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1本45,165円の注射を打った話

※去年のお話「峰とお酒と群発頭痛」

10月19日追記。接種後の経過を残しておく。

9月30日 摂取当日
台風の影響なのか頭は重たいけれど深夜3時頃に発生していた頭痛はなし。

10月1日
日中、夜間共に痛みなし。
半信半疑のためいつ痛みが来るか?の恐怖のほうが勝っており気疲れする。

10月2日
起床後8時頃左目の奥に痛みを感じる。
医師からは「効果が出ているかわからなくなってしまうから痛みがあってもしばらく我慢するように」と告げられており、我慢してみる。
30分ほど我慢したのだけれど左目の涙、鼻水と群発頭痛特有の症状と耐えきれない痛みが訪れイミグラン皮下注射。10分ほどで痛みが散る。

明確に変化があったのは痛みの質だ。
いままではやばい、くる。と思ったら5分以内には刺すような痛みに変わっていたのだけれど、エムガルティ摂取後はじんわりと痛い。痛みの発症が若干抑えられているような雰囲気はある。
ただ痛いものは痛いし、我慢できるわけ無いだろクソ医者が!という叫び声を上げて二度寝した。

同日19時
微妙な痛み。左目眼底部ではなく後頭部全体にじわっとした痛み。耐えられる。
1時間後耐えられなくなってくる。
20:30、さすがにキツいとイミグラン皮下注射。5分ほどで痛みが散るも動けずそのまま入眠。2時起床。痛みなし。

10月3日
日中痛みなし。
20:00過ぎより疼痛。我慢出来るレベルを我慢していたら21:00に爆発し皮下注射。痛みの雰囲気と注射後痛みが引く速さが変わったけど、根本的な痛みをなくす、という点は改善されてないのかもしれない。

10月4日
痛みなし。

10月5日
痛みなし。予兆なし。久しぶりに晴れ晴れとした気持ちを取り戻した、と言いたいけれどどうせ痛くなるんでしょ、という気持ちが心のどこかにあり、ポケットには常に注射器が入っているというジャンキースタイルで過ごしていた。

10月6日
20:00〜左後頭部に鈍い痛み。次第に後頭部全域に。
目をつぶり30分後痛みが引く。痛みを感じて初めて皮下注射を使わなかった記念日だ。

10月7日
頭が重いけど痛みなし

10月8日
深夜2時 頭痛で目が覚める 皮下注射
目が覚めたときから頭全体が痛く9時に左目奥の痛みと涙 皮下注射

10月9日
痛みなし、寝不足で顔面が死んでた

10月10日
痛みなし

10月11日
19時頭痛 皮下注射
この日から案件が爆発しはじめ、過度なストレスに晒されていた。

10月12 日
痛みなし

10月13日
起床後午前8時頭痛 皮下注射

10月14日
朝頭がとにかく重くて寝過ごす。
心が疲れている。

10月15日
痛みなし。予兆もなし。

10月16日
深夜3:30 痛みで目が覚める。涙も出ており完全に群発頭痛の症状。
皮下注射を打って眠りにつく。

10月17日
深夜3時 痛みで目が覚めて皮下注射を打って眠りにつく。

10月18日 痛みなし。若干の不安あり。

10月19日 
不覚にも12時〜1時半まで少し昼寝をしてしまう。
群発頭痛のトリガーはアルコールと実は睡眠。日中変なタイミングで眠ってしまうと頭痛で目が覚める、という最悪タイムがやってくる。なので私は仕事の移動中、電車内などで絶対寝ないようにしている。
今日に限っては色々限界でうたた寝をしてしまったのだけど、寝起きも痛みなし。これには少し驚いた。
帰宅後午後21時 左側頭部に痛みあり。
しばらくじっとしているとさーっと痛みが散る感覚があり、いまこの文章を書いている。

後少しで発症してから2ヶ月が経過する。
頼みの綱のエムガルティは28日に再度摂取の予定。

9月中はほぼ毎日2回は痛みに襲われ、そのたびに皮下注射を打っていたけれど、たしかに発症頻度は減ってきていると思われる。おかげで薬代が少し浮いたので金銭面では助かっていると思いがちだけど、3万円近くエムガルティに払っているのでどちらかというとマイナスだった。
発症してから1ヶ月過ぎている点から群発期が落ち着いてきているともとれる。

結局の所、治まったとは言い切れず、確信が持てないので酒も飲まず、ビクつきながら外出をしている日々だ。
一週間、頭痛のない日々が続いたら試しにアルコールを摂取してみよう。そこで頭痛が出なければ翌日またアルコールを摂取して、そこでも痛みが出なければとりあえず群発期は抜けたと考えていいだろう。だんだんお酒なんて飲まなくていいか、って気持ちになってきそうだけどところがどっこい、やはり飲みたいものは飲みたいのである。
酩酊したいとか、そういうわけじゃなくてゆっくり味わいたいのである。
イタリアンレストランで皆が食事とワインの化学反応を楽しんでいるなか、一人ペリエで口の中をシュワシュワさせているのにも飽きてきた。
こんな感じの日々である。

