かつて『Y2K問題』というのがあった

年末が近づいたので、新しいカレンダーを準備している。年が改まるということで、ふと思い出した。20年ほど前に『Y2K問題』というのがあった。

1999年から2000年に変わる際にコンピュータが一斉に誤作動して、社会が大混乱するかもしれないというもの。コンピュータをつなぐネットワークが機能不全を起こし、社会インフラが大損害を引き起こす可能性があったらしい。大停電が起こるとか、場合によっては、どこかの大きなプラントが制御不能に陥って大爆発を引き起こすとか、飛行機が制御できなくなって大惨事になるという恐ろしい予言まであった。

テレビでは連日のように専門家が登場してY2K問題の恐怖を煽っていた。恐怖を売り物に商売をしているではないかと思うような人物もいたように思う。本屋に行けば、Y2K問題の恐怖心を掻き立てる惹句と予想図の載った本が並んだ。

無視を決め込むほどの度胸も無神経さもなかったので、言われるがまま停電に備えて飲食品の備蓄を増やし、水の汲み置きをした覚えがある。

結果は、大山鳴動して鼠一匹すら出てこなかった。小規模なトラブルはいくつかあったようだが、コンピュータのエラーなど普段でも起きている。要するに拍子抜けだった。

もしかしたら、当時でも「それほど心配することはない」という声もあったのかもしれない。でも聞こえなかった。報道もされなかった。あの状況の中でそんな発言をしたら、「もし何かあったらどうするのだ」と猛反発を食らうのが目に見えたので、黙ってしまったか、メディアもあえて伝えなかったのではないかと勝手に想像する。

今となれば、何も起こらなかった年明けに、恐怖の予言者を演じた専門家たちの弁明をしっかり聞いておけばよかったと思う。

もちろん、そういった数々の警告をしてくれたおかげで、無事年明けを迎えられたのかもしれない。映画「アルマゲドン」で巨大隕石の激突から地球を救ってくれたブルース・ウィリスのような人がどこかいたのだろうか。

それより少し前に、ノストラダムスの大予言というのがあった。『1999年の7の月』に人類は滅びるはずだった。それに比べたらコンピュータの誤動作ぐらい大したことではないという思いがあったから、みなパニックになることもなく年越しできたのだろうか。

ただ、Y2Kが原因でなくとも、その後の20年の間に、テロで飛行機は墜落したし、地震で原子力プラントは爆発したし、大停電も起こった。ネットワーク不具合で経済活動も麻痺した。つまり、違う形で予言が的中してしまったのかもしれない。

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