不動産嗅覚(エッセイ)

やっほー。峰だよ。
おかんが倒れて、おとんも気分が下がって、週一で実家に泊まらなきゃならないし、子供の面倒は見なきゃいけないし、スタッフの育成もしなきゃいけないしわりと今年は積んでるよ。積んでない年なんてなかったか。

さて、今年から2人雇って半年以上やってきたわけだけど、仕入れに関してはパッとしない。各員ともに仕入れはできている。そりゃ満額近くで買っているんだから買えるのは当たり前で、利益が出るか?って言ったら正直微妙なラインを突き進んでいる。これは経験を養うためには仕方のないことなので高く買うことに関しては問題視していないのだけど、今後は安く仕入れを行うっていう練習をしていかなければならないのが課題だ。

不動産を安く買う、っていうのはどういうことか?
残念ながらその手法をここにかけるほど私は安く仕入れを行っていない。

ただ、安く買うために必要なことは自分を疑うことだと思っている。仕入れに関してある程度の裁量をスタッフに与えているけれど、その言葉も、行動も、語弊を恐れずに言えば私は信じていない。そして今後も信じてはいけない、と考えている。なぜなら私が私自身を信じることができず、今後も信じないようにしているからだ。
自らを信じられない人間が、どうして他人を信じることができるだろう?
これは申し訳ないけれど私の性格だから仕方がない。そういう人間だと思って付き合っていただくしかない。

さて、この信じていないっていう部分だけど、それは人間性とかそういう問題ではなく不動産に対する嗅覚の話だ。

たとえば私が投資用として紹介する物件は、手元に来た時点でこれは案件になりそうかな?って匂いがする。
これは言葉にはなかなかできない。できないけどなんかそんな匂いがする。
郊外だけど、新耐震で利回りがいまは7.5%くらい。指値をがつんとしたら9%くらいまでいけそうなんじゃないかっていう物件なんかは謄本を見ても所有者は1名、直近で相続が発生している。もしくは相続人がいない。
こんな案件はみるからにお金には困っていない。どちらかというと今後もしっかり使ってもらえるか、いまの入居者に迷惑がかからないかってことを考えている所有者さんがいる雰囲気がする。
こういう物件は指せる。安く売って欲しいわけじゃないけど、売主、買主、双方のお気持ちを調整するのが私達の仕事だから多少の指値は勘弁してほしい。そしてこういう案件はだいたいまとまる。そういう匂いがする。

同様に私達が行っている買い取り再販に関しても匂いがするときがある。
めちゃくちゃ安いってわけではないのだけど、なんか良さそうってものがある。
・謄本の住所がすでに移っている(住み替えで現金化しなければならない)
・相続後所有者が2人以上になっている(処分が面倒だからさっさと手放したい)
・ご夫婦共有なのに今住んでいるのはどっちかだけ(離婚で早くリスタートしたい)
など。

考えてみれば当たり前の話なんだけど、売主の背景っていうのは実際に自分が媒介を預かって、その人の売却を手伝っていくなかで価格の改定や、実際に話しが入った際、指値があったらそれをどうまとめるか、などを経て身につけていけるものだと思う。
そういう経験を積んでいかないと嗅覚っていうのは養われていかないと思う。ただ、昨今の急激な市況変化によって私の嗅覚もよくわからなくなってきてしまった。

私が1,500万円って査定した物件を2,100万円で買っていく業者がいたり、私が4,000万円って査定をした物件を他社は3,700万円までしか出せなかったり…峰がポンコツっていうのもあるのだけれど、これだけ様々な物件を取り扱う中でこんな価格の乖離を毎日眺めていたら嗅覚もへったくれもなくなってくる。もうシックスセンスでこれはいける!!って突っ込むほかない。そしてそういう物件はだいたい売れない。たくさんのジャンプを経て峰、気がついた。

一応周辺業者とか、知り合いにこの物件どう?って投げかけてみるけれど、その返答を鵜呑みにすることはないし(ある程度経験ある人ならわかるとおもうけど)、自分で作った計画書を翌朝見直してバカが作ったのかな?と削除する毎日だ。
冒頭のスタッフの言葉を信じない、っていう話も、例えばこの案件は駅からこれくらいの距離で周りの成約がこれくらいで〜、っていうの受けて、鵜呑みにするのは簡単なのだけど、その成約はデータとして正しいか?
たまたまその物件だけ高かった可能性はないか?
対象住戸だけにしかないマイナスはないか?(日当たりはいいのに敷地内樹木でそこだけめちゃくちゃ虫が出る、とか)
一旦、疑わなければならない。

不動産は時として需要に釣り合うと価格を超えてしまうことがある。
だから常に出されるデータは疑わなければならない。
くんくんくん、と匂いを嗅いで、これ高くないか?と疑問が出るときもあるし、これは安いねってなるときもある。決して気分でやっているわけではないけれど、時々わけがわからなくなる。

向こうからくる物件はすべてクソ、っていう不動産格言があるけれど、たくさんの不動産に触れ、自分が買えなかった物件がレインズに出たら成約まで追いかけて、いろんな答え合わせをしていく中で嗅覚を鍛えていければ、今後もほそぼそと生き残れるのかな、とか考えていたけれど、ちょっとここ数年は厳しいかもしれない。決して自分の中のデータ更新を怠っているつもりはないのだけれど、それらを外れる数字が多すぎるのだ。だからなるべく色々なことを信じないようにすることを心がけている。

ただ、何も信じないで生きるのはとても大変なことだからこそ、中途半端な不動産投資家はアホみたいなセミナーで講師を信じてワンルームを買うんだろうな。

盲信と崇拝って似たような側面があるけれど、それは決して信頼ではないんだよね。信じられるのは己のみ、だけどその己すら疑っていかないとちょっとしたことで足元が崩れてしまうっていうのが不動産の怖いところであり、ワクワクするところでもある。こんな厳しいゲームなかなかお目にかかれないもん。

色々書いたけど、不動産を安く買いたい、仕入れたいっていう人は是非すべてを疑うことを訓練して、私のように永遠とレインズを眺めながらこれは高い‥うーんこれも高い…良さそう、でも高い…ってつぶやきながら3タコかましてください。今月も仕入れができませんでした。アディオス。

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