雪ネリネ1
「オンニ!イゴ、チウォジュセヨ!」
チーム長が必要以上の声量で私に指示を出した。鼓膜が破れてしまいそうな彼女の甲高い声にはもう慣れた。だって毎日なのだ。私は彼女に目の敵にされている。彼女が裏で私のことをアジュンマと呼んでいることも知っている。でも年長者とは言え新人の私は耐えるしかない。
私は3ヶ月前から韓国ソウルにあるHYBEという会社で働いている。
それは突然のことで自分にとって嵐のような変化だった。半年以上前のことだ。人気ボーイズグループBTSが日本の化粧品CMのモデルを務めることになり、当時その化粧品会社に勤めていた私は撮影の際のメイクアップ担当としてプロジェクトに参加した。
私はジミンとj-hopeの二人を担当するチームについたのだが、彼らへ施したメイクが世界的にバズり、撮影後HYBE本社からヘッドハントされたのだ。さすが急成長している大企業だ。ビザも引っ越し準備も韓国語の語学学校も全て用意され、待遇も破格だった。ちょうどその頃私は7年付き合っても煮え切らない彼と別れたばかりだった。だからすぐに渡韓の決心がついた。
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