ゴールデン・ドロップを知っているかい?最高の紅茶を淹れる五大原則
今から15年ほど前、まだ20歳そこそこの若造だった頃、僕は銀座のカフェで2年ほどアルバイトをしていた事がある。
1996年にスターバックスコーヒーの一号店が出た銀座松屋通りのすぐそば、マロニエ通りという細い路地の先にあったそのお店は、スタバのようなスタイルのシアトル系と呼ばれるコーヒーチェーンだった。
シアトル系のコーヒー屋さんはエスプレッソをベースにしたドリンクが中心なのだけれど、古き良き喫茶店を経営母体とするそのお店ではブレンドコーヒーとホットティーがメニューにあり、完全禁煙のスタバに対して喫煙席を大胆に設けた真逆の戦略で対抗していた。
銀座でありながら場外馬券場ウィンズ銀座のすぐそばで喫煙席があり、おしゃれなカフェのはずが土日は赤鉛筆を耳にさしてキャップをかぶった競馬ファンの憩いの場に。。。
1杯200円のブレンドコーヒーだけ頼み、ラジオのイヤホンを耳に突っ込んで競馬新聞にひたすら赤丸をつけブツブツつぶやいている、そんな馬おじさんだらけのオシャレカフェ。
飲み終わったブレンドコーヒーにクシャクシャにされた外れ馬券が突っ込まれて返却される。灰皿はパツンパツンで溢れている。
マナーの悪いお客さんが冷めたブレンドコーヒーにタバコをつっこんで返却することもあった。やれやれだ。
そんな銀座の中の魔界と化したファンキーな空間が、20歳の僕の職場だった。
競馬のある土日は銀座の魔窟になるカフェだったが、僕はオープニングスタッフだったこともあり、技術的な部分は一通りをトレーニングして覚えさせてもらった。
そして1台数百万円するというエスプレッソマシンの扱い方や、スチームミルクのきめ細やかな泡だて方を学ぶ中で、あるとき美味しいホットティーの淹れ方を学ぶ機会があった。
今日は #紅茶のある風景 の為に、僕がカフェで学んだ美味しい紅茶を淹れる五大原則と必殺技のゴールデン・ドロップを伝授しよう。
容器を温めるのが基本
突然だけれど、ディッシュウォーマーという厨房機材をご存知だろうか?
ディッシュウォーマーとは名前の通り、ディッシュ=お皿の、ウォーマー=温める機械だ。
僕は店舗のデザインが仕事なので飲食店の厨房設計の監修もするのだけれど、ちょっと値段の高いレストランならこの機材を入れている。
厨房が狭かったり、機材を揃えるお金が足りない時なんかは、ガステーブルのそばにお皿を置いたり、湯沸器の熱湯でお皿を洗って温めたりなんかの工夫をしていたりもする。
それくらい、温かい料理を温かいまま味わうためには容器の保温が重要になる。
これは紅茶も一緒で、香り成分をより濃厚にしっかりと感じる為にも、捻られた紅茶の茶葉を開かせてしっかり抽出する為にも、まずはティーポットとティーカップをきちんと温めるのが基本中の基本。
紅茶の本場イギリスではティーコーゼという紅茶を淹れるポットのための保温袋みたいなものまであるくらい、とにかく高音を維持するのがコツらしい。
お店ではエスプレッソマシンのお湯だけを出す機能でマグカップに熱湯を張って温めてから紅茶を淹れていた。その影響で家でもお湯を張って温めてから淹れるようになり、紅茶との付き合い方が少し変わったと思う。
美味しい紅茶を淹れる五大原則
容器を温める以外にも美味しく味わうための方法はいくつかあって、これは紅茶を淹れるための5大原則=ゴールデンルールと言われている。
【美味しい紅茶の五大原則】
1.良い茶葉を使う
2.ティーポットを温める
3.茶葉の量をきちんと計る
4.新鮮な沸騰したてのお湯を使う
5.蒸らし時間を計る
聞いてみるとわかるけど、なんてことはない。容器を温めてちゃんと計って、新鮮な沸きたてのお湯で良い茶葉を使って、抽出しすぎずベストタイミングで飲め!ってことだ。
使う茶葉の質と、濃いめに飲みたいかアッサリいきたいかでも茶葉の量と蒸らし時間は変わってくるけど、だいたいティーカップ1杯=200ccとして、茶葉は3gから5g。蒸らし時間は3分〜5分くらい。
良い茶葉と言われてもピンと来ない人は、一度高級スーパーの紅茶コーナーか百貨店の紅茶コーナーを覗いてみよう。
紅茶専門店に行けば缶入りの高級そうな紅茶が何種類も並んでいるから、香りをかがせてもらってお好みで選べばいい。香りが全然違うから、一度良い紅茶を飲んでみてほしい。
必殺のゴールデン・ドロップ
何かのプロレス技かな?上から落とす的な?と思ってしまうこの名前。
カフェ時代に教わったのだけれど、紅茶を入れたときに注ぎ切る最後の一滴、ティーバッグから落ちる最後のひとしずくをこう呼ぶらしい。
抽出の一番最後のこの一滴には後味をスッキリさせる効果があるらしく、ゴールデンの名前の通りここが一番うまいヤツなんだとか。
うちでは朝は紅茶かコーヒーだけれど、紅茶といっても普段は安売りのティーバッグだ。それでも、容器をしっかり温めて、最後の一滴をきっちり落とすだけで、結構香りや味わいは変わってくる。(余裕があるならティーバッグを破って茶葉だけにして、倍量にして淹れるともっと美味しくなる)
騙されたと思って、まず紅茶を淹れるお湯を沸かしたら、カップとポットにお湯を張って容器を温めて、それから紅茶を淹れてみて欲しい。
わずか一手間だけれども、その一手間で少しだけ紅茶のある時間の満足度が上がる。
かつてはボストン茶会事件などの戦争の引き金になったり、過重労働や植民地問題などのきっかけになるほど人々を魅了する不思議な飲み物。
こうして毎日気軽に楽しめる時代に生まれたことに感謝しつつ、せっかくだから美味しく飲ませていただこう。
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