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サービスのあり方が変わるとき~おもて無し?時代の到来~

1.ポストコロナの観光業

 COVIDー19が我が国の観光業に大きなダメージを及ぼしています。東京出入国在留管理局羽田空港支局の調べによると、2020年のゴールデンウィーク中のインバウンドの入国者数は、対前年で実に99.7%マイナスという衝撃的な数字になりました。この数字は、ここ10年近く、インバウンド重視に展開してきた日本の観光業の戦略を、余儀なく変更せざるを得ない事実として突きつけられました。

2.キーワードは地元

 北海道ホテル社長の林克彦氏は、「アフターコロナの観光復活」のキーワードを「外・近・単」と考えています(引用:JTB総研,2020「特別寄稿」)。外、つまり密にならないオープンエアーで、遠方からくるお客様ではなく、地元、つまり近くに住むお客様を対象として、尚且つ、グループではなく、単数の少ない人数での観光のあり方を提唱しています。

 星野リゾートの星野佳路社長は、マイクロツーリヅムと名付け、地元客をターゲットとした戦略を打ち出しました。星野リゾートは、どちらかというと高級路線で、インバウンドや富裕層をターゲットとした戦略を中心に展開してきましたが、一気に戦略を変えてきた印象があります。提供するサービスも、テイクアウトなどを取り入れた、従来の「おもてなし」のあり方を変える仕組みを取り入れています。

3.サービスとは何?

 近年、マーケティング領域において、新しい概念として、サービス・ドミナント・ロジック(以下SD-L)という考え方に注目が集まっています。

 このSD-Lの考え方は、「価値」を一方的に提供するのではなく、サービス提供者側と受容者側で「価値」を共創する「プロセス」そのものを「サービス」と捉えている点が特徴です(Vargo and Lusch 2004)。 

 例えば、今回の星野リゾートが取り入れるテイクアウト方式の食事の提供は、従来の「おもてなし」という観光サービスのあり方を根底から変えています。上げ膳、据え膳というサービスは、今のコロナ禍では、かえって「価値」の押しつけになってしまい、むしろお客様自身がダイニングまで足を運んでもらうことで、「価値」の共創がうまれるという仕組み(プロセス)を取り入れているということになります。

 言い換えれば、「おもてなし」を無し(おもて無し)にすることが、むしろサービスとなりうるのです。


4.逆境の中から生まれるイノベーション

 コロナ禍における観光業は、まさに、禍いの真っ只中にいます。しかし、このような状況は、新しいイノベーションが生まれる好機とも受け取れます。「おもてなし」が日本の観光サービスの象徴として、長年親しまれてきました。アフターコロナは「おもて無し」という、サービスの一方通行から「サービスの価値共創」という新しいサービスプロセスが誕生する時かもしれません。その模索は既に始まっています。













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