事はfreee Designers Advent Calendarの23日目です。

こんにちは。freee brand studioでクリエイティブディレクターをしているテツ(小川)です。今年は仕事もプライベートも割と大きな変化があり、忙しくも充実した1年だったなと感じています。

個人的2021年3大ニュースは以下になります。(順不同)

  1. freeeのリブランディングしたよ

  2. アウトドアやキャンプで使える野菜のピューレブランドを立ち上げました

  3. 結婚しました

さて当然ですが、昨今スタートアップ界隈でもブランディングの話題は盛り上がっておりますが、様々な記事を見ているとよくこんな言葉を耳にします。

「ロゴ刷新や表層的なデザインの変更=ブランディングではない」

これについてはまったく同意見ですし、いまだにこの誤解に苦しめられるケースは多々あります。

ではブランディングにデザイナーは不要なのか?

いいえ、そんなことはありません。
むしろブランディングが上手な企業のブランドチームには、デザイナーあるいはデザイン経験者が関わっているケースも多く、デザイナー自身のブランドづくりへの関わり方やバリューの出し方によってアウトプットは大きく変わってくるなと感じています。

この記事ではfreeeのリブランディングの経験を通して事業会社側のデザイナーがブランド領域でよりバリューを出していくためのポイントを自分なり書いてみようと思います。

今回のリブランディングの概要

まずは今回freeeでおこなったリブランディングについて簡単に触れておきます。2021年6月22日にブランド刷新をおこないました。冒頭で話している通り、CIやデザインのリニューアルだけではなく、スモールビジネスに携わるすべての人を“自由”にしていくために、あらゆる顧客接点でfreeeらしく価値を届けきる指針(ブランドコア)を設定しました。

社外パートナーとしてTakramさんにご協力いただきました。
課題の整理やコンセプト策定の議論から参加して、CIやブランドデザインシステムの開発を担当いただきました。


ポイント1.経営戦略に合わせたブランドの設計

ブランディングを表層的なものにしないためには、社のミッション・ビジョンや経営戦略とアラインしたコンセプトづくりが重要になってきます。
freeeでもブランドマネージャーがここをひたすらここに向き合う期間がありました。

ただし、ブランドコアの議論は正解のない抽象的な内容が続くため、議論と同時並行で具体的なイメージを作り上げていくプロセスをとるケースも少なくありません。今回のケースでもそうでした。
ブランドコンセプトの「自由」、新ビジョンの「だれもが自由に経営できる、統合型経営プラットフォーム。」がボヤーっと決まりだしたタイミングからCIやデザインシステムの設計が開始されました。

ロゴ単体の磨き込みや検証はTakramさんにおこなってもらったのですが、同時にfreee側ではブランドコアや新ビジョンを意識しながら、freeeをどのようなプロダクト群として整理するか、またプロダクトのネーミング、それぞれのロゴの識別性をどのように担保するか、などプロダクトの成長を考慮したロゴの汎用性や機能性の議論・検証をかなりの時間をかけて社内でおこなっていきました。
その際には言葉での整理だけでは共通イメージを持って話すのが難しいケースも多く、ビジュアルでプロトタイプしながら様々なファンクションのメンバーが素早く共通イメージを持つことで議論がグッと前に進めることができます。

プロダクトの相関図整理イメージ
プロダクトの相関図ラフ

結果として今回のCIはただツバメのロゴをブランドコアにそって刷新したものではなく、「だれもが自由に経営できる、統合型経営プラットフォーム。」を体現したサービス名やモチーフの設計とセットでパワーアップしたCIの開発をすることができました。

プロダクト一覧検証画像
プロダクト一覧

freeeではプロダクトと定義しているものだけで19プロダクト存在し、その他サービスやコミュニティ、アプリなど含めると70を超えます。
今回のリブランディング前はそもそも何をプロダクトとして定義するかや、新プロダクトのネーミングルールなど明確に定義できていませんでした。
そのため、「とりあえずロゴ作ってほしい」みたいな依頼も多く、社内の承認フローも明確になっていませんでした。
普段からユーザーのタッチポイントに広く関わるデザインメンバーであれば、いち早くここの情報整理や実際どんな展開されるかなど具体のイメージと合わせてルールに落とし込むことができます。

