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『認定遺伝カウンセラー』ってどんな職業?Part.1


現在、日本では約350名の『認定遺伝カウンセラー(CGC)』が、病院、クリニック、教育機関、企業などで活躍しています。

「認定遺伝カウンセラーは遺伝医療を必要としている患者や家族に適切な遺伝情報や社会の支援体勢等を含むさまざまな情報提供を行い、心理的、社会的サポ-トを通して当事者の自律的な意思決定を支援する保健医療・専門職である」
とされています(認定遺伝カウンセラー制度委員会HPより抜粋)。

遺伝医療に関する職業であることは、何となく察することはできますが、実際にどんな職業かご存知の方は多くないかもしれません。
 
今回は『認定遺伝カウンセラー(CGC)』について知っていただくために、4名の認定遺伝カウンセラーに、「仕事の内容」「やりがい」「遺伝カウンセラーを目指す方へのメッセージ」について尋ねてみました。

Part.1では、大学病院で勤務するCGCと複数施設で勤務するCGC、
Part.2では、遺伝性のがんの分野に取り組むCGCと遺伝カウンセラーの養成に携わるCGCが応えてくれました。

1.大学病院で様々な領域の患者さんを担当するCGC

利田 明日香 認定遺伝カウンセラー
所属:広島大学病院・遺伝子診療科

広島大学病院遺伝子診療科のチームメイトです。
左から:石原さん(がん看護専門看護師)、私(利田)、檜井先生(臨床遺伝専門医)、阿部さん(助産師)
※2023年2月の情報です

【自己紹介】
広島大学病院の遺伝子診療科で認定遺伝カウンセラーとして勤務しています。
認定遺伝カウンセラーには年齢・経歴・職歴、大学の専攻も医療系だけではなく非医療系の出身者もいて、いろんなバックグラウンドを持った人がいます。私自身も元々は動物が大好きだったので動物学を専攻し、その中で“野生のシカ”の“遺伝子として使われていない領域”について研究していました。これからは遺伝医療の時代に違いない!と思い立ち、今は、“クライエント”と“遺伝子がどのように身体や未来に影響するか”を一緒に考えていく遺伝カウンセラーとして働いています。
※遺伝カウンセリングでは患者さんだけではなくその家族も含めて支援を行っているので、対象となる方を患者さんと呼ばずに「クライエント」と呼んでいます。
 
【仕事の内容】
当院は地方の大学病院ということもあり、小児から成人期、周産期から腫瘍領域まで様々な領域の、中四国の色々な場所から来談するクライエントを対象にして遺伝カウンセリングを行なっています。
私が認定遺伝カウンセラーとして仕事を始めた時には年間の遺伝カウンセリングの数は400件程度でしたが、今では年間1000件以上を行うまでになりました。色々な科の先生や多職種の方とのチーム医療で遺伝カウンセリングは成り立っているため、ミーティングやカンファレンスは欠かせません。

〈ある日の利田CGCのスケジュール 〉

【やりがい】
遺伝子の検査の結果は、数字と英語(例えば、BRCA1 c.558A>Gなど)で結果が返却されてきます。結果が陽性なのか陰性なのかはとても重要ですが、お子さんはいるのか・きょうだいがいるのか、結婚前なのか進学前なのかなどのクライエントの背景や状況によって、数字と英語の結果はそれぞれにとって感じ方が違うものになります。
遺伝子の結果の意味を考える時もやりがいを感じますが、やはり遺伝カウンセリングの最後に「今日は来てよかったです」と笑顔で言ってもらえた時が一番うれしいです。 

【認定遺伝カウンセラーを目指す方へ】
認定遺伝カウンセラーや遺伝カウンセリングに興味はあるけど医療や遺伝を学ぶのも初めてだし…と躊躇している方もいると思いますが、認定遺伝カウンセラーの強みはそれぞれの専門知識や得意分野が異なっていることだと思っています。男性でも女性でもどんなバックグラウンドの方でも、最新の遺伝学の知識をクライエントや社会のために学びたいと思っている方、是非みなさんの新しい一歩をお待ちしています!

2.複数の施設で勤務するCGC

池川 敦子 認定遺伝カウンセラー
所属:近畿大学病院遺伝子診療部/兵庫県立尼崎総合医療センター小児科

池川CGC(右)、近畿大学病院臨床遺伝専門医の西郷和真先生(中央)、小田CGC(左)
みんなで相談しながら遺伝カウンセリングに励んでいます。
(※2023年2月の情報です)

【自己紹介】
近畿大学をメインに複数の施設で認定遺伝カウンセラーをさせていただいております。
医療従事者として働いていた時に流産や乳がんを経験し、療養中に家人が持ち帰ったのが「遺伝カウンセラー~その役割と資格取得に向けて~」という雑誌でした。家族、血縁者にも乳がん既往者はおらず、「どうして私が?」という思いから、その答えを得たいと近畿大学大学院遺伝カウンセラー養成課程に飛び込みました。また近畿大学でのダウン症児の赤ちゃん体操の陪席実習を契機に、赤ちゃん体操指導員の資格も取りました。
 
【仕事の内容】
2010年の認定当時、遺伝カウンセラーとしての常勤勤務は少なく、現在もいくつかの職場を曜日、時間に合わせてスケジュールを組んでいます。仕事内容は脳神経内科・周産期・小児科領域の遺伝カウンセリング、がんゲノム医療での遺伝性腫瘍カウンセリングやエキスパートパネルへの参加、赤ちゃん体操指導員としてダウン症児を対象とした赤ちゃん体操などです。近畿大学病院では、遺伝カウンセラー養成課程での実習先となっていますので、学生の教育も行っています。

〈ある週の池川CGCのスケジュール〉

【やりがい】
 クライエントには百人百様の「人生・命」というドラマがあり、遺伝カウンセラーはお話を傾聴する中で「点」を共有させて貰っている(一期一会)と感じています。病気に対する不安や緊張の中で、気持ちを吐露し一瞬でもリラックスできる時間を共感できたらと思っています。クライエントから「お会いするとホッとする」「お話できてよかった」と、お声がけ頂けた時に、このお仕事をしていて良かったとやりがいを感じます。 
 
【認定遺伝カウンセラーを目指す方へ】
カウンセリング、それはあなたの「人間性」が問われる瞬間かもしれません。クライエントとの会話の中で、日々自分だったらどうするかと一人問答し、時にクライエントから「先生ならどうしますか」と問われることがあります。健康な人にとっては病気のことなど考えないかもしれませんが、クライエントにとっては24時間365日のテーマです。その一瞬にあなたは人としてどう対応するのか、できるのか。Are you ready?
 
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最後まで、お読みいただきありがとうございました。
Part2に続きます。ぜひとも御覧ください。


認定遺伝カウンセラーになるには?

認定遺伝カウンセラーの資格を取得するためには、大学院の養成課程で2年間学び、認定試験に合格する必要があります。
詳細は、こちらのページをご覧ください。

(認定遺伝カウンセラー制度委員会「資格取得を目指す方へ」)

★「認定遺伝カウンセラー」は日本人類遺伝学会の登録商標です。


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