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Instagramが立ち上げたTwitter競合「Threads」の目的は何か?Daily Memo - 7/6/2023

今日のDaily MemoはInstagramがもうすぐでローンチするTwitter競合サービス「Threads」について。こちらはOff Topic Clubメンバーシップ向けに最近試験的に投稿している「Daily Memo」ではありますが、長文だったため記事として書かせていただいてます。気になる方は是非Off Topic Clubに参加してみてください!

はじめに

本日からInstagramが開発したTwitter競合サービス「Threads」が一般公開された。数週間前から話題になり始めたのは一部Twitterの競合サービスを作るブーム(Mastodon、Bluesky、Spill、T2)があるから、そして直近のイーロン・マスクのTwitterの閲覧制限によって作れらたもの。

個人的にはMetaはThreadsの成功を2つの軸で見ていると思っている。

1) 10億人が使う、パブリックな広場を作り上げてTwitterをリプレイスするサービスになる
2) ソーシャルグラフの相互運用性の可能性を探る

Twitterが強い理由

先々週のOff Topicポッドキャストでも話したように、Twitterは中々リプレイスされにくいサービスになっているのは自分の敵もいてアクセスできるサービスだから。Twitter上で人をブロックしても、実は引用ツイートは中々ブロックしづらかったりするので、Twitterはリアルタイム性の強み、敵を「倒す」楽しみ、そして匿名じゃない人とそうである人の組み合わせが非常に良い。実際にMastodonもBlueskyは直近ではTwitterの影響でユーザーは増えているが、その前は割とフラット・落ち気味な成長だった。

Wired

そして何よりもTwitterが生まれたタイミングも良かったはず。まだSNS時代の初期だったので、代替するサービスが好くなった。そのため、より多くの人がTwitterを試すことに迷わなかった。今のSNS時代は代替サービスがあるため、何故わざわざゼロからスタートし直すのかという疑問があがってくる。

Metaの優位性と過去の失敗事例

MastodonやBlueskyと比較するとThreadsの一つの大きな優位性はInstagramから簡単にログインできること、そして直近のニュースを使ってユーザーを集められること。Instagramは既に多くのセレブ・インフルエンサーを囲い込んで数週間前から数日前まで使ってもらっている。TwitterのMAUは約2.5億人から3億人ぐらいと想定すると、Instagramの20億人のMAUの2割のユーザーがコンバージョンすれば一旦はTwitterと同じぐらいの規模感になる(そこからアクティブになるかは別の話)。

Statista

Metaは過去に何回も競合SNSサービスのローンチを見て、機能やサービス自体をコピーしてきた。最も有名なのはSnapchatが出したストーリーズ機能をInstagramとFacebookがコピーしたこと。ストーリーズからの広告はInstagramの全体の広告売上の25%以上を占めるほど成功した事例。さらにTikTokをコピーしたReelsもMetaにとっては非常に上手くいっている。インドではかなり使われていて、アメリカでも平均エンゲージメント時間を高めてくれている。

Vox

ただ、Metaは「0 → 1」が弱いので有名な会社でもある。今現在の4つの重要なアプリ(Facebook、Instagram、WhatsApp、Facebook Messenger)のうち2つしか自社開発していない。2012年にInstagramを買収して、2014年にWhatsAppを買収したが、その後にMetaが買収や自社開発して成功したモバイルアプリはほぼない。

過去の失敗例:
・Poke:Snapchat競合サービス
・Hello:VoIPアプリ
・Moves:買収したフィットネスアプリ
・tbh:買収した10代向けのクイズアプリ
・Tuned:カップル向けの会話アプリ
・Super:Cameo競合サービス

MetaがThreadsで目指していること

Meta CEOのMark Zuckerbergは最近Lex FridmanさんのポッドキャストでThreadsについて話したが、非常に面白い言葉遣いでサービスの説明をした。「テキストベースな情報ユーティリティ」サービスは重要と主張、Threadsでは10億人がアクセスできるパブリックな広場は必要だと語った。これはTwitterに対する批判でもあり、Markさん自身もTwitterはポテンシャルに近付いていないと語った。

ただ、個人的にはMarkさんの発言、そしてThreadsの最も気になるポイントは以下にユーザー獲得できるかではなく、インフラ設計にあると考えている。MarkさんはTwitterとは違った、オルタナティブなアプローチを取りたいと語り、BlueskyやMastodonのようなオープンな手法が興味深いと発言した。実際にThreadsでは今後Mastodonのコンテンツなどと連携できるようにするオープンなプロトコルを活用していく。

Threads.net

このアプローチの面白さと重要さは来月のOff Topicポッドキャストでも話す予定ですが、重要なのはMetaはThreadsを拡散、そして成立させるためにInstagramのソーシャルグラフを活用したこと。これはもちろんディストリビューションを一気に獲得するためでもあるが、もう一つ重要な要因がある。それはMetaがアイデンティティネットワークになろうとしている動き。昔Zyngaなど多くのサービスがFacebookのオープングラフを活用したように、MetaはGaaS (Graph-as-a-Service)の準備を行なっているのかもしれない。

アルゴリズム vs グラフの議論

Metaが自社のソーシャルグラフを活用してユーザー獲得するのは良いかもしれないが、コンテンツ自体はどうなるのか?今現在だとホームフィードがあり、Metaがレコメンドしたコンテンツとフォローしている人のコンテンツを出しているように見える。

App Store

直近のTikTok、Shorts、Reelsの成長を見ると、ソーシャルグラフからレコメンデーションメディアへとシフトしている流れにThreadsはどこまで入り込むのかは気になるところ。Instagramのグラフはただのユーザーのオンボーディングツールにしかすぎなく、フィードのコンテンツは基本的にThreads、Mastodon、その他同じプロトコルを活用したエンゲージメントの高くその人の興味に合ったコンテンツを表示させるのか、何かしらミックスするのかはまだ見えてこない。実際にTwitterの一部の良さはソーシャルグラフにかなり基づいているところでもあるので、今後のMark ZuckerbergとAdam Mosseriの考えや発言には注目。

最終的にはThreadsの動きはグラフの価値を表す実証実験になりそう。

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