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ユニコーンは儚く飛び去った。これからの企業評価を見直そう【Off Topic Ep186】

宮武徹郎と草野美木が、アメリカを中心とした最新テクノロジーやスタートアップビジネスの情報を、広く掘り下げながら紹介するPodcast『Off Topic』。このnoteでは、番組のエピソードからトピックをピックアップして再構成したものをお届けする。

エピソード『#186 幻の動物 誕生から10年!ユニコーンたちの出口はどこへ』は刺激的な提言から幕開けた。今回のテーマは「ユニコーンを目指す時代が終わるかもしれない」だ。スタートアップの至上命題ともいわれてきた、時価総額1000億円超えの「ユニコーン」企業の創出を疑問視する動きが起き始めているという。

草野は冒頭で知り合いの企業家から「株式上場やグロースよりも、目の届く範囲で自己資本でビジネスを作り上げる方が幸せなのかもしれない」と聞いた話を明かした。それも一つのあり方だが、そもそも業界全体がユニコーン企業の創出に傾倒しすぎていたきらいがあると、宮武は論を進める。

では、これからのスタートアップは、どうなっていくというのだろう?

(※下記、米ドルを日本円に換算した表記は、記事執筆時点のレートを参考に「150円/1米ドル」で計算している)


10年で激増したユニコーン企業、彼らを待つ「長い待機列」

スタートアップに対しての「ユニコーン」という言葉が作られたのは、ちょうど10年前に遡る。2013年にはPinterest、Dropxbox、LinkedInなど、該当する企業はわずか39社しかなかった。さらに、どれもが主にtoC向けサービスが中心だった。驚くべきことに、その39社中でモバイルファーストを採用していたのはわずか4社。この事実は、当時のモバイル技術の一般的な普及度とも連動しているといえるだろう。

TechCrunch

興味深い点として、宮武は当時のユニコーン企業の9割が「事業のピボットを選択しなかったこと」を指摘する。当時のユニコーンの大部分が、元々のプロダクトビジョンを変更せずに事業を推進していたのだ。

そして、これもモバイル技術の発展とも進化と連動するかのように、現在のユニコーン企業の状況は様変わりした。世界には約1200社のユニコーン企業が存在し、そのうち約650社から700社がアメリカ企業だといわれる。中国が次いで270社、インドは80社ほどである。さらに、過去2年間で新しく900社のユニコーン企業が誕生したともいう。実際の数は参照するデータベースごとに若干の違いがあるようだが、いずれにしても激増したわけだ。

CB Insights

ただ、これだけユニコーン企業が増えたとして、はたして株式上場などの「出口」が用意されているかどうかは別問題になる。たとえば、アメリカでは2020年に480社がIPOを果たし、2021年は100社、2022年が180社、2023年が今のところ100社ほどと続いた。そのうち、テクノロジー企業の割合は半数を超え、概ね年間50社程度を数えていた。しかし、直近2年間は「合計で」8社と大きく数を減らしている。

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