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アキレス腱
2022年6月6日 22:39
初恋の人にばったり会ったことはありますか?予想もしていない場所で、突然、目と目が合って、お互いがほぼ同じタイミングで相手に気づいて逃げることもできない、そんな経験…。私が突然そんなことを聞くのは、勿論、私自身がそんな経験をしたからだ。高校時代、密かに想いを寄せ続けた初恋の相手に、なんと、遠い海を越えたマンハッタンの小さなコーヒースタンドで、私は再会した。これを「運命」と呼んでもバチは当たら
2022年6月7日 21:26
この季節、ニューヨークは日が長い。家を出たのは20時近かったのに空はまだ明るかった。彼の泊まっているホテルに行きLINEで到着を知らせる。大きなホテルだったからロビーは様々な国籍の人たちで混み合っていた。そこに彼が来た。知性を感じさせる顔つきと鍛えられた身体はジャケットを羽織ることで更に魅力を増し、私は途端に緊張した。「ごめん、下、まともなの持ってきてなくてさ」彼は薄い色のジーンズを引っ張
2022年6月8日 18:35
店を出る前に、彼はジャズクラブに行ってみたいと言った。近くにいい店がないか店員に尋ね、私たちは夜風にあたりながら教えてもらった方角へ歩いた。「ガールフレンドを呼ぶのに佐藤さんはないな」彼は突然そう呟いた。「名前で呼んでもいい?」「金南くん、さっきの、マジ、なの?」「ああ、マジだよ。今日を入れて3日間だけ。楽しいよきっと」「うーん」「南って呼び捨てしていい?」「や、まぁ、いいん
2022年6月9日 17:48
トランペットやサックスの音色に慣れた耳で店を出ると街が静寂に包まれているように思われた。「音楽は終わってしまうと空気の中に消えていって二度と取り戻すことができない…」見上げると彼は小さくえくぼを見せた。「…っていうジャズの名言があるんだけど、今、ホントに消えてったなって思って」私が「ホントだね」と言って空を見上げると、彼も一緒に空を見上げ大きく伸びをした。「はぁ〜、いい夜だな。
2022年6月21日 19:17
ニューヨーク。エンパイアステートビルディング。深夜0時。煌めく摩天楼。10年ぶりの再会を果たした男女の熱いキス。映画ならばここでサッと場面が変わり、次のシーンは薄暗いベッドの上で情熱的に交わる二人か、もう少し手前ならば、タクシーの中でキスの続きをする二人、もしくはお互いを求め合う気持ちを抑えながら絡ませ合う手と手のアップ、そんなところだろうか。しかし、現実は映画のようにはいかない。二人のキ
2022年6月23日 17:22
朝。部屋のドアを開けると彼がピンクのブーケを抱えて立っていた。「こういうの、一度してみたかったんだよね」と彼は恥ずかしそうに笑って「今日はよろしく」とその可愛らしい贈り物を差し出した。私はまるで少女のようにはにかんだ。そんな風に、私たちのデートは始まった。アパートを出ると自然な流れで手を繋いだ。とても気持ちのいい朝だ。気温上昇を予感させる初夏の陽気に時折爽やかな風が吹くと、彼の、折り皺がつい
2022年6月24日 18:15
ルーフトップのレストランへ入った私たちを迎えたのはハドソン川に沈みゆく美しい夕日だった。「わー!すげぇ綺麗だ」彼は手を胸に当て目を瞑り、そしてまたゆっくり瞼を開けて、まるでこの景色を記憶の中にデッサンするように静かなまばたきを繰り返した。夕日が当たって温かみのある肌とキラキラと輝く瞳と穏やかに微笑む口角はとてもセクシーで、彼の横顔を見ているだけで私は少し酔ってしまった。食事をとりながら
2022年6月28日 14:50
彼は口づけで、指先で、言葉で、私を優しく愛した。不器用なはずの彼の愛撫は意外なほどに丁寧で繊細だった。まるで全身が液体に溶かされていくような快感に溺れながら、瞳を開けばそこには見たことのない、雄の顔をした彼がいる。彼は私の両手を杭を打つように塞ぎ、その低く響く声で甘い言葉を囁きながら、ゆっくりと時間をかけて私の中に入った。半身を支える彼の腕は日焼けして、筋肉質で、血管が浮き上がっている。私はも