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タウンワークから魔術書へ?「背景化」するコンピューターと現代の魔法【Off Topic Ep170】

宮武徹郎と草野美木が、アメリカを中心とした最新テクノロジーやスタートアップビジネスの情報を、広く掘り下げながら紹介するPodcast『Off Topic』。このnoteでは、番組のエピソードからトピックをピックアップして再構成したものをお届けする。Off Topic『#170 インターフェースはどう我々に影響しているか』は、「Ambient Computing」が加速する時代のインターフェイスについて。これからのインターフェイスは、どのようにかたちづくられ、わたしたちを規定していくのか?

アンビエント化するコンピューター

2017年、ウォールストリート・ジャーナルのテクノロジーコラムニストや米テックメディア・The Vergeのエグゼクティブエディターを努めたテックジャーナリストの草分け的存在であるウォルト・モスバーグは、引退前の最後の連載コラム「The Disappearing Computer」にて、“Ambient Computing”という言葉を用いて、これからのコンピュータやテクノロジーは形を消して背景に溶け込んでいくと言及した。

The Verge

ディスプレイやボタン、プログラムを介したコマンドをユーザーが意識することなく、テクノロジーが環境のなかに溶け込んで常に実行され続けるコンピュータのありかた。これは、いまから15年前、iPhoneがリリースされてから約10年が経った当時に登場しはじめたAmazonやAppleのスマートデバイス、AIアシスタントにはじまり、イーロン・マスクによるNeuralink(ニューラリンク)のブレイン・コンピュータ・インターフェイス(BCI)など現実味を帯びさせる事例がさまざまなかたちで出てきている。

iPod、iPhone、iPad、Apple Watchなどの設計に携わり、iPhoneの現在のインターフェイスにまつわるテクノロジーを考案したクリエイティブディレクター/デザイナーのイムラン・チャドリ、iOSやMacOSの実装と管理を主導したソフトウェアエンジニアリングディレクターのベサニー・ボンジョルノというAppleの重要人物が創業し、2023年のTEDカンファレンスで話題をさらった「Humane」は、スマートフォンやタブレット、コンピュータなどのディスプレイを通じた情報の伝達を変えることをミッションにウェアラブルAIレーザープロジェクターを開発している。同社は「Ambient Computing」あるいは「Disappearing Computer」という概念を信じ続ける企業といえるだろう。

Googleのインターフェイスは「タウンワーク」である

さて、コンピュータの背景化が確実に進んでいくなかで想像したいのは、「インターフェイス」がどのように変化していくかである。インターフェイスを考えることは、わたしたちのこれからの行動を想像するということでもある。人間はさまざまなかたちのインターフェイスをかたちづくってきたが、インターフェイスがわたしたちをかたちづくる側面が少なからずあるからだ。

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