COVID-19: (D2C)ブランド/スタートアップの課題とこれからの消費者行動への準備

数週間前から新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大により、アメリカのスタートアップ業界にも大きな影響が出ています。特にコンシューマー向けサービスやリテールブランドが深刻な影響が出ている中で、なにか日本にも役に立つ情報を伝えることができないかと色々考えていました。そこで、アメリカの一流VCや起業家、エキスパートたちが共有している情報をnoteやTwitterで少しでも共有できたらと思っています。

今回は、著者から翻訳許可を頂き、NYを拠点とするCoefficient CapitalのVice Presidentであるアンナ・ホワイトマン氏の「COVID-19: ブランドの課題と新しい機会(原題:On COVID-19: The Challenges and Opportunities for Brands)」と題したMediumでの記事をご紹介します。

はじめに

私は投資家として、ユーザーと深く意味のある関係ができているブランドに投資をしたい。きちんと関係作りができているブランドは、ユーザーのルーティンや買い物リスト、ライフスタイルに入り込むことができている。新型コロナウィルスの影響で非常に不安で、未知な時期を乗り越えるためのアドバイスや思いを今と未来の起業家達へ書きたいと思います。

健康を第一に

健康を最重要視しましょう。自分の体と心、メンタルの健康を常に把握するのと、在宅勤務している従業員の状態も頻繁、かつシステマチックにチェックしましょう。もしどうしてもオフィス利用が必要な場合、従業員同士が接触しにくい環境を作り、共有空間の利用を最小限に抑え、すべての行動のログを取るようにしましょう。そして、水分補給を十分にとり、1時間に1度は外の空気を吸り、昼寝や瞑想などを取ることで、自分の気持ちを安定させられる行動を取るようにしましょう。

組織やキャッシュフロー、事業計画の再調整をする

まず新型コロナウィルスによって自分の事業やビジネスモデルを大きく変わること、場合によっては危機的状況に陥る可能性があることを理解しましょう。だからといって悪い方向ではなく、新しい組織やクリエイティブな解決方法を考えられるチャンスとして考えてみましょう。変わる可能性のある売上とコスト構想を複数のシナリオに分けてモデル・事業計画を再調整しましょう。

具体的には以下シナリオを踏まえ、新しいキャッシュフローの計画を再調整:

1) 計画されていた発注が6〜9ヶ月遅れること、もしくはキャンセルされる
2) 新規獲得キャンペーンへの投資を削減し、既存のLTVが高い顧客への再投資する
3) キャッシュがかなり使われる設備投資系プロジェクトを遅らせる・キャンセルする
4) 異常な需要と人員削減されている製造者、サプライヤー、配送センターに代わって、より遅くなおかつコストも増すサプライチェーンに切り替える(20%のコスト増ぐらいを予想しても良い)
5) 6〜9ヶ月の新しい採用計画の遅れ、組織全体の給料の停滞
6)多くのVCが既存投資先の現状やニーズの理解に時間を取られていることが多いです。なので、新規投資家からの調達ではなく既存投資家からの調達を考えましょう。よりクリエイティブな資金調達を考える前に、まずは既存投資家にフォロー投資が可能か確認しましょう

事業計画を作り直す際には、仮説の見直しだけでなく、複数のシナリオに合わせた事業計画を作りましょう。McKinsey & Companyは、新型コロナウィルスのビジネスへの影響を「Delayed Recovery」(遅れた回復シナリオ)」と「Prolong Contraction」(長期的な感染状況シナリオ)」という2つのシナリオ計画を投稿しました。この投稿では、新型コロナウィルスの感染のベースシナリオとダウンサイドシナリオを描いているもので、Delayed Recoveryの場合は、アメリカ・ヨーロッパでは新規感染者が4月中旬にピークとなり、Prolonged Contractionの場合は、アメリカ・ヨーロッパで新規感染者が5月にピークに達すると計算しています。どちらともC向けブランドにとって良くない状況で、2020年全体では平均消費額が減り、秋に新型コロナウイルスが再発すること、サプライチェーンへの障害や需要サイドの減少、レイオフや倒産が増えることが予想されています。特にC向けブランドは、ダウンサイドリスクのシナリオになると予想して準備・計画をするべきでしょう。キャッシュの流動性をしっかり管理し、この悪影響が2021年中旬くらいまで続く予想をした方が良いかもしれません。

今の環境に合った行動とメッセージングを

この時期だからこそリーダーシップが必要とされています。創業者やCEOは、まず従業員の健康管理にフォーカスして正しい先例を作るべきです。従業員に対して思いやりを持ち、忍耐強く、従業員に対して耳を傾けましょう。従業員との信頼感を生む良い機会でもあります。組織と事業として、社会に対して責任を持った行動やインパクトを残さなければいけません。それは、より感染しやすい人たちへのサポートや既存ユーザーへ丁寧な情報提供をすることで将来のユーザーを獲得するチャンスでもあるのです。

新型コロナウィルスの影響が起きる前と後を記録する

大流行が起きる前と後の日常業務を記録に残しましょう。深刻な非常事態が収束へ向かい、落ち着いた時には、サプライチェーン、オペレーション、営業、マーケティングへの理解度の向上ととともに何が本当に重要かが分かるはずです。日常の出来事をリセットして自社にとって最も重要な関係性にフォーカスできるタイミングでもあり、会社の目的に必要不可欠ではない物を削るタイミングでもあるのです。

新しい基準・消費者行動への準備

ニールセンが発表した「新型コロナウイルス海外での影響(日本語版)」の消費者行動パターンの6つのフェーズによると、アメリカとヨーロッパでは既に「フェーズ5: 制限された生活」にあり、「次のフェーズ6: 新しい日常」に進むと考えられています。ニールセンはこの影響により、サプライチェーン、EC率、衛生習慣のシフトが行われると予想し、それは新型コロナウィルスが収束したとしても、根本的に消費行動が変わると述べています。

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出典:https://note.com/nielsen_connect/n/n9defacef1662

新型コロナウィルス後のマクロ・ミクロ状況

消費財(CPG)市場で行われているコミュニケーションやSlackチャネルでのディスカッション、Zoomでの会議、投資先との電話、その他リサーチした中から消費財コミュニティー向けに新型コロナウィルス後の状況をマクロとミクロで分けて記載しました。

マクロ状況
・新型コロナウィルス後の経済は、2008年のリーマンショック後の経済ではなく、2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件後の経済に似ている。
・既存の大手小売店が在庫切れになっている中、ロングテールのサービスプロバイダーと小売企業がより速いペースで市場のシェアを取れる状況となる
・消費者はgoPuffのような第三者のディストリビューターの活用が増えるのと、新規ユーザー獲得のためにBubble Marketのような新しいマーケットプレイスの需要が増える
・物々交換が多少増える。除菌ジェルなど大量の商品を買ったアマゾンの売手がマーケットプレイスの制限、政府からの制限により流動性が限られている中でSNS上で物々交換をしているのを見始めている。ただ、これが会社間レベルで行われるかは不明。

ミクロ状況
・投資家から資金調達するには1回目のオンライン注文から利益を得られるようビジネスモデルを移行しなければいけない。VCコミュニティーは高い利益率、安定したCAC(ユーザー獲得コスト)、そして主にオーガニックにユーザー獲得を行っている事業を優先する
・高い信頼性のある組織・事業のまわりにコミュニティーが出来上がり、ユーザー獲得方法が多様化する。ユーザーがより価値のあるコンテンツリッチな情報のクラスターを探しているため、ユーザーが様々なチャネルに断片化してブランドはFacebookやInstagram以外のチャネル投資が必要となる
・ユーザーのアテンション・時間の使い方はシフトする。在宅勤務へのシフトによってユーザーがいつ、そしてどれだけ深くコンテンツと接しているのかが変わってくる。時間設定をしてたメール配信やSNS投稿のスケジュールが大幅に変わる

役に立つリソース(英語)

最後にこの分析をするために役立ったコンテンツ・リソースを記載します。
SMB向けの金利ゼロのローンへの応募: (NY企業は上限約800万円)、5人以下の従業員がいる企業は給料の40%カバー
CXL Institute: 無料のマーケティングのミニ学位を取得出来るサイト(キャッシュ流動性が危ないアーリーステージの会社で働いているマーケター向け)
The Corona Crisis Checklist for Startup CEOs: CEO向けの新型コロナウィルスのチェックリスト
Tightening Operations, Finding Funding and Staying Optimistic in a Crisis: コスト削減、資金獲得方法のまとめ記事
How to Win at Remote Work: リモートワークを成功させるためのTips集
This Is Not Book Club: 時間を潰すためのオススメ本リスト
Panic With Friends: 著名VCのFred Wilson(Union Square Ventures)のポッドキャスト
Support Local: 近くのローカルSMBをサポートできるサイト
Thrive Market: 買い物しながら新型コロナウィルスに影響した方をサポートできるサイト

最後に

私はこの困難な状況と新しい日常の中で、投資先やサポートしているブランドと共に働けることを今まで以上に楽しみにしています。この厳しい状況を乗り越え、より強い関係性を作り上げることによって今後の成長に繋がることを期待しています。

Original article by Anna Whiteman | Translated by Tetsuro | Edited by Miki



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