プロダクトロゴ一覧画像
プロダクトロゴ一覧

ポイント2.フィロソフィの解像度を上げていく

ブランディングではプロジェクトが進むにつれて見えてくるアウトプットがたくさんあり、パートナー企業から納品されたら終わりではなく、むしろ始まりでもあります。
特にfreeeのようにプロダクトやサービスが多数存在し、複数の顧客セグメントをターゲットにしている企業の場合、社内に展開後、使われ方は複雑になるため、運用しながら恒常的にアップデートしていく必要性が出てきます。

デザインフィロソフィの例で説明します。
ブランドコアを意識しながら長い議論の末作成されたデザインフィロソフィでしたが、より現場の担当者や制作パートナーが解釈できるようにアップデートしていかなければなりませんでした。
そのため、下記のような構成要素を出してみたり、ムードボードの作成など継続の議論が必要でした。

『かろやかシンプル』というデザインフィロソフィの構成要素の整理
デザインフィロソフィの構造整理
デザインフィロソフィの要素分解検討資料
デザインフィロソフィの要素分解検討資料
ムードボードイメージ
ムードボード(一部)

ブランディングのプロジェクトによってムードボードなどはパートナーさんに作成してもらうケースもあると思いますが、フィロソフィの解釈やムードボードを作成する過程には必ずデザイナーの力が必要になります。
実際に運用していく事業会社側のデザイナーでここを作り上げていくこと自体が、その後のブランド社内浸透に大きく関わると思います。

ポイント3.デザインシステムを進化させる

CIガイドラインにはツバメが咥えるモチーフの造形ルールは記載されていましたが、どんなモチーフならfreeeのブランドコアに沿っているか言語化したり、モチーフをロゴ以外の場所でどのようにコミュニケーションに活用していくか、など考えることが膨大にありました。
ここでも言葉だけでルール化を進めると、後々実際に作れなかったり、いざ作ってみたらイメージと違っていたなんてこともあります。こちらも言語化したルールを素早くプロトタイプしていくことで、表面的なデザインではなくブランドコアを意識したルールにすることができます。

モチーフの起用基準
1.古い慣習から解放し、自由の象徴であるツバメが変えていく意
2.ユーザーにプロダクト利用後のイメージを想起させ、ポジティブな印象でユーザーを前向きにさせる

freee CIガイドライン
モチーフの起用基準画像:あえてレガシーなものや、プロダクト利用後のイメージをモチーフにしている
モチーフの起用基準
プロダクトロゴ別モチーフ例の画像
プロダクトロゴ別モチーフ例

また実装フェーズではあらゆるタッチポイントを想定した検証をしていかなくてはなりません。マルチデバイスの昨今ではタッチポイントによって、様々な調整が必要になってきます。
PMからアプリの場合、モチーフの視認性をあげたいとフィードバックをもらい、検証を重ねながら最適なサイズを探っていきました。

アプリのモチーフサイズ検証イメージ
アプリのモチーフサイズ検証

ポイント4.汎用性のある造形や、テンプレート設計経験を活かせる

デザイナーといっても広告やweb、UIUX、エディトリアルなど領域は様々ですが、ある程度デザイナーやアートディレクターとして経験を積んでくるとスタイルガイドやテンプレートの設計を任されるようになります。
個人的にはこの経験をどれだけできたかがブランディングではかなり重要なスキルだと思います。
冒頭に話した「ロゴや表層のデザイン」ではなく、ロゴやデザインが実際にデザインに落とし込まれた時、新プロダクトがどんどん増えていった際に破綻しないような設計ができているか、あるいはそれを折り込んでパートナー企業に依頼できているかが大切になります。

最後に

ブランディングは戦略策定やコンセプト・フィロソフィの言語化、新ロゴ公開しただけで終わりではありません。これらのコンセプトに紐ずけてあらゆる顧客接点にアウトプットしていくためには、社内への一貫した理解・共感がかなり重要になってきます。

新ブランド公開後、デザインシステムを進化させるガイドラインの整理や膨大な素材作成、そして社内の各ファンクションや顧客にどのような形でブランドコアを届け切るかまだまだ絶賛議論しております。

freee brand studioでは仲間を募集しています。
まだまだカオスで刺激的なチームですが、デザインやコピーの力を使って職種にとらわれないブランドの仕事はとても良い経験ができると思います。
ぜひ興味ある方は気軽にご連絡ください!

あしたはクリスマスイブですが、Masaya Kibayashiさんにバトンを渡したいと思います。


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