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ホラー映画で驚かせてくるな

わたしにはホラーの定義がある。
びっくりさせてくるのはホラーじゃない。

「え、実はあの時……?」
「あの人なんかおかしい」など、
じわじわと背筋が凍るものを
ホラーと呼んでいる。

冷静に考えてみてほしい。
なぜオバケが驚かすのか。
動機はなんなのか。
メリットはなんなのか。

例えば、5人組の仲良しグループがいて
いつのまにか1人だけお化けにすり替わって
皆殺しなんていうのは理解できる。

この団体を殺るためにうまく紛れ込んで
殺しにイージーな環境を作り、
無事やり遂げた というだけだ。

だが、このストーリーの要所に
"いないと見せかけての驚かしからの殺害"
"友達と見せかけて振り返ると
オバケで驚かしからの殺害"
などが挟まってくると話は違う。

インセンティブが入らない限り、
こんなに無駄な殺害方法はないだろう。

「実際のオバケならやらないかもだけど
これはあくまで娯楽用制作物。
お客さんを怖がらせるためだよ」と
スタッフは言うかもしれない。

大半はそれで納得するだろうが、
私はそのビックリホラーショーを認めていない。

あれは「怖かった」ではなく
「びっくりした」ではないのか?

調べてみると、脳科学的にも
「物語が怖い」と「突然出てくるから怖い」では、
反応する部位が異なることがわかった。

「物語が怖い」時には視覚と聴覚に関係する部位が
活発化するが、「突然出てくるから怖い」時には
感情処理・脅威評価・意思決定に使われる部位が
活発化した。

「タイプが違う怖さなんだよ」と言われれば
そこまでなのだが、びっくりさせて怖さを稼ぐって
安易じゃない?と私はどうしても思ってしまうのだ。

とっても主観的に言えば、ただ純粋にホラーを
楽しみたいだけなのにいきなりビビらせてきて
大声を出してしまうから映画館に行きづらくて
ムカつくのだ。

「それを他の正統っぽい理由で
誤魔化してただけなのか」と誤解されそうだが、
本当にどちらの理由もある。

怖いビジュアルに仕上げて突然驚かせば
「怖かった〜」という感想がもらえるような
作品でキャストはスタッフはいいのだろうか?

多くの人に「怖かった」と言われる作品には
"突然の驚き"が不可欠かもしれない。

話題性や収益を考えれば
キャッチーなものを作りたいのは当然だ。

それに驚きという感情で観られるホラーは、
脳死状態でも観れるし娯楽スコアはかなり高いだろう。

今までにだってキャッチーなホラー映画は
人々の記憶に残り、グッズ化もされてきた。

私だって馬鹿馬鹿しいホラーは大好きだ。

だけどたまには本を読んだような、
10万文字ないと伝わらないようなホラー作品を観たい。

散々「驚かせてくるな」と偉そうに伝えてきたが、
私が言いたいことは要するに、
「たまには叫ばなくていいホラー映画出てこね〜かな」
これだけだ。

どうかホラー業界が探究心途絶えず、
我々の私欲を満たし続けることを期待している。

そして、もしかしたら
まだ出会えていないだけかもしれない私に
黙って観られるホラーをどうか教えてほしい。

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