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【無料公開】世界で最も稼ぐYouTuber「MrBeast」も担当、クリエイターマネージメントNight Mediaとは【Off Topic Ep184】

宮武徹郎と草野美木が、アメリカを中心とした最新テクノロジーやスタートアップビジネスの情報を、広く掘り下げながら紹介するPodcast「Off Topic」。このnoteでは、番組のエピソードからトピックをピックアップして再構成したものをお届けする。今回は「#184 次の起業家はクリエイターである。Night Mediaリード・ダクシャー」から、“次世代タレントマネージメント企業”の「Night Media」について。メインチャンネルだけでも1億8000万人の登録者数を誇り、世界で最も稼ぐYouTuberともいわれる「MrBeast」やMinecraftコンテンツの作成で世界的に知られる「Dream」など、数々のトップクリエイターのマネジメントを手がけている。


そんなリード・ダクシャー氏を呼んだイベント「On Air 2023 by Off Topic」は、11月8日(水)に開催予定です。クリエイターエコノミーや事業化するクリエイターの話についてディスカッションするので、ご興味ある方は以下のイベントページからご登録ください。


同社のアプローチが興味深いのは、これまでOff Topicでも紹介してきた「スタートアップスタジオモデル」によって、個人クリエイターのスケールを成功させてきている点にある。従来のタレントマネジメントに捉われない、Nightの次世代マネジメントとはどのようなものか。同社CEO Reed Duchscher(リード・ダクシャー)の考えを参照しながら掘り下げていく。

D Magazine

アメフトのレジェンドを、子どもたちはまったく知らなかった

リードはアメリカンフットボールのアマチュア選手を経て、NFLのレジェンドであるバリー・サンダーらを抱えるスポーツマネジメントエージェンシーでのキャリアを積み重ねていた。しかし、スポーツのトリックショットなどで知られるYouTuber「Dude Perfect」の動画コンテンツをTwitterで目にしたことで転機が訪れる。Dude PerfectのYouTubeコンテンツに今後起こるアテンションの潮流の変化を感じ、またアメフトのレジェンドたちをまったく知らない7歳と10歳のいとこがDude Perfectの名前には目を輝かせたことに驚いたリード。彼はすぐさまスポーツ領域を離れ、YouTuberクリエイターのマネジメントに携わっていく。

当時のYouTuberはコンテンツによる収益、つまりアドセンス以外の収益チャネルがあまり多くなかった。グッズやブランド展開も少なく、スポンサードコンテンツも(動画内でのスポンサーの読み上げなど)ごく限られた手法でしか行われていなかった。リードは、YouTubeの動画コンテンツに予算をかけることが主流ではなかった当時に、YouTuberサイドへのバリューを提示し、またYouTuberへのスポンサードを企業に交渉してブランド案件を獲得するところからはじまった。

大きかったのは、Dude Perfectのキャロウェイ・ゴルフ(現 トップゴルフ・キャラウェイ・ブランズ)のスポンサードによる動画コンテンツだろう。Dude Perfectのチャンネルはバスケットやアメフト、野球を扱ったコンテンツは豊富であったが、ゴルフが手薄だとリードは感じていた。同時に、アメリカのゴルフ市場も高年齢化という課題を抱えていた。両者を説得して制作されたコンテンツは、ゴルフのトリックショット動画である。普段と変わらないオーガニックなクオリティの動画を制作し、出演メンバーが着用するウェアや道具、ロケーションがすべてキャラウェイのもので、最後にプロモーションを行うという形式をとっていた。現在ではよく見かけるこのフォーマットも、当時は非常に稀なケースであった。ちなみに、このブランド案件契約成立の決め手は、キャロウェイ・ゴルフ CMOの子どもがDude Perfectのファンであったことだという。

当時のクリエイタービジネスの課題

その後リードはNightを設立し、人気ゲームストリーマーの「Typical Gamer」や「Preston」など、主に登録者数200〜300万人ほどのクリエイターらを抱えるなかで、デジタルクリエイターの周囲には本当の意味でのマネージメントの役割を果たす人材がいないことに気づく(個人クリエイターの場合、友人や親族がマネージメントを務めることも多い)。

Dallas Innovates

個人クリエイターと提携し、タイアッププロモーションやコラボレーションなどによって収益をサポートするクリエイターネットワーク/マルチチャンネルネットワーク(MCN)もすでに存在していたが、クリエイターにとってはブランド案件の営業・獲得を行ってくれるサービスプロバイダーでしかなく、オペレーション領域まで踏み込み、かつクリエイターの成長を密に練っていくというものではなかった。

既存のタレントマネジメントにおいては、契約したタレントのビジネス化を図る手法といえばブランド案件(のキャッシュ)を獲得しにいくことがほとんどである。マネジメントサイドの成長のロードマップも、基本的には多くのタレントを抱え、キャッシュを集めていくことに依存しているのだ。そうしたなかでNightは、個人クリエイターと協業して「事業」をつくりだしていく、つまり、「スタートアップスタジオ」として機能する「マネージメント」のアプローチに注力していく。

Nightの“契約するクリエイターの条件”

例としてもっともわかりやすいのは、世界的YouTuberの「MrBeast」だろう。現在、彼は超人気チョコレートバー「Feastables」やバーガーショップ「MrBeast Burgers」、ジュースブランド「Creative Juice」を展開している。これらはNightのスタートアップスタジオ「Night Labs」が出資し設立された事業である。

Night Labs

リードやNightは、これからのブランドは個人のクリエイターがつくりだしていくと信じており、だからこそ、それに合わせたマネジメントが必要だと考えている。それは従来のタレントマネジメントとは異なる。ブランド案件やコラボレーションの獲得、そしてオペレーションへのコミットメントはコア事業としてもちつつ、クリエイターがオーナーシップを持つ事業をともにつくり、さらにはベンチャー出資を行う。これがNightが考えるこれからのクリエイターマネジメントなのである。

自身のクリエイションに注力しトップクリエイターとしてスケールするには、もはや編集者だけを採用するだけでは足りず、クリエイションのサポートや営業、オペレーションを担うさまざまな人的リソースをチームに抱えながら成長していく必要がある。それはもはや制作会社であり、ブランド案件やクリエイティブコンテンツそのものの(アドセンス広告)収益にとらわれない、持続的な事業も同時に模索する必要がある。つまり、クリエイターは起業家であることが求められるのだ。Nightが明らかにしている“契約するクリエイターの条件”に「企業家精神」があるのは、同社がYouTuberをコンテンツクリエイターとしてだけではなく「次世代の起業家」として捉えているからにほかならない。

TechCrunch

そうした意味で、リードが見出したMrBeastは突出したコンテンツクリエイターであると同時に起業家としての素質をもっていたといえる。リードが親しいクリエイターから「絶対に会ってほしい」と紹介されたときのMrBeastは、当時登録者数150万人ほどの規模で、友人のChris Tyson、編集者、母親の4人体制でチャンネル運用しているクリエイターであった。MrBeastはリードに対して、CTR(広告クリック率)とAVD(平均視聴割合)とビュー数、3つの指標をマッピングした図を提示しながら、再生回数を伸ばすためのアルゴリズムを理解し、今年(2018年)の末までに確実に1000万人を超えることができると説明。そしてそのためには資金が必要であるとして、Nightとの契約を提案したのだという。Nightとの契約後、実際に約1300万人の登録者を獲得するところまでが彼の逸話なのだが、当時、リードはMrBeastが1000万人クラスのクリエイターになる確証は持てなかったという。しかしそれでもなお契約を決めたのは、こうした彼の起業家精神が見て取れたからかもしれない。


そして、11月8日(水)に開催予定のOffTopicのイベント「On Air 2023 by Off Topic」では、なんとNight CEOであるリード・ダクシャーをゲストに招くことが決定した。日本初来日という貴重な機会の続報は「Off Topic」ポッドキャストやnote、SNSなどで告知していくので、楽しみにお待ちいただきたい。

告知:On Air 2023 by Off Topic

Off Topicでは「クリエイターが次世代起業家になる」ことについて話しています。何故クリエイターが既存の大手ブランドの競合になり得るのか、そして今のクリエイターはどのように進化しているのかについて詳しく話してくれる海外・国内ゲストをお招きしました。

セッション①:クリエイタービジネスの可能性 (通訳付き)
1.7億人の登録者を抱える人気YouTuberのMrBeastを担当するタレントマネージメント会社Night Media CEOのリード・ダクシャー氏が日本初来日してクリエイタートレンドやクリエイター事業について一緒にトークします。Night Mediaが行うクリエイター支援、そしてクリエイターが事業化する理由、チーム構成、クリエイターの役割、リスク、気をつけるべきポイントなど話す予定です。

セッション②:ショートフォーム動画の可能性と今後
2部セッションでは、ゲストとしてグローバル規模でも活躍し、海外クリエイターともコラボレーションされているバヤシ氏とともに日本から世界的な規模へ成長させるためにどうコンテンツを発信されているのか。ショートフォーム動画クリエイターとして何を気をつけているのか、今後どのように進化していくのかについて話す予定です。

【イベント概要】
◼︎イベント名:On Air 2023 by Off Topic
◼︎日時:2023/11/8 (水) 18:00〜21:00 (開場17:30)
◼︎会場:Tunnel Tokyo(Googleマップ
東京都品川区西品川一丁目1-1 住友不動産大崎ガーデンタワー 9階 (JR・りんかい線 大崎駅 南口 徒歩6分
◼︎開催形式:ハイブリッド開催
◼︎主催:Off Topic株式会社
※1階の受付機にてイベント開催前にメールにて送られるQRコードをスキャンして、エレベーターまで9階までお越しください。

【タイムテーブル】
17:30〜18:00 開場
18:00〜18:15 挨拶、Off Topicの紹介
18:15〜18:30 Night Mediaの紹介
18:30〜19:30 クリエイタービジネスの可能性(リード氏、Off Topic宮武)
19:30〜20:00 ショートフォーム動画の可能性と今後(バヤシ氏、Off Topic宮武・草野)
20:00〜21:00 懇親会

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