理屈は分かるけど、どうも腑に落ちない(その3)

数十年前のことだが、大学の専門課程の初めの頃の講義で、担当の教授が、「今の日本の原子力の主流となっている技術(軽水炉技術)はあくまで『つなぎ』の技術だ」ということを強調されていたのを覚えている。

現在原子力に関して数々の問題点が指摘されるが、今さら言われるまでもなく、数十年前の時点で、ほとんど分かっていたことだ。しかし、どうもこの『つなぎ』という意識が、この数十年で当該の業界内部でも、さらにはその外部でも薄れていったように思う。

どんな科学技術でもメリットだけの科学技術などありえないし、逆にデメリットしかないような科学技術もないと思っている。知恵を絞ってメリットとデメリットの折り合いをつけながら科学技術と付き合っていくのが正しいあり方だろう。

しかし、折り合いをつけながら、同時に先を見据えた取り組みに、これまでどれほどエネルギーが注がれたのかがどうもよく見えない。そうした動きを抑えるような何らかの力が働いていたのか。

原子力の業界内部に一時期身を置いた一人として、原子力をめぐる状況を見ると、「頑張ってつないできたのに、全然次の準備ができていないではないか!」という気持ちがどこかにある。

この業界に関して技術的、社会的、経済的に詳細に論じれば、それだけで本が何冊も書けそうなテーマなので、ここで詳しく触れる余裕も、その力もない。

それにしても、いつの間に、あの頃の『つなぎ』の感覚が薄れてしまったのか。

どうも未だにすっきりしない。

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