ーーーーーーここから本編ーーーーーー

死ぬかと思った。いや死んでた。

8月30日:銀河英雄伝説を観ながらブランデーを入れた紅茶をすすっていたところ、左目の奥にガツンと痛みを感じる。

「この痛みは…覚えがある…奴が、奴がやってきたのか…?!」
いやまて、いつもなら1年に1回のはず…前回は…2020年4月…なんてこったい。もう1年経過しているではないか
私は馬鹿か。警戒を怠っていた。慢心していた。毎日が楽しくて当たり前の健康を享受出来ることが日常だと感じてしまっていた。
現実は残酷である。
私は痛みに悶え床に倒れながらそのまま意識を失った。
そう、群発頭痛の再発である。

8月31日:まずは手元の薬の在庫を確認しておく。奴とは長い付き合いだ。今日から地獄の日々が始まるのはわかっていた。
アマージが15錠、イミグラン皮下注射が10個×2。
なるほど。すくなくとも10日間は医者にかからなくても済みそうである。
とはいえ一日でも早く受診したほうがいい。去年から取り入れた酸素療法は効果があったのでまずは酸素ボンベが欲しい。(毎日注射なんぞ打ちたくない。)
私は受話器を取るとかかりつけ医に電話をした。
「本日は臨時休業となっております。」

なに休んでるんだクソ医者が。先生に恨みはないけれど、一気に気分が下がる。アマージを服用しても容赦なしに頭痛が襲ってくる。結局この日はイミグランを2本打った。

結局受診したのは6日後だった。この間も朝昼晩と問わずランダムに頭痛は来ていた。従来であれば痛みが発生する時間帯が予測できていたのだけれど、今回は厄介なことに時間が定まっていない。

先生は会うなり「おう、君か。すまんが酸素はコロナに回っていて手配が出来ない。すまんな。」

ファッキンコロナ!まさかこんな形で被害を被るとは思ってもいなかった。
自粛せず酒を飲みに行きコロナにかかった連中は全員死ねばいいのに。

「僕が火曜日行ってる大きなメディカルならイミグラン皮下注射も出せる。どうやろか?」

先生は私が無職だと思っているのだろう。平日フラフラと手ぶらで来院しているのだ無理もない。ただ考えて欲しい。平日そうぽんぽん休める人間がいるだろうか。幸い私は無職なので「じゃあそれで」ということになった。

(この先生は酸素を出してくれるので昨年から通い始めていた。ただそれ以外は基本漢方が好きな先生で、薬物による予防療法に関しては相性は良くなかった。漢方は好きな方だけど、この病気に漢方が効くのか、という点については甚だ疑問だった。1日と頭痛が来なかった日がないのだから。まだステロイド剤を飲んでいた方がマシだった気がする。)

9月14日:大きな病院でCTを撮ると共にイミグランの皮下注射を処方された。CTは異常なし。こんなに頭はエマージェンシーを発しているのに私はすこぶる健康なのだ。

さて、注射注射と言っているがこの注射が今のところ私の唯一の友達だ。
痛みには波があり、ピーク時に使用しても効きが薄い。痛みが出始めた頃に打つと15分後には嘘のように痛みが消える。
電車に乗っていて頭痛が来たときはすぐに下車し、注射を打つ。15分ほどぐったりしたらさくっと立ち上がり颯爽と仕事に向かう。こんな生活がまともなわけが無い
とっくに自分の中で何かがぶち壊れており、とにかく痛みから解放されたいと願う毎日。なにか新しい薬はできていないのか…とネットを検索していたところ気になる記事を見つけたのである。

https://higuchi-hospital.com/column/637/

偏頭痛には色々なタイプがあるけれど、システムとしてはこうらしい。

■薬理学的な名称は「ヒト化抗CGRPモノクローナル抗体製剤」。
■CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチドという物質)は頭の硬膜や三叉神経にあり、片頭痛発作時の血管拡張や炎症反応の直接の原因とされている。
■この薬は、CGRPの働きをブロックすることで、発作を減らし、また、発作を軽いものにする。

この三叉神経が問題。群発頭痛の原因は解明されていないけれど、何らかの原因で三叉神経より痛み物質が放出され、目の裏にある内頸動脈が腫れ、それが神経に触れることで激痛を発するらしい。(ネット検索より)

歯医者で根幹治療などを受けた人は神経に触れられる痛みの想像がつくだろうか。アレが2時間くらい続く感じだ。死んだ方がマシなレベル。

話がそれたけれど、つまりこのエムガルティを打つことで発作の原因となる物資が放出されにくくなり、結果頭痛の頻度が減る、ということらしい。
本当なら素晴らしいことである。早速ネット上にてすでに処方し、その患者を追いかけているブログなどをチェックし、都内の病院の予約をとった。

9月26日:都内某所。
脳神経外科の扉を潜り、診察室へ呼ばれると、これまでの頭痛遍歴から直近のCT、MRIなどを提出し院長と打ち合わせをした。
私の症例は珍しい方なので、一通り打ち合わせをしたあと、本当に群発頭痛に効果があるのかどうかついて各所に確認をしてもらう。
確かに海外での論文はあるが、元々打つ量が日本とは違うらしい。
この辺りは医師ではない私にはわからないが、とにかく海外では日本の倍の量を打つ。つまり日本で打つ量で群発頭痛に作用してくれるかどうかはわからない、と言うのだ。

とはいえこちらは今すぐにでも死ねるのならば死にたいので、先生頼みます、と取り寄せてもらうこととなった。

「それにしてもずいぶんひどい方やね。仕事とか辛かったやろ?」
「あ、はい。なので辞めちゃいました。」
「」

直接的な原因ではなくても、こんな身体のままで元気に仕事をするのは不可能なので会社の窓から飛び降りたっていうのもあった。おかげで平日昼間からフラフラ病院に行ける身分になっているので良かったといえばよかったのかもしれない。

病院を後にし、もしかしたらこれで痛みから解放されるのかもしれない。そんな期待を胸に布団に入った。眠りに落ちたのも束の間、深夜2時に強烈な頭痛で目覚め、注射を打つもなかなか効かず、ただただ痛みに悶えながら再び眠りについたのだった。ファッキン群発頭痛。あと少しだぞ。

9月29日:
打ち合わせに向かう途中、電車内で頭痛が来た。仕方無しに優先席の端っこで注射を打ったところ、良い血管をぶち当てたらしくちょっと多めの血液が腕を伝う。白いシャツを染めたところで電車を降り、ちょうど反対側のホームにきた急行に飛び込もうかと思った。

9月30日:
「ほならこれが注射ね。1本120mg、これを初月だから2本。240mgやね。海外での群発頭痛への投与は300mgで効果がある記述を見たけどここは日本やからなぁ。」
これがエムガルティである。

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薬価は1本45,165円。保険適用で13,550円。これを2本。
60mgの違いがどれほど出るのかはわからないが、とりあえずチャレンジをしてみる他ない。これは自分を使った実験みたいなものだ。
筋肉注射ではなく皮下注射なので肩、というよりは二の腕に打つらしい。
「ちょっと響くで。」
先生はそう言うと腕に押し当てたキットの上部にあるボタンを押す。
パチン、という音と共にチクっとした痛みが走る。
120mgをゆっくりと投与するので、チクっのあとにギュワワーと痛みが増して行く。
「あうあうあー、先生これ結構痛いですわ。」
「おう、みんなそう言うな。俺は打ったことないからわからんのやけど。はい、もう一本。」
パチン。

両腕に1本ずつ投与された。
「副作用はあんまないけど打った所の痛み、腫れ、かゆみは報告されとるから。あとはこいつがどれくらい効くかやなぁ。」
「先生、いままでの方はどれくらいで効果を実感しているのです?」
「そうやな、早い人は翌日から偏頭痛出なくなったって報告があるわ。ただ君は月30回注射するくらいやからな。わからん。わからんけど、効果が出ているかもわからんから次の頭痛が来たらちょっと我慢してくれへんか?」

いままで痛みの始まりからピークに至るまでの間に注射を使っていたが、それではエムガルティの効果がわからない。仕方が無いのであい、わかりました。と言って病院を後にした。

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今回、8月30日から群発期が来ており、通常私の場合1ヶ月程度でこの期間を抜けてきている。
つまりこのエムガルティの効果のため回復したのか、単に群発期を抜けたのかは結構微妙な判断になると思う。
効いてくれるといいけれど、正直あまり期待もしていない。
では今回効果が無かったらどうするか?

実はもう1つ面白い記事を見つけている。
https://www.tbsradio.jp/archives/?id=p-459449

曰く、群発頭痛には帯状疱疹ウィルスが強く関わっている可能性がある、というものだ。
私は帯状疱疹というものにかかったことはないけれど、痛みの部類(目の奥の神経痛以外に実は左頭から鼻の辺りまで焼けるような痛みを伴うときもある)として似ているように思う。
この記事によると50歳以上が対象となっている帯状疱疹の予防ワクチンを摂取した群発頭痛頭痛の患者に回復が見られたとのこと。
疑問点としては、群発頭痛は年齢を重ねると自然と発症しなくなる病気であるということ。だいたい40代後半にかけて発症が少なくなり50代から出なくなる人が多いらしい。
つまりワクチンによるものか、加齢によるものなのか、これまた判断がむずかしい。とはいえ、藁にもすがる気持ちで行った今回の注射が効果なく、今後も再発するようであれば次は帯状疱疹予防ワクチンを試してみようと思う。

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以上、1本45,165円の注射を打った話でした。
頭痛の原因は現代医学においてもまだまだ未知な部分が多く、特に群発頭痛についてはこの数年で一気に進んだ気がします。
私なんぞは群発期は心身ともに死んでいるけれど、それ以外はお酒の飲めるしとても元気です。とはいえ、目に見えない症状に対して社会はものすごく冷たいし、理解がないことは身を持って体感しています。
同じ症状に悩んでいる方に少しでも役立てて貰えればと幸いです。
またこの場を借りて相談に乗ってもらった祈祷師、イソギンチャク先生に多大なる感謝を。
進展があればまた報告します。

アディオス!

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