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Tier2シーンを守るには

こんにちは、おふとんです。
大変お久しぶりです。気づいたら僕は魚群を抜けて、季節は春になっていました。

eスポーツ裏方ラジオというPodcastコンテンツを始めた影響もあり、なかなかnoteの執筆に時間がとれず、久方ぶりの更新になってしまいすいません。ほんとはもっと書けたらいいんですけど、なかなかそうも行かず。。。

今日はいつものFPS論というよりも少しビジネスチックな話ですが、最後までお付き合いいただければと思います。何卒。


1.Tier2シーン縮小の流れ

主要なFPSタイトルで昨今Tier2シーンの縮小の流れが来ています。

シージでは新シーズンに入り、以前まであった「昇格戦」というシステムが無くなったことで、Tier2チーム(所謂RJO組)はトップリーグ昇格の道が断たれてしまいました。
形式上はLCQによってRJLに所属していないTier2チームでも直接、世界大会であるMajorに行くことは出来るようになりました。しかし現実的にフルタイムでの活動が難しいTier2チームがTier1チームがひしめき合うLCQを勝ち上がることは厳しく、実際に自分の元所属チームである魚群らの主要なTier2チームは所々善戦はしたものの、みな敗退してしまいました。
次回のLCQまでは半年ほど期間が空いてしまうこともあり、LCQ敗退後には解散するTier2チームが数多く見られました。

Valorantでも同様の問題が発生しています。
今シーズンからフランチャイズリーグが開催されたことにより、リーグに所属できなかったチームの活躍の場は非常に限られています。
日本チームに限れば3月から開催されたVCJ Split2を勝ち上がり、Ascension Tournamentに参加する他は、こうしたTier2チームの露出の場は今年度いっぱいはありません。最悪の場合、3月のVCJ Split2で敗退してしまうと、3月で2023年の大会は全て終了という事態になってしまいます。
この影響を受け、VCJ Split2敗退後に解散をするチームが多々見られ、Twitter上でも日本のTier2シーンの行く末を案じる声が多くみられました。

このようにシージやValorantにおいて、Tier2チームが活躍できる公式の場が限られることからTier2チームが解散してしまい、Tier2シーンが縮小へ向かう流れが出来てしまっています。

2.なぜTier2チームは解散するか

大前提としてTier2チームが多数解散し、Tier2シーンが縮小へ向かうことは日本のeスポーツシーンにとって悪影響です。次の大会まで期間が空くからといって、チームを解散してしまうと以下のような負の連鎖に陥り、日本のeスポーツシーンのレベルが下がってしまうからです。

①Tier2シーンが縮小してしまう
②Tier2シーンに所属する選手は安定的な練習の場を失う
③Tier2シーンに所属していた選手のレベル低下&Tier1の選手との実力差拡大
④大会直前にTier2チームを結成してもTier1チームに勝てない
⑤Tier1以外チームを持つ意味がない
⑥Tier2からの突き上げが無くなる結果、Tier1の成長が鈍化

こうした事態を防ぐためにも、Tier2チームには解散をせずにTier2シーンを縮小させないようにしてもらう必要があります。

とはいえ、Tier2のeスポーツチームの運営からすれば「数か月後にある大会で結果が出るかも分からないロスターに、継続的に給料を払うのは投資判断としてできない」という事情もあり、それ自体は理解ができるものです。
選手5人+コーチに十分な給料を払おうとすれば、毎月数十万~数百万円の出費となり、それを数か月払った挙句、次の大会で即敗退されたらたまったものではありません。

では、この問題の本質的な原因は何なのでしょうか?
個人的にはeスポーツチームの運営のゲームに対する理解度の不足だと考えています。

チームを解散させる運営が「数か月後にある大会で結果が出るかも分からないロスターに、継続的に給料を払うのは投資判断としてできない」と思うのは、ゲームにおける自チームの現在地と伸びしろを運営側が試合映像や選手/コーチの話から判断できるほどのゲームの理解度が無いからではないでしょうか?

リアルスポーツに目を向けてみても、「マネーボール」で知られるビリー・ビーン氏のように、競技に対する深い理解を持ち、自分たちで論理的かつ効果的な指標を設定することで、適切な投資判断を行い、賢くチームを強くしてきたチームの運営の事例は枚挙にいとまがありません。

eスポーツも当然例外ではなく、運営がゲームに対して深い理解を持ち、適切な投資判断を行うことができれば、結果が出なければ即解散という事態を防ぐことができるだけでなく、次の大会で結果を残すために適切な動きをとることができます。

3.ゲームを理解する運営の実例

とはいえゲームを理解している運営が実績を残している事例はあるのか気になるかと思います。今回はタイプ別に実際に結果を残しているチームをいくつか紹介していきたいと思います。

3-1. オーナーのゲーム理解度が高いチーム

まず1つ目のタイプとして、オーナーのゲーム理解度が高いチームがあります。例として以下のチームはオーナーが全て元プロeスポーツプレイヤーです。

①TSM:Andy Dinh(元LoLのプロプレイヤー)
②100T:Nadeshot(元CoDのプロプレイヤー)
③KOI:Ibai(元LoLのプロプレイヤー/キャスター)

このようなチームはオーナーがプロレベルの経験があることから「勝つチーム」には何が必要かを経験的に理解しており、自チームの試合映像や選手/コーチの話を基に、適切に自チームの選手/コーチを評価し、適切な投資判断ができるのではないかと推測できます。

3-2. 元プロが運営に参加しているチーム

3-1でオーナーが元プロeスポーツプレイヤーの事例を紹介しました。とはいえ、オーナーが元プロゲーマーでなくても上手く運営に元プロを入れることで、オーナーのゲームに対する理解不足を補っているチームもあります。
例として以下のチームは元所属選手を引退後に運営として迎え入れて成功しています。

①Fnatic
FnaticでCounter-Strikeのプレイヤーとして長年活躍したPatrik "cArn" SättermonをCGO(Chief Gaming Officer)として運営に迎え入れています。

②DarkZero
DarkZeroでシージの選手/コーチとして活躍したBrandon ‘BC’ Carrをゼネラルマネージャーとして運営に迎え入れています。

特にDarkZeroはもともとシージの熱心なファンであったオーナーがロスターを獲得する形で設立されました。
数年間シージで成功を収める過程で、BKNやBCを運営に迎え入れ、他タイトルへも裾野を広げ、Apexでも世界大会を優勝するなど成功を収めています。

まずはオーナーがある程度理解しているタイトルから始め、実績を残し、その過程でチームと繋がりを持った元プロを運営に迎え入れてから他タイトル展開を実施する形で常に適切な投資判断をできる状況をつくってチームを運営するというDarkZeroの方式はゲーム/eスポーツが好きなオーナーであれば、誰でも実現可能な形であり、参考にすべきチームの一つであると考えています。


いかがだったでしょうか。
適切に自チームの選手/コーチを評価し、適切な投資判断をできる体制を構築することはチーム運営をする上でも重要です。特に資金が潤沢でなく、賢い運営をすることが結果を出すためには重要なTier2シーンのチームこそ意識すべきであると個人的には考えています。

DarkZeroの事例のようにオーナーが1タイトルでも良いので、eスポーツを理解し、熱量をもって取り組むことが出来ればいずれ理想的な体制を構築して運営することができるのではないかと考えています。

いずれにせよ多くのeスポーツチームが適切に自チームの選手/コーチを評価し、適切な投資判断をできる体制を構築し、Tier2含む日本のゲームシーンが守られることを願うばかりです。

それではまた。


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