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航空会社が急に倒産して飛行機に乗れなかった話@アンセットオーストラリア航空

日本航空 Japan Airlines のことを、ジャルと呼ぶ人は多い。
けれど私は知っている。
一部の年配の方々は、「にっこう」と呼ぶのだ。
日本航空の省略形。
日航機墜落事故や、日航ホテルなどは耳にして違和感はないが
「にっこう」だけを聞くと昭和の匂いが漂う。

令和の若者よ、かつて日本にはジャスと呼ばれる
航空会社があったことを知っているかい?
日本エアシステム Japan Air System 通称 JAS
という会社があったんだな。
これまた年配勢は「とうあ」と呼ぶ人もいて
(JASの旧社名である東亜国内航空の省略形)
初めて耳にしたときは即座に理解できなかった。

JALはJASを吸収して1つの会社になったが
JASの赤字体質を支えきれなくて結局倒産した。
倒産したけど運航は続いた。
その後V字回復をして今に至る。

一方で、倒産して運航をやめた会社がある。
アンセットオーストラリア航空(以後アンセット)。
2001年のアメリカの同時多発テロ事件を受けて、
前々から経営が怪しかったアンセットは即倒産となった。

本当に急な倒産、急な運航停止だったため、
オーストラリアは大混乱だったそうな。

そして私、そのときアンセットの航空券を持っていたのだ。
シドニー発大阪行きの往復航空券。
シドニーから日本に帰国してそのまま数か月滞在。
その日本滞在中にアンセット倒産。
数か月先のシドニーに戻る航空券はどうなる?

思えば予兆があった。
シドニー発のときがちょうど豪雨だった。
豪雨の中での離陸となったが、ここで事件は起こる。
アンセットの機材はB747-400
エコノミークラスは横に3-4-3の座席配列。

飛行機が加速し離陸したその瞬間
なんと天井から水がじゃばじゃば降ってきたのだ。
どういう仕組みなのかわからないが、
ABC-DEFG-HJK座席のJ列の上だけ水が降っていた。
それは線状降水帯。
ちょろちょろという言葉では間に合わない水量。

離陸直後でシートベルトサインは当然ON
客室乗務員でさえも動くことができない状況。
J列の乗客は次々に毛布を頭にかぶり滝行を続行。
私の席はJの隣のH、案の定被弾。
飛行機は上昇を続けながら旋回
乗客はいい加減にせんかいと激おこ。
まさかの怒涛の水かけ祭りin Australia

そんな整備不良?の航空機を使っていたアンセット。
倒産後1か月ぐらいでANAから連絡が来た。
シドニー-大阪線はANAとのコードシェア便だったからか。

ANA曰くシドニー行きを他社便に変更してくれるとのこと。
ただ、なるべくANA便を使ってほしいともお願いされた。
具体的には関空から香港・バンコク・シンガポール
いずれかまでANA便に乗り、そこで他社便に乗り換えて
シドニーまで行ってほしいとのことだった。

そんなのやだ。直行便でお願いします。と、
関空からの他社の直行便をリクエストできる権利はあったが
ANAの申し出を快諾。シンガポール経由でお願いしますと。

ちょうど当時ANAのアップグレードクーポンが余っていたのだ。
ANA便のエコノミークラスからビジネスクラスへ
アップグレードしてくれるクーポンだ。
余っているクーポン消化のナイスタイミング到来。
どうせ使うなら一番距離の長いシンガポール線で即決。

欠航の原因が自社にあるのか、ないのか(悪天候など)や
航空会社がLCC(格安航空会社)かどうかなど、
欠航の際の航空会社の対応はケースバイケース。

個人的には災い転じてビジネスクラスとなった欠航騒動だった。
(シンガポール-シドニー間は当然エコノミークラス)



ま、J列は雨漏りするから気を付けろという話です。
この10年後エミレーツ航空はファーストクラス乗客用に
シャワーを導入したが(一部機材限定)、
エコノミークラスに水シャワーを導入したアンセットは
時代を先取りしすぎて倒産してしまったのだ。


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