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cineca + あわいもん 02

2022.06.29

撮り溜めた写真を見返しながら、会期中に紹介出来なかった事が本当に悔やまれてならない。
cineca の土谷さんが、これまでの活動を経て、今年新たに創り上げたプロジェクト「あわいもん」は、空間全体で感じてこそ、彼女の想いか伝わるものだったから。

昨年、土谷さんから「一年に一度だけ、開かれるお店を始める」と聞いて「どういうこと?営業してない時の家賃とかどうするの?」と色気のない事をまず考えた自分を心から反省したい。

待ちに待ったご招待メール。街の喫茶店くらいの(極めて曖昧な)規模感を想像して向かった先は…

何だか森のようなお庭の家があるなと思ったら。
まさかのココが「あわいもん」の会場でした。
あわわわわわ
興奮しすぎて、すぐには入れなくて、お庭を一周してから店内へ
空間を遊ぶように作家さんの作品が並んでいます
今回、オブジェなどの作品を出品してくれた作家さんは、元からのお知り合いの方もいるが、cinecaのinstagram をフォローしてくれた方の中から、気になった方に土谷さんみずからお声がけをした方も多いそうだ。
土谷さんの「お気に入り」を通して、彼女の内側を見せてもらっている気分。
店内で土谷さんのお菓子やドリンクをいただける。一階で注文をして、二階のテーブル席へ。
「注文したものをワクワクしながら待ってます」の合図。幾つかのオブジェの中から、自分で好きな1個を選んでテーブルの上に。
連れが頼んだ黒文字のお茶(付け合わせのお菓子付き)と、「風の跡」というお菓子。
(付け合わせのお菓子付き)っていうレベルじゃない存在感を漂わせていた、キャラメリゼされたくるみのお菓子。
「風の跡」風が通った跡の形として表れる砂浜の風紋を菓子にしたそう。ほろっと崩すとこぼれた粒々が本当に風に吹かれて飛んでいったように見えた。
私が頼んだのは「さんど」。ドリンクはお薦めいただいた「仏華」というノンアルコールカクテル。
包み紙も素敵なイラストが施されていて開ける前から期待が高まる。
ブランデー漬けのチェリーが、美しすぎる絞りのクリームに包まれて。一つ一つ手作りの細やかさが伝わりすぎる。「すぎる」が氾濫している。
お持ち帰りできるお菓子も数種用意されてました。「からから」。クッキー生地の中に、木製のおもちゃが1つ入っているの。何が入っているかはお楽しみ。郷土菓子で見たことあるような懐かしさだけど、パッケージも玩具も洗練されていて宝物のよう。こちらは残念ながら完売。
幸運にもまだ残っていた「砂場」という興味深いお菓子をテイクアウト。パッケージは黄色とグレーの2種。(中身は同じ)
両手の上に納まる位のかわいさなのに、リアル。どう見ても砂…。砂の部分は楓糖と、きび糖。竹炭で色味が加えられていて、舌にはラベンダーの風味が広がります。って、想像できないでしょw
中には泥団子のようなホロホロクッキーがいくつか入ってます。
小さい頃、どれだけ綺麗な泥団子作れるかお友達と競ったりして。時々、めっちゃ綺麗なツルツルの団子作る子いたな。なんて、そんな事を思い出してしまったけど、土谷さんの解説には「砂場を見ていると、都市と自然の風景を行き来する感覚になります。 都市と自然、風景と菓子のあわいを楽しむ菓子です。」とありました。
門がすこし開いていて、そこから日の光がわずかに差し込んでくる。 「間」の字が形象するように、間(あわい)とは、空虚に差し込む淡い光が照らす何かでしょう。 「あわい」であるからこその心地よさ、面白さに新しく焦点を当て、生きる時間の中、息継ぎとなる場を目指します。
と書かれていた。

用意されたお菓子や作家さんのアートワークだけじゃなく、外に見える景色も、一人で過ごす、誰かと過ごす、会話の一つ一つも加わって、二度とない時間を生きることができる「作品」がそこにはあった。

土谷さん。会期中、自ら店頭に立ってお客様をおもてなし。提供するお菓子を作るだけでも手一杯だろうに、作品の管理から接客まで。こんなに透明感があるのに、内に秘めた熱意は透けては見えず、いつも涼やか。

cinecaでの表現もそうだったけれど、土谷さんが見ている世界を覗き見ると、同感や共感というよりは「そんな風に見たことなかった」「そんな風に見えるんだ」という、彼女の視線を通して新しい世界(もしくは既にあったものの新しい視点)を教えてくれるような、そんな気持ちになる。

多くの人に広がるというのは、作品についての自身の解釈を手放し、受け取る人に委ねることにもなる。
「かわいい」「きれい」など認識しやすい言葉で作品を形容されるようになった頃にも、土谷さん自身がいたのは、もっと不確かで、境界線の曖昧な「間」であったのではないかなと思う。

違和感からスルリと身をかわすように、彼女が新しく設えた場所は、その「不確かさ」が決して不安ではなく、浮遊感と落ち着いた空気感を併せ持つ、いつまでも身を置いていたい場所だった。

次回の開店は2023年春。

オンラインではこの時に集った作家さんの作品が、今でも購入できるようです。👇👇


【関連note】👇👇